再び
わかっていたことではあるが、案の定。朝から俺は華怜からの鬼の様な追及を受けた。特に昨日の広瀬さんのピアスの件で。
席が後ろである以上、逃げようもないからどうしようもない......
当然、学校は休めないしな。休めばもうその時点で留年が確定すると言っても過言ではない。
一方で環奈に至っては熱が出たと言って今日は休みだった。
確かに昨日の環奈の行動は振り返ってみてもおかしかったからな。納得だ。
ただ大丈夫だろうか。あの環奈が風邪とは珍しい。一応、また後でお見舞いに行ってやろうとは思っている。
そしてまぁ何だかんだ色々とあって今、俺はまた彼女と放課後に.......
仕方がなかった。
どうあがいても今回は逃げようがなかった。結局こうなってしまった。
意味がわからないけれど、あんなにもぐいぐいと否応なしに迫って来る華怜を見たのは正直、あの頃にもなかったかもしれない。
それぐらいに逃げようがなかった。
「ねぇ、颯太。ここの問題教えて。ふふっ、ここ」
そう。とりあえず俺は華怜と再び例の場所、cafe【Santa Monica】にいる。
学校での彼女の機嫌の悪さが嘘の様に消えて、目の前にはものすごく楽しそうな表情をする華怜の姿。
でも、何だろう。この場所に来るのはそこまで久しぶりではないのに。
この懐かしさ......。
あくまで彼女と一緒に毎日の様にここに来ていたのは間違いなく俺ではなくあいつ、藤堂だ。そんなこと、誰もがわかりきったこと。
「ほら、ちゃんと私の目を見て教えて」
「い、いや、ちょっと近すぎるから。離れてくれ......」
「何でよ。近づかないとノート見えないじゃん。ふふ、だからもっと近づいちゃお」
「おい」
なのにやっぱり、彼女は俺。風間颯太にあの時と全く同じ笑顔を確かに向けて.......。
「本当に久しぶりだよね。本当に」
そして何でそんなにも嬉しそうな表情で俺にそう何度も微笑んで。
「何がだよ......。初めてだから」
本当にそんな顔を何度も見せられてしまうと、おかげで色々と思い出してしまう。思い出してはいけないのに藤堂として彼女と一緒にいた短くも長かったあの時のことを色々と......。
「もう、何でそんなに頑ななのよ。じゃあほら、あーん。これ食べたら思い出すでしょ? ふふっ」
「い、いや、何だよ。あーんって。し、正気か?」
「ふふ、その表情。やっぱり懐かしい。いっつもしてたじゃん。ほらあーん」
「いや、しないから」
「もーう」
本当に何でだ。何で俺は。
いや、そんなことはない。あの時もそうだった。そこは揺るがない。揺るぐはずがない。
とりあえず、もう帰ろう。駄目だ。さすがにこんな光景を学校の奴らに見られでもしたら。俺はそう思ってすぐさま自分が座っている席を立つ。
修学旅行の時もそうだし、今日に限ってはもう今さらな部分はあるのかもしれないが、それでも彼女と俺が一緒にいる光景は他の奴らからするとあまりにもおかしな光景でしかない。
それにこのまま彼女と昔みたいにここにいると俺は......。
何でこんな風にあの頃に戻ったような気持ちになって気が緩んでしまう自分がいる。
おかしいだろ。何であの頃は全く気が抜けなかったのに、今は逆にこれがあたかも普通である様な感覚に陥って......
駄目だろ。一体何を考えているんだ俺の脳。
「あれ? 颯太、もう次行く?」
「え? いや、今日はもう帰「ねぇ、あのさ」
そして今度はすぐさま彼女に言葉を遮られてしまう俺。
にしても何だ。その表情。
何でそんな急にさっきまでとは打って変わって真面目な表情で俺のことを......
「あのさ」
「う、うん。何だよ」
「今から私の家で勉強し直さない? 今日、親帰って来ないしさ.......。一緒に夜までしよ。定期テストの勉強」
すみません。お久しぶりです。
納得のいっていなかった後半部分の話数を大幅に削り、軌道修正をする為にこの話を書きました。




