下校の時間であっても気は抜けません?
環奈は掃除当番+委員会。
だから、とある理由もあって今日は俺一人で下校をしていたんだけど.......
「ねぇ、あんた今日バイトないんでしょ。聞こえてきたから知ってるよ」
くっ、捕まった。
駅前で普通に捕まってしまった。俺が最速だと思っていたのに何でいるんだよ.......。
こうならない為に急ぎに急いだって言うのに。
だって、教室を出る時にまだお前は椅子に座って......
「だからさ、久しぶりに行こうよ。私たちの場所」
「私たちの場所?」
「ふふっ、もー、『Santa Monica』に決まってんじゃん」
くっ......。華怜、それにしてもどうやってこんなに早く。
「悪い。今日は用事があって急いでるんだ。あとやっぱり大塚さんの言ってることがわからない」
「はい。嘘がでました。わかっちゃうんだよねー。癖で」
「え?」
癖?
な、なんだ。俺にそんな癖が? え?
「もー、そういうのいいから。とりあえず早く行こ! あっ、そう言えばあんたの妹、そんなカフェ知らないとか言ってたっけなー。あれれー?」
「なっ」
香奈の奴......。
糞っ、ぬかった。
で、何だよ。俺が嘘をつく時の癖って。
「って、な、何してんだ。かれ、大塚さん.......」
「んー、別におかしなことはしてないと思うけど? ふふっ」
い、いやおかしいだろ。
何で急に俺に腕を組んでそんな身体を密着させて.......
今はまだ人がほとんどいないとは言え、駅前だぞ
な、何を考えている。
「ひ、人が来るから。大塚さん的にまずいだろ。ほら、最近モデルとしても人気でてきているみたいだし、絶対まずいって」
「えー、私がモデルをしていること知ってくれているんだー。嬉しいー。ねぇなら知ってる? 私が今ノリに乗っているのはある男の子のおかげなんだよ」
「い、いや、知らないし.....。それに本当にもう皆がマジで来るから離した方が」
現に、もう遠くの方に同じく下校してきたであろうウチの学校の制服を来た生徒達の第一波が続々と......。
「じゃあさ、そうだ。ほら、私の目をみつめながら華怜って呼んでよ。ならとりあえずは離してあげる。簡単でしょ?」
「は?」
「ふふ、だって別に私は皆に見られても何もまずくないし。それにキャラ的に彼氏がいても影響はないって言うか、いないと逆にマイナスな面もあるしね」
い、いやまずいだろ。普通に......
それに何だよその条件は......。
「ほーら、呼んで。颯太、早く。今日、颯太の背中に書いた文字。あれも本当に本当だよ。ね、颯太」
しかも、そんな上目遣いに甘えに甘えた声で........
ひ、久しぶりだ。でもちょっとやばい。このコンボは。
あの時から思っていたけど、普段気の強そうな華怜のこの表情に声はちょっと本当に反則的な.......
それに今日背中に書かれた文字って......
「い、いや本当にちょっと.......」
「ねぇ何で私の目を見てくれないの颯太。ほら、見て。私のこと。本当に皆来ちゃうよ。いいの?」
いや、そ、それはまずい。
くっ.......
「わ、わかった。意味は未だにわからないけど。わかった。行こう。カフェ」
もう、それしか......。
「もー、何で呼んでくれないのよ。まぁ、ここではいっか。なら行こっ」
わ、わかった......けど
「う、腕は?」
「ん? このままに決まってんじゃん。ほらほら皆本当に来ちゃうよ!」
くっ、ここは本当にもう言う事を聞くしか.......
それに何だよ。その屈託のない笑顔。
「いや、やっぱり、腕は離そう。さすがに。本当に行くから」
「わ、わかったわよ。」
うん。さすがに近くとはいえ、このままであそこまで歩くのはちょっとな。
でも、もしこのままあの場所に行って二人っきりになってしまったら.......
って、え!?
いや、え?
「あっ......。な、なんで」
な、何であなたまでここに!?
いや、本当に何で。
ま、全く気がつかなかったけど、いつからそこに.......
とりあえず、今は仕方なく華怜の言うことを聞いておくしかないと進行方向を変えたのだが......。
まさかの俺の視界には見知った一人の女性が飛び込んでくる。
「ふふっ、あれー? 風間くんと大塚さんだー! なになに? 意外なコンビだね!」
ほ、本当に何で気が付けなかった......俺。
「い、いやそれは違うくて。俺と彼女はその.....」
本当に何でそこにいる。そしていつから......
ひ、広瀬さん.......?
「ん? ふふっ、私は何も見てないよ!」
い、いやそのセリフ........。




