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094_vsグリッソム・決着

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 094_vsグリッソム・決着

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 1本の腕が、毒に侵された右肩の頭を掴む。何をするかと思ったら、その頭を引っこ抜いた。

「おいおい、そんなのありかよ?」


 しかも毒に侵された頭を悪魔の頭が貪り喰ったのだ。

「化け物、ここに極まりけり……か」

 気持ち悪いものを見せるなよな。

 それ、悪魔の頭は毒に侵されないのか? 悪魔の生態は不思議だな。


「で、頭が再生するとか、舐めてんのかよ」

 再生した頭は毒に侵される前の状態のようだ。

 こんな治療法があるとは、さすがに思わなかったぞ。


「時間をかけると、こっちが不利になりそうだな。一気に行くぞ!」

「「「応っ!」」」


 ロザリナが飛び出して、中級悪魔モトロクトの体中に打撃を叩きこんでいく。

 残像が見える程の高速ラッシュだ。


「矮小な人間ごときがっ!」

 中級悪魔モトロクトがロザリナの動きについていく。あの巨体で高速で動けるとか、反則だろ。


 スピードはロザリナのほうがやや上だが、中級悪魔モトロクトは腕の多さでその少しの差を補っている。

 中級ともなると、かなり強い。下級悪魔とはさすがに違うな。

 だが、勝つのは俺たちだ。中級とはいえ、たかが悪魔なんぞに負けるつもりはない!


