とうとう目的地は目前です?
ふぅ、地味に初めてかもな。
今回の校外学習でこんなに落ち着いた時間は過ごすのは。
へぇー、ここが京都御所。
長い壁が横に続くせいで、バスからでは全くもって中が見えないけど。
とてつもなく広いことだけはわかる。
で、反対側が大学か。大学生?がいっぱいで賑やかだ。
しかも隣には女子大もあるのか。中々楽しそうだな。
活気があるのはいいことだ。悪くない。
昔はこういう眩しい雰囲気がそこまで好きではなかったけど、今はむしろ逆と言ってもいいのかもしれないな。
まぁ落ち着いた所も相変わらず好きなことに変わりはないけどな。
あと、フレッシュ?
いや、違うか何て読むんだ? 普通にそのまま英語を読めばいいのか?
チェーン店だろうか。よくわからないけど地元では見慣れないスーパーがさっきから何度も目に入る。
まぁ、だから何だと言う話なのだろうが、とりあえず目にはいる。
ふっ、この校外学習において、市バスの中に一人でいる時間を憩いの時間と感じてしまっている俺は、おそらく何かが色々とおかしくなってしまっているのだろう。
ただ、とりあえず本当に落ち着く。ここ。
幸運にも、知っている奴等も今のところは誰も乗ってきていないしな。
って、また環奈からのline。
『颯ちゃん、私はもうすぐ着くよ。そっちはどう?』
もうすぐ着くのか。まぁ、おそらくこっちもそこまでもう時間はかからないだろう。
『すぐではないけど。今ちょうど今出川ってところ辺りだからそこまで時間はかからないと思う。とりあえずさっきも言ったけど、上手く抜け出せたから行けるのは本当に行ける。とりあえず先についたら悪いけどちょっと待ってて』
本当に心から良かった。
あそこで抜け出せなかったら俺はもう環奈にボコボコどころか........
跡形も.......。
何で下鴨神社で、どんな理由で呼ばれているのかは正直未だによくわからないけれど。
とりあえず今はそんなことはどうでも良い。環奈の機嫌さえ損ねなければ。
昔からの付き合いである俺だからこそわかる。今日の環奈のあの感じは本当にやばいやつ........
また何か手伝わされるのか?
まぁ環奈だから別におかしなことを頼まれるわけではないだろうし、問題はないけどな。
ただ、あの彼女の表情は本当に思いだしただけでも.......。
って、あー、また停まった。
ここら辺はまたバス停が多い系のエリアか。
信号も多いし、結構時間をロスするな......。
まぁ、それでも時間的にはそこまでか。
うん。もうそろそろゴールは見えているし、気長に.......って
う、嘘だろ!?
見知った人物が今ちょうど二人バスから入ってくる.......。
「ふっふっふっふ、また一組カップルを狩ってやりましたな。本当にけしからん。集団行動を軽んじてイチャコラと......。あいつらは校外学習を何だと思っているんでしょうかね。ねぇ真鍋先生」
「ふん、ほんと中村先生の言う通りです。こんな学びの場で異性とイチャコラと。今どきの奴等は本当に軟派で困ったものです。見つけしだい即刻あるべき班に戻すのが我々の役目。さぁてまだまだ頑張りますかね」
あ、あいつ等は.......
か、化学と物理の教師である真鍋と中村!?
何をするにも理屈っぽく、かつすこぶる陰湿な性格で有名な学校の嫌われ者の教師2人が仲良く何で.......。
さ、最悪だ。
こんなところで見つかったらおそらく俺まで元の班に.......。
何で、何でここまで来て.......。
そんなことあるかよ。
やっとの思いでここまで来て、最後がまさかのこいつ等に......
何とかしてあいつ等の目から.......って
あぁ駄目だ。終わった。もう遅い。
完全に目が合った。いや、合ってしまった........。
俺のこれまでの苦労も、もうこれで完全に........
