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087_転職のすすめ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 087_転職のすすめ

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 ローラを部屋のベッドに寝かせ、俺の下にやって来た2人の少年少女と共にリビングへ。


「さて、2人共。まずはこの魔法契約書にサインしてもらおう。字が書けなければ、手形でもいい」

 魔法契約書に書かれている内容は、他の人たちと同じで俺の情報を漏らさないというもの。その説明を聞いたリリスはサインし、ソドンは手形でサインに代えた。


「では改めてようこそフットシックル男爵家へ。俺たちは2人を歓迎する」

「ありがとうございます。男爵様」

「ありがとうだよ」

「そういうわけで、先ずは風呂だ。アンネリーセはリリスを風呂に入れてやってくれ。その後はソドンだが、そっちはバースに任せる」

 2人が風呂に入るのを待っている間に、歓迎パーティーの仕度だ!


 ローズ産の果物各種!

 迷宮牛肉の焼き肉!

 あとカレー!


 この王都は海から遠いらしく、魚が手に入らない。池イカもないんだよね~。

 川は近くにあって魚はいるけど、かなり臭みがあるらしく魚を獲らないらしい。

 今度川で釣りしようかな。いや、海を目指してもいいかも。漁港に拠点を設定して、王都で売れば大儲けじゃない?

 しかしアイテムボックス持ちが居るのに、なんで魚が流通しないかな。商人たち、がんばってくれよ。


 カレーはすでにスパイスを配合したものがあるから、結構簡単にできる。

 焼き肉はやっぱり炭火焼だけど、公爵邸だから控えている。

 ローズ産の果物は、とにかく美味い! 季節を選ばす美味い! どこでも美味いのだ!


「美味しいです!」

 カレーを口に入れたリリスが目を剥いて、美味しいと叫んだ。

「あ、ごめんなさい……」

「いいのよ。たくさん食べなさいね」

 アンネリーセが優しく微笑む。


「お肉だよ! 美味しいだよ!」

 焼き肉をハフハフさせて食べるソドンも美味しいと言ってくれる。

 そのタレはローズ産果物を使っていることもあり、いい感じに仕上がっているんだよね。


 大人数で食べるご飯は特に美味い。

 前世では1人で食べることが多かったから、こういう和気藹藹(わきあいあい)とした雰囲気が心地よい。


「トーイ君のカレーライスは、どれだけ食べても飽きないわ。本当に美味しいね」

「食材さえあれば、色々なものを作るんだけどね。これでも料理は得意分野だから」

「私も料理はするけど、さすがにカレーをスパイスからは作れないわ」

 イツクシマさんも料理を手伝ってくれたけど、彼女は本当に手慣れていた。

 それに較べヤマトは……。


「僕は食べる専門なんで~」

 ヤマトはキッチンに立たない。立っても邪魔になるだけだから、立たないと以前言っていた。

 今はいいが、俺所有の屋敷に住むようになったら、ちゃんと下宿の代金はもらうからな。


「今度ラーメンを作ってよ。僕ラーメン大好きなんだ」

 勝手なことを言うな。でもラーメンか。俺も食いたいな。


「ラーメンならなんとかなりそうだから、今度チャレンジしてみるわね」

「イツクシマさんはヤマトに甘い。調子に乗るから、聞き流せばいいんだよ」

「でも私もラーメン食べたいから」

「やったね!」

 ヤマトからは絶対に金をとるからな。


「あ、そうそう。屋敷の件だけどさ、色々見たよ。それで候補を3つに絞ったんだ」

「どんな屋敷だ?」

「一番お勧めは、貴族街と平民街の丁度境にある元子爵家の屋敷なんだ。内見したけど、傷みも少ないし風呂もあったよ。あと建物も庭も広かったよね、ジョジョクさん」

「敷地も広く、建物の大きさも申し分ないかと」

 そうか、早く決まりそうで良かったが、一応前の持ち主について聞いておくか。


「その子爵家はどうして屋敷を手放したんだ?」

「よくある話だよ。権力争いの果てに家が潰されたんだ。10年くらい前らしいよ」

「それ、もしかして……バーランド子爵家か?」

「あれ、なんで知ってるの?」

 また嫌な物件を引き当てたな……。


 リリスを見ると、彼女も微妙な顔をしている。

 そのバーランド子爵は寝込んでいるローラの夫だった人だ。つまりリリスの父親だな。

 バーランド子爵が爵位を剝奪された後は、財産を食いつぶしながら生活していたらしいが、そんなことが長く続くわけもなく次第に生活費に困るようになった。

 生活費に困った元子爵は2人の前から姿を消し、今はどこにいるか分からない。

 ローラは元々騎士の娘だったからそこまで派手な暮らしはしていなかった。没落後も家計を支えるために必死で働いたが、半年ほど前に倒れてしまったのだ。


「あー……他の候補はどういう感じなんだ?」

 3軒に絞ったんだろ?


