088_奴隷商人
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
■■■■■■■■■■
088_奴隷商人
■■■■■■■■■■
王都に屋敷を購入した。ヤマトが選んだ二番目の物件だ。
さすがに元バーランド子爵邸を購入するのは止めた。もし男爵の俺が購入すると、男爵の最大敷地までしか使えないらしい。元バーランド子爵邸ということだけでも買う気ないけど、そんな条件があるような物件なんて買うわけない。
ちなみにヤマトの三番目の推屋敷は、貴族街にあって敷地は貴族街の中でも最狭物件らしい。
貴族街に屋敷を構えてステータスシンボルにしようとは思わないから、二番目の平民街の屋敷にした。やっぱ気楽なのが一番だよね。
また、子供たちのゴミ拾いは続けている。責任者をリリスにして、バースとコロンとカロンが手伝っている。このボランティア行為はジョブ・聖女に経験値を与えてくれる。しかも結構な経験値だ。
このままボランティアを続ければ、リリスはいずれローラを完治させられるだけのレベルになるだろう。
さて、屋敷も購入したし、次は人員だ。
バースには見込みのある子供がいたら、連れてこいと言ってある。もちろん俺が詳細鑑定で確認してから、本採用にするけどね。
同時にガンダルバンには探索者に声をかけてもらっている。こちらも俺が採用するか最終判断する。
俺はゴルテオ商会の王都本店に入った。
「ようこそおいでくださいました。フットシックル男爵様」
ゴルテオさんの息子で商会長のシャルニーニさんが出迎えてくれた。
今回は事前に奴隷を購入するから、店にお伺いすると連絡を入れているから待ち構えていたようだ。
「どうもお世話になります」
「何を仰いますか、お世話になっているのは私どものほうです。フットシックル男爵様が考えられました、女性用下着は王都でも大人気です。本当にありがとうございます」
もう王都で下着を売り出しているのか。ケルニッフィでも下着はかなり流行っているらしい。女性の魅力を引き立ててくれる下着だから、少子化対策にもなるかもね。少子化対策が必要かはしらないけどさ。
新しいデザインをイツクシマさんに頼もうかな。俺じゃあ女性下着の引き出しは多くないからね。
アンネリーセが新しい下着をつけているのを想像するだけで、楽しくなってくるよ。アンネリーセ限定だけど、想像力だけは自信があるよ。
「儲かっているようでよかったです。それじゃ、奴隷を見せてくれますか」
「はい。今回は支配奴隷と任意奴隷を全て見られるとおうかがいしておりますが、それでよろしいでしょうか?」
支配奴隷は俗に犯罪奴隷と言われるものだ。なぜ支配奴隷を見るかというと、アンネリーセのようなケースもあるかもしれないからだ。
冤罪や事故を起こした支配奴隷の中に、俺の下で働いてもいいと言う人がいれば受け入れるつもりでいる。
「本来貴族の方々には個室で奴隷を見ていただくのですが、今回は数が多いことから男爵様に直接奴隷たちを見ていただこうかと思っております。いかがでしょうか?」
「それで構わないですよ。奴隷は全部で何人いますかね?」
「支配奴隷が13名、任意奴隷が62名の合計で75名になります」
王都ともなると奴隷の数も多いのか、それともゴルテオ商会が特別多いのか。
地下へ赴き、長い通路の左右に檻のあるエリアに入った。6畳くらいの部屋に、4人から6人の奴隷が入っている。
「ここは任意奴隷のエリアになります。個人での販売、家族での販売と販売人数も異なります」
「家族が一括で販売されるのですか?」
「そういう場合もございます。仮の話ですが、両親が身売りすることになりましたら、残された子供が生きていけなくなります。そういった場合は、家族全員を一括で購入という条件をつけることが可能です」
その場合、両親が奴隷で子供は奴隷ではないらしい。
「子供も奴隷にできますが、あまり幼い子を奴隷として売り買いする店は、程度が知れていると思っていただいて結構です」
奴隷は本来労働力として期待されているものだから、幼い子供を奴隷にするのは意味がない。だから良心的な店は幼い子供をあまり扱わないらしい。
「子供の場合、せいぜい10歳くらいになっていたらそれこそ奉公に出すような感覚で奴隷商に売る親も居ます」
嫌な話だ。こういった話を聞くと、倫理面では前の世界のほうが発達しているのかと思ってしまう。
他にも奴隷を購入する際の注意事項を聞く。ケルニッフィのゴルテオ商会でも聞いたことだから、簡単に説明してもらった。
さて、しっかり詳細鑑定で見させてもらいますか。
ざーっと見ていき、名前だけ聞いていく。
「俺がほしいのは兵士と家の管理をする人。基本的には兵士が30人程、家の管理をする人が5人程度です」
「はい。うかがっております」
「今から俺が言う名前の人は、購入対象外です。メモしてもらえますか」
「はい。大丈夫です。仰ってください」
任意奴隷の中でも怠け者とか性格が悪い人は除外する。そういった8人の名前を挙げる。