ふざけるなよ。真剣に何で最後にこんな
って、ん?
あ、あれ? あいつ等、入口のところで俺の方を向きながらコクコクと何故か頷いてブツブツと?
「あぁ、懐かしいですな。私にもああいう時代がありました。中村先生はどうでした?」
「ふん、私にとっても懐かしい光景です。それにしても奴、班の連中から見捨てられて一人になっているというのに中々堂々としている。あぁいう奴は嫌いではないですよ。いつの時代もやっぱり骨のある男はいる者です」
ん? な、何だ。何で二人とも俺に向かって親指を立てて......
グ、グッドポーズ?
へ? あれ、何か勘違いしている? し、してるよな?
絶対何かあまり良くない方向の勘違いを......
現に何かそのまま前の方の席に俺に背を向けて普通に座って.......?
え? いや、あれ? 助かった?
いや、でも、あれ? 何か複雑な........
ま、まぁ結果としては良いのかもしれないけど、やっぱり複雑な........
それに、昔に何があったんだ。あの二人.......
と、とりあえずはでもセーフ.....っぽい。
うん。セーフだなこれ。
また二人の会話が聞こえてくるがどうやら次で降りるっぽい。
あ、危ねぇ.......。
本当に今日はずっと心臓に悪いことばかりが起こる。
おかげで今気がついたけど、結局今日の俺、昼ご飯食ってない.......。
うん。食ってない。
正直、ほっとしたら急にお腹が空いて......。
そう言えば、さっき地味に愛梨に頼まれて買っていた抹茶のバウムクーヘンがリュックに........
まぁ、ちょっとぐらいなら先に食べても......
いや、さすがにキレるか。あいつ。
小さいけどそういうのうるさいもんな。
また喚いて暴れられるのもしんどいな。うん。しんどい。
止めとこ........。
まぁ、本当にもう着くし。
あっちで環奈と何か軽いもんでもつまむか。
さすがにあいつは昼は食っただろうしな。
ふぅ、ようやくか。
でも、さっきからちょっと気になってたけど。
何だ? どこかに偉い人でも来ているのか?
朝にはこんなに何度も見なかったぞ。
と言うか見た記憶がない。
そう。それがさっきから何度か俺の目には、道路を走る黒い高級車が映り込む。
ビュンビュンと何台も........
あれか? 京都だし。もしかしたら外国の偉い人でも来日するのか?
だ、大統領とか?
いや、それはないか。でもきっと何かがあるのだろう。
まぁ、ちょっと面白そうだけど今の俺には関係ないかな。うん。
って、あぁ今度はあいつからlineか。
嫌な予感しかしない。
『お兄、今何してる?』
香奈、何だよ......。
八つ橋の他にもまだ何かおねだりしてくるつもりか?
『バスだけど』
めんどくさいけど、頼まれたら買わないとうるさいしな.......。
『ねぇ今からどこに行く予定? 行く場所によっては追加でお願いしたいお土産があるんだけど』
ほら、やっぱりそう.......。
『下鴨神社だけど』
まぁ、あそこのことはほとんど知らないし、お前が欲しいものがあるかどうかも全くわからんけどな。
『そう。下鴨神社ね。OK。ならやっぱり追加のお土産は大丈夫。あと頼んでいた八つ橋は生八つ橋だからね。生。絶対に間違えないでね』
何だ。良いのか。
珍しいな。いつもの香奈であれば欲しい物があれば何としてでもワガママ言って俺に買わせようとしてくる癖に。
ま、まぁ面倒が減るんだ。全く問題ない。
逆に良かった。
あいつもちょっと大人になったのか?
ふっ、とりあえず本当にもう着く
さっきの教師二人組もついさっき別のバス停で降りたからもういない。
そう。後は降りてちょっと歩くだけ。
色々あったけど何とか助かったぜ。
本当に助かった。
俺の命。
ただ、何故か冷や汗が身体から止まらない。
何故か.......。
何で.....だ?