「俺もそれに混ぜてもらうぜ」

 ステータスポイントをAGI値に振る。ドーピングもいいところだが、毒に侵された頭を食って頭が再生する悪魔よりは反則じゃないと思う。


「はぁぁぁっ!」

「ロザリナ、左だ」

 俺が右、ロザリナが左から挟み込む。

 俺は中級悪魔モトロクトの腕を4本斬り落とし、ロザリナは左側の腕を2本折って1本を引きちぎった。


「小癪な!」

 中級悪魔モトロクトは腕を斬り落とされてもまったく動じず、さらには反撃をしてくる。

 痛覚遮断のスキルでも持っているなら別だから、腕をこれだけ斬り落とされて平然としているのは褒めてやるよ。


 しかも斬られた腕が瞬時に再生する。

 再生速度が異常だ。

 こんな常識外れの奴、面倒くさいから嫌いだよ。


「ヌォォォ」

 ソリディアの眷属のゴースト・オーバー(三体合体ゴースト)がライフドレインでHPを削る。が、中級悪魔モトロクトはそのゴーストを鷲掴みにし、喰いやがった。


「ゴーストって喰えるのかよ?」

 実体を持たないゴーストを掴むだけでも異常なのに、喰ったことに驚きを覚える。


 掴まったら、俺も喰われるのか? 嫌だなぁー。

 今の捕食で減っていたHPが回復した。

 HP上限が2割になっているのは変わらないが、それでも元々が膨大なHPだから厄介な能力だ。


「下手に近づけませんな、これは」

 ガンダルバンも捕食を警戒する。最も近い場所で戦うことになるガンダルバンだから、当然の警戒だ。


 ローズを召喚して拘束してもいいが、バルバドスたちにローズを見られたくないんだよな。

「アンネリーセ。あいつの動きを止められるか?」

「お任せください……ライトチェーン」

 ジャラジャラと光の鎖が中級悪魔モトロクトの体に巻きついていく。


「グオオオオオオオオオッ」

 動きを阻害されることを嫌った中級悪魔モトロクトが暴れて光の鎖から逃れようとする。


「行くぞ、ガンダルバン!」

「はっ!」

 ガンダルバン、ジョジョク、リン、ロザリナが俺と共に一気に間合いを詰める。


「パワーアタック!」

「トリプルスラッシュ!」

「ライトニングランス!」

「気法とラッシュなのです!」


 俺も4人に負けないように、スキルを発動させる。

「剣王領域!」

 空中に7本の剣が現れる。

「いっけーっ!」

 それぞれが意志を持っているかのように動いて、中級悪魔モトロクトの全ての腕を斬り落とし、さらには悪魔の頭も斬り飛ばす。


「グオオオオオオオオオッ」

 宙を舞う悪魔の頭から怨嗟の声が発せられ、地面に落ちた。


「ふんっ」

 地面に落ちた悪魔の頭をガンダルバンが踏み抜いて、完全に破壊した。


「セイントストライク!」

 悪魔の頭があった切り口に、セイントストライクを発動させたリンが魔槍を深々と突き刺す。

 聖なる光によって悪魔の体が大きく抉られる。


「や、やめてくれーっ!」

 む、今まで何も喋らなかったグリッソムの顔が喋った。


「お前、グリッソムか?」

「そ、そうだ」

「そうか……なら、死ね!」

「なんでだーーーっ!?」

「お前が悪党だからさ!」

 ふんっ!


 グリッソムの顔に魔剣サルマンを突き立てる。

「ギャァァァァァァァァァァッ」

「これはアンネリーセが受けた痛みや苦しみの数十分の一の苦しみだ!」

 魔剣サルマンを抜いて、グリッソムの顔面を蹴って後方宙返りして地面に着地。


「うぉぉぉっ!」

 日頃あまり喋らないジョジョグが熱い!

 残像を残して中級悪魔モトロクトの横をすり抜けた。


 中級悪魔モトロクトの左太ももに線が走る。その線に沿って太ももがずれていく。

 あの太い中級悪魔モトロクトの太ももを軽々と斬ったか。さすがはソードマスターのジョジョク、凄い剣の冴えだ。


「ギャァァァァァァァァァァッ」

 グリッソムが、悲鳴をあげた。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ。なんだ、なんで俺がこんな目に遭うんだ!? あぎゃぎゃぽーっ」

「お前だからそんな目に遭ってるんだよ!」


 どうやら悪魔の頭はリンの聖なる攻撃で再生できなくなったようだ。そのせいでグリッソムの意識が浮上した。そんなところだろう。


「これはむしろ好機!」

 悪魔に恨みはないが、グリッソムには恨みがある。

 このまま殴って殴って殴り倒してやる!


「反逆者グリッソム! お前のおかげで街が酷い有様だ。その責任を取って死ね!」

 倒れて喘いでいるグリッソムに、魔剣サルマンを向けて死の宣告をする。


「ふ、ふざけるなっ!? 俺が何をしたって言うんだ!?」

「しらを切っても無駄だ。お前のやってきたことは、すでに白日の下に晒されている!」

「そそそそそそんな証拠、どこにあるんだ!?」

 証拠よりも、悪魔に取り込まれた時点でお前は終わっているんだよ。それくらい理解しろよな。


「お前がダンジョンに入っている間に、神官長が捕縛されたぞ。裏ギルドも壊滅した。お前の頼みの綱のエルバシル伯爵もすでに捕縛されている。守ってくれるパパはもういない。さあどうする? グリッソムさんよ」

 グリッソムが目を剥いて驚いている。ダンジョンに入っている間に状況が一変しているのだから、驚くのは当然だ。ざまあないな。


「さて、グリッソム。お前、今の自分がどんな状態なのか、理解したか?」

「理解だと……?」

 意識が浮上したのはいいが、悪魔に取り込まれているとは夢にも思ってなかったのか?

 それはそれで気の毒? な話だが、だからと言って俺たちが手加減する理由にはならない。


「なんだこれはっ!?」

「お前、悪魔に取り込まれたんだよ。ダンジョンの中から悪魔の腕を持ち帰って、それを杖と勘違いして使ったらしいじゃないか。愚かだよな~、グリッソムよ~」

 おかげで捕縛なんて生温いことをせずに、お前の命でこれまでの罪を償わせることができる。

 柄にもないことだが、お前だけは許さん!


「ふざけるなっ!? 早くこれを何とかしろ!」

 なんで俺がそんなことをしないといけないんだ? そもそもあいつはなんで俺に命令しているんだよ? こういう自分本位の考え方しかできない奴って、いるんだよな。赤葉とか、アカバとか、アカバカとかーっ!