「3カ所とも内見したけど、バーランド子爵邸だった屋敷が一番だと判断したんだけど……。トーイ君の屋敷だし、嫌ならしょうがないね。二番目だと平民街の屋敷かな。ここは敷地がとても広いんだ。広さだけなら伯爵級だね。ただし建物はそこまで大きくないんだ。まあ、今のフットシックル男爵家の人数なら、全然入るけどさ」

「伯爵級の広さというのが、想像できないんだが?」

「えーっとね。王都の貴族街の屋敷は、爵位によって広さがある程度決まっているんだ。でもそこは平民街だから、そういうの無視していいよ」

 そんな決まりがあるのか、知らなかったよ。


 正直言って元バーランド子爵邸は気乗りしない。二番目にしておこうかな。

「ご当主様。屋敷を購入するのはいいのですが、我らはダンジョンにも入りますし警備をするには人員不足です」

 ガンダルバンの言うことは、理解できる。

 人を雇うのに、俺はそこまで否定的ではないぞ。ただし色々秘密があるから、それを見ても他言できないように魔法契約書は交わしてもらうけどね。


「何人補充するべきかな? 多めでいいよ。王都だけじゃなくケルニッフィの屋敷も警備を考えないといけないし。あと、予備の人員も含めてほしいかな」

「ケルニッフィの屋敷は10人、王都のほうは伯爵級の物件の広さですと、15人から20人は必要です。それに予備兵を入れますと、30人程は必要になるかと」

 結構な数だな……。

 探索者に良い条件を提示するのは可能だけど、それだと他の貴族との値上げ競争になりかねないしな~。


「そんなに探索者から引き抜いたら、ギルドに怒られそうだな」

「何も探索者でなくとも奴隷を購入されればよろしいかと」

 う~ん、奴隷か。今さらだけど、人を買うというのは気が進まないんだよね。


「トーイ様が奴隷購入されなくても、ガンダルバンさんやバースさんたちが、奴隷を購入すればよろしいのではないですか。皆さんは数人の奴隷を購入しても問題ないくらい稼いでますから」

 アンネリーセの提案は結局俺が奴隷を買ったようなものじゃないか。直接か間接の違いなだけだよ。


「それがよろしいでしょう。某は10人、バース、ジョジョグ、リン、ソリディア、ロザリナがそれぞれ5人。これだけ奴隷を購入すれば、警備に必要な人員は確保できます」

 ガンダルバンが乗り気だけど、俺は奴隷という制度が好きじゃないんだよな。


「ロザリナは当主様に買われて幸せなのです。他の子たちも幸せにしてあげてほしいのです」

 ロザリナが幸せなら、俺はとても嬉しい。俺が奴隷を購入したら、奴隷が幸せになるか……。


「分かった。奴隷を購入するよ」

「はい。ありがとうなのです!」

「ただし犯罪者の奴隷は購入しない。ジョブが村人でも、やる気があればそれでいい。あと俺の下で働きたいと言う孤児を雇おう。奴隷も子供も剣士や槍士、弓士などに育てる手間はかかるが、寧ろこちらの意図したジョブに就いてもらおうじゃないか」

「警備だけではなく、屋敷の管理をする人や料理人なども必要ですよ」

 む、アンネリーセの言う通りだな。結構な人数になりそうだ。


「それらも含めて、ゴルテオ商会にオファーしよう」

「それでよろしいかと存じます」

 ガンダルバンが満足して頷いた。


「それとガンダルバンは探索者に声をかけてくれ」

「承知しました」


「バースは子供の中で俺のところで働いてもいい子を集めてくれ」

「はっ」


「あと、俺の本拠地はケルニッフィだ。王都ダンジョンの10階層のモンスターを1000体狩ったらケルニッフィに戻る。王都の屋敷の管理をする人員と少しの護衛は残すが、多くはケルニッフィに行ってもらうことになるからそれでもいいと言う人だけを雇うことにする」


 人員補充の方向性が決まった。次はリリスとソドンの話だな。

「さて、リリスとソドン」

「はい」

「はいだよ」

「2人にはすでに転職できるジョブがある」

「「え?」」

 2人とも12歳だし、転職できるジョブがあっても不思議ではないはずだ。しらんけど。


「2人の転職可能なジョブを教える。転職したければ、言ってくれ」

「本当に私にジョブが……?」

「オラ、転職のお金ないだよ」

「お金は要らない。転職もすぐにできる。そこら辺は気にせず、転職したいかどうかだけ言ってくれればいい」

 神官はレベルを上げないとスキル・転職を覚えないが、聖赦官はレベル1時点でスキル・転職を持っている。だから2人の転職可能ジョブに、今すぐ転職させることができる。


「リリスの転職可能ジョブは聖女だ」

「え!? 聖女ですか……?」

「聖女はリリスの生き様が清廉潔白、慈愛に満ちたものだからだろう」

 俺にはとても無理な生き様だ。

 彼女のような没落貴族を雇ってくれるところはなく、日雇いの仕事をして糊口をしのいできた。しかも自分が貧乏しているのに食べ物を他の子供たちに分け与えたり、母ローラの看病を献身的にしたりと彼女は身を削るような人生を送ってきた。そういった彼女の優しい心が、聖女に転職できる条件ということだろう。


「ジョブ・聖女の取得条件はちょっとやそっとのことではない。リリスはそれほどのことをしてきたんだ。誇っていいぞ」

 ここで勘違いして増長するリリスではないと思うが、そこは俺たちが目を光らせるとしよう。といっても、俺はそんなに立派な人間じゃないけどな。


「それに俺の治療ではローラを完治させることはできないが、ジョブ・聖女のレベルを上ればローラの病も完治させることもできるだろう」

 俺は聖赦官のレベルを積極的に上げようと思わないから、リリスが聖女になってローラの病気を治してくれたほうが助かるわけよ。


「私は転職したいです!」

「そうか!」

 さっそく転職だ!

 これで神官系最上位職が仲間に加わったぞ!


「次はソドンだな。ソドンの転職可能ジョブは、隠者だ」

「いんじゃ?」

「簡単に説明すると、隠れることが得意なジョブだな」

「オラ、かくれんぼは得意だよ」

「転職して隠者になれば、もっと得意になるぞ」

「オラ、転職するだよ」

 ソドンも転職っと。ほほいのほい。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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[良い点] 聖女も良いけど隠者はいいね。情報収集で新たな人材をゲット
[一言] まさかの聖女wwwヒロインじゃないんかーい!
[良い点] 聖女!!
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