「その8人以外で兵士か家の管理をしたい人を募ってください。兵士はモンスターや人間と戦います。その覚悟がある人がほしいですね。家の管理のほうは掃除や洗濯、料理、馬車の御者や馬の世話、庭の管理などをしてもらう、所謂使用人です」
細かい条件は事前に伝えてある。勤務地がこの王都だけではなくケルニッフィもあり得るなど、そういった奴隷の意思を確認してから最終的に数が出てくる。
「承知いたしました。意思を確認させますので、その間に支配奴隷のほうを見ていただければと思います」
シャルニーニさんについて、別のエリアに入る。
こっちはさきほどの任意奴隷エリアに比べると、やや雰囲気が悪い。殺気のようなものを感じる。
支配奴隷らは重労働を科せられるだけでなく、危険な戦場にも本人の意思など関係なしに投入される。
戦争の場合、著しい戦功を立てると支配奴隷から解放されることもあるが、その分かなり危険な場所だ。
「支配奴隷は13名になります」
13人の支配奴隷を詳細鑑定で見ていくと、1人だけ冤罪の人がいた。この人も事故の責任を負わされたけど、その事故には関係していない。
上司たちが口裏を合わせて事故を起こした犯人に仕立て上げられたのだ。
犯罪ではなく事故の場合は、こういう替え玉が利く。犯罪だとレコードカードに反映されることが多く冤罪になりにくいが、事故はそうじゃないからだ。もっとも貴族が権力を使って冤罪をでっちあげることもあるけどね。
「このエンリケを。それ以外は要りません」
「承知しました。では、控室に案内いたします。そちらでしばらくお待ちください」
しばらく待って、シャルニーニさんが待合室に入ってきた。
「お待たせいたしました。まず任意奴隷のほうですが、兵士になりたいと言う者が38名、使用人になりたいと言うものが16名おりました」
それって……俺が除外した8人以外の全員かよ。
「なお、2家族が一括購入希望になります。内訳は2家族とも使用人を希望しました。また子供が2人と1人おります」
家族購入は問題ない。子供たちの面倒をみるのはもちろんOKだ。俺、子供は嫌いじゃないからね。
「支配奴隷のエンリケにつきましては、本人は買われても構わないと申しておりますが、少し自暴自棄になっている感があります」
そりゃ冤罪で犯罪者にされてしまったんだから、自暴自棄になるのもしょうがないだろう。
「エンリケを含めて全員購入します。いくらになりますか?」
「これはありがとうございます。任意奴隷が54名、支配奴隷が1名。合計で7000万グリルになります」
シャルニーニさんは資料を見ることなく、金額を言い切った。俺が全員購入すると分かっていたようだ。さすがはゴルテオさんの息子さんだな。
「任意奴隷の年季はそれぞれ違います。短い者で5年、長い者で16年になります。また支配奴隷のエンリケは8年の刑期になります。細かい資料はこちらになります」
55人分の資料がテーブルの上に置かれる。1枚1枚が厚い皮紙が55枚もあると、かなりぶ厚く見える。
公爵や王女のデスクの書類の量に比べると、断然マシだけどさ。
基本的に危険な仕事をする兵士のほうが、高額になって年季が短い。
ダンジョンの5階層より深いところを探索すれば、自分を買い戻せるだけの金がすぐに手に入るから死なないように適度にがんばってほしいものだ。
さすがに55人も奴隷契約するから、時間がかかった。それと俺のことを他言しないという契約を入れてもらった。
あと、購入した家に全員入らないから、近くの宿屋をしばらく借り切る。
その間に使用人と兵士用の家を敷地内に建ててもらう。数カ月かかるけど、仕方ないだろう。
「兵士になった者には、これから訓練を受けてもらう」
兵士用に武器と防具を大量に購入。その他に服や雑貨なども全てゴルテオ商会で揃えた。なんでもある大商会は便利だけど、その分散財してしまう。
だけど俺にもメリットはある。今回大勢の奴隷を購入したことで、ジョブ・奴隷商人が取得できた。ジョブ・奴隷商人の取得条件は2つあって、1つは合計で500人の奴隷を売り買いすること。2つ目は一度に30人以上の奴隷を売り買いすること。
俺は2つ目の条件をクリアしたことで、ジョブ・奴隷商人を取得できた。これで奴隷の解放を誰かに頼ることなくできるようになった。
ちなみに5人以上の違法奴隷を扱うと、盗賊落ちするから奴隷商人たちはかなり気を使っているらしい。
違法奴隷というのは騙したり攫ってきて無理やり奴隷にされた人たちのことだ。
あとジョブ・奴隷商人が赤点滅しているから、他のジョブと合成できるのが分かる。
確認してみたら、ジョブ・拠点豪商と合成できるのが分かった。合成後のジョブが分からない以上、ジョブ・拠点豪商を合成で使うのはもったいない。転移できるだけでジョブ・拠点豪商は十分に凄い。下手に合成して転移できなくなったら、目も当てられないからね。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
また、『ブックマーク』と『いいね』をよろしくです。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』ならやる気が出ます!