 なんか赤葉の顔を思い浮かべたら、すっげー腹が立ってきた。赤葉・プラス・グリッソムって、最凶最悪な組み合わせだな。

 どっちが最強クズか競わせたら、どっちが勝つかな? そんなことするつもりないけどさ。


「ふんっ」

「うぎゃっ!? な、何をする!?」

「あ、つい……悪い……とは思ってないぞ」

 気づいたらグリッソムの顔面を殴っていた。まったく後悔してないからな。


「貴様ぁぁぁっ!」

 グリッソムが怒りに任せて俺に攻撃を仕かけてくる。そんな遅い攻撃が俺に当たるわけがない。AGIブーストはマジでヤバい。1秒が10秒にも30秒にも感じるぜ。


「第2ラウンドの開始だな」

 静か? に怒りを燃え上がらせる俺が飛びのいた刹那、稲妻がグリッソムの顔を襲った。


「ギャァァァァァァァァァァッ」

「私もいることを忘れてもらっては困ります」

 グリッソムが最も謝罪しなければいけない相手、アンネリーセの雷魔法だ。

 光の速度で飛んでくる稲妻を避けるのは俺だって至難の業なんだから、グリッソム程度が躱せるわけがない。


「おのれぇぇぇっ! よくも! よくも! よくも! よくも! よくもぉぉぉっ!」

「「「「こー・ろー・せー」」」」

 グリッソムの怒りに呼応するように、4人が合唱を始める。

 まただ。また精神攻撃だ。悪魔の頭がなくても、この精神攻撃はできるようだな。


「しゃらくさいっ!」

 サブジョブを転生勇者にチェンジ。

 転生勇者は隠しておきたいが、この精神攻撃は面倒だ。


 ―――セイントクロス!

 光の十字架がグリッソムの顔面に直撃。

「ギャァァァァァァァァァァッ。熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」


 どうやら悪魔にとって聖属性の攻撃は熱いらしい。

 グリッソムが極端に痛みに弱いという可能性は捨てきれないけどさ。


「だったらこれならどうだ!」

 聖覇気は邪悪な者を寄せつけない。しかし面と向かって聖覇気を受けたグリッソムは白目を剥いて倒れてしまった。


「ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール!」

 ファイアボール5連射とか、アンネリーセも容赦ない。でもファイアボールじゃ悪魔は倒せない。

 これは倒すのが目的じゃない。ただ痛みを与えるだけの、意趣返しのようなものだ。


「リンッ!」

「はい!」

 俺は聖覇気を発しながらグリッソムの顔面に魔剣サルマンを突き立てる。グリッソムの悲鳴がウザイ。


 リンは聖槍を召喚し、その槍で他の4つの頭を潰して腹部を深々と突き刺した。

 グリッソムの体から光の帯が飛び出し、膨張する。

 俺とリンは飛びのいて膨張と収縮を繰り返すグリッソムから離れた。


「アガガァァガガガガァァァァァ……」

 膨張と収縮が収まり、グリッソム―――中級悪魔モトロクトの体が砂化した。


「終わったな」

 終わってみればあっさりと勝ってしまった。


「アンネリーセ。終わったよ」

「はい。ありがとうございます。トーイ様」


 アンネリーセの目に涙が溢れる。俺はその涙を指で拭ってあげ、そっと肩を抱き寄せる。

 この王都にやってきて意図してなかったけど赤葉たちを殴れたし、アンネリーセに酷いことをしたグリッソムもぶっ飛ばした。

 前世の知り合いである厳島さんとも再会できたし、おまけのヤマトも仲間になった。

 この王都で意外と充実していた気がするな。


「ご当主様。これを」


 リンから宝珠を受け取る。これ王家が買い取るとか言うんだろうな……。

 そうだ、サブジョブを暗殺者にして偽装をしておかないと……。


「「………」」

 うわー。嫌な奴と目が合ってしまった。なんであのオッサンが、こんなところにいるんだよ?


 ワーカーホリック鑑定士のサムダールだ。俺を鑑定してないだろうな? 面倒なことにならないといいんだが……。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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★★ 小説1巻発売予定! ★★
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マイホーム・マイライフ【普通の加護でも積もれば山(チート)となる】
― 新着の感想 ―
[一言] ここでの鑑定はちと腹が立つな。悪魔を見ようとしていたならギリギリだけど、最初から狙ってたら王女は被害を抑えるよりも優先してたってことじゃん
[一言] 見られちゃったかー
[良い点] 社畜(レベル50)おじさんと「目と目が合う~」ww
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