084_王都ダンジョン8階層ボス戦
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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084_王都ダンジョン8階層ボス戦
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8階層のボス部屋の扉が重苦しい音を立てて開いていく。
俺たちが中に入ると扉は自然と閉まり、部屋の中央部に黒い霧が集まってボスが形成されていく。
ボコボコと無数の半魚人が現れ、そして最後に通常の半魚人の倍近い大きさの4メートル級の半魚人が現れた。
今さらだが、半魚人は魚の頭と胴体に人間の腕と足が生えている。結構キモい。
「デカいな」
「さしずめ半魚人の王といったところでしょうか」
「キングということだな」
キングを詳細鑑定で確認すると、半魚人王だった。異世界なのにキングじゃないのかよ。
「半魚人王は魔法戦士だ。武器は使わないが、魔法と格闘を融合させた戦いをするぞ。それと他の半魚人の能力を30パーセント上昇させている。さらに普通の半魚人を次から次へ召喚するから半魚人王を倒さないと際限なく普通の半魚人が増えていくぞ」
数がどんどん増えるのは厄介だけど、そこまで悲観することはない。
「俺とガンダルバンが半魚人王を倒す。皆は雑魚を減らしてくれ」
「「「はい!」」」
作戦というほどのものではないが、簡単に指示を出す。
下級茨精霊のローズも召喚し、後衛を守るように指示する。
「アンネリーセ。頼むぞ」
「はい! サンダーバースト!」
閃光と轟音。無数の稲妻が雑魚を一掃する。
「行くぞ!」
飛び出した俺たちを、半魚人王が憎々しげに睨む。
その半魚人王の前に魔法陣が現れ、高速で回転する水の輪が飛んでくる。
「うぉぉぉっ!」
ガンダルバンが盾を構えていなし、回転水ノコギリは天井を削った。
魔法の次は雑魚を召喚だ。半魚人が地面から顔を出して浮き上がるように出てくる。
「おりゃっ」
俺の目の前に顔を出した半魚人を、サッカーボールのように蹴り飛ばす。ボキッと骨が折れる音が聞こえ、召喚途中でも半魚人は消え去った。
「ふんっ! アンガーロック!」
ガンダルバンが盾を構えたまま、半魚人王に体当たりして敵対心を上げた。
半魚人王はたたらを踏んで3歩下がったが、すぐにパンチを繰り出してくる。
パンチを盾で受けたガンダルバンの足が地面にめり込む。
ダンジョンの壁や床はそう簡単に壊れないが、このレベルの戦いではそうもいかないようだ。
俺は半魚人王の横に回り込み、その太い足に斬りつけた。
鎧も鱗もないむき出しの足だが、かなり硬い。さすがはボスだ。
「だったらこれでどうだ、ヒロイック・スラッシュ!」
ジョブ・英雄剣王のレベルが上がり、スキル熟練度が(中)になったヒロイック・スラッシュは、半魚人王のHP上限を一気に二割まで低下させた。
ヒロイック・スラッシュはレジストされることもあるが、MATKが高いとレジストされにくい。ボスのようなHPが高いモンスター相手でも、ステータスポイントをINTに振ったらレジストされにくい、かなりチートなスキルだ。
「Syaaaaaaaa」
怒った半魚人王の前に、魔法陣が現れる。
「させるかっ、シールドアタック!」
対象にノックバック効果を与えるシールドアタックによって、魔法陣が霧散した。
「ナイスだ、ガンダルバン!」
俺も負けてられない!
「貫通!」
防御無視で必ず250ポイントのダメージを与える貫通は、メインジョブにセットしている転生勇者のスキルだ。
「Syaaaaaaaa」
ノックバックから復帰した半魚人王が、ガンダルバンにラッシュ。
「鉄壁!」
無数のパンチとキックを、ガンダルバンは盾で防御を固めて亀のように耐える。
スキル・鉄壁の効果でガンダルバンは1分間被ダメージを20パーセント軽減する。
激しい攻防をしている俺たちの周囲では、ロザリナやリンが中心となって雑魚の数を減らしている。しかし半魚人王がいる限り、雑魚は召喚し続けられる。
雑魚といっても通常の半魚人に較べてかなり強化されている。ボス補正の上に半魚人王が存在することでさらに能力が30パーセント強化されているから、ロザリナたちでも気を抜いたら大怪我をする相手だ。
ガンダルバンはスキル・アンガーロックをかけつつ、パワーアタックやヴァイオレンスアタックで半魚人王にダメージを与えていく。
俺もスキルを駆使してダメージを与える。そのスキルの中でも、英雄剣王Lv10で覚えたスキル・乱れ斬りは使い勝手がいい。
乱れ斬り(低)は、敵に最大10回の斬撃を与えるだけでなく、全斬撃のATK値が3倍だからバカみたいにダメージが出るんだ。
「よし、これで終わりだ!」
―――スキル・英雄の帰還!
魔剣サルマンを振り下ろすと、灼熱のドームが半魚人王を包み込んだ。
「Syaaaaaaaa」
ドーム内で半魚人王が悶え苦しむ。
これはジョブ・英雄剣王Lv30で覚えたスキル。まだ熟練度が(微)だが、半径3メートル以内の敵全体を灼熱ドームに閉じ込め、防御無視の総ダメージ1500ポイントを与えるというぶっ壊れスキルだ。
1500ポイントのダメージを敵の数で均等割りするが、今回は半魚人王しかドーム内にいないから1500ポイントのダメージは全て半魚人王に乗る。
今のスキル・英雄の帰還の消費MPは150ポイントと多く、転生勇者でも2回しか使えないからボス戦特化のスキルだと言えるだろう。
灼熱のドームが消えると同時に、半魚人王も消え去った。
俺たちが半魚人王を倒すまで、雑魚の邪魔は一切入らなかった。さすがは俺の仲間だと、鼻高々で周囲を見渡す。
「あと5体か」
雑魚の召喚ペースはかなり速かったはずだが、ロザリナたちの活躍でたった5体しか残っていなかった。
「ガンダルバン。最後の仕上げだ」
「はっ!」
俺とガンダルバンが加わり、雑魚を殲滅。
「皆、お疲れだ。怪我はないか?」
「コロンとカロンがかすり傷を負った程度です」
サブジョブに聖赦官をセットし、2人の怪我を癒す。
「「ありがとうございます」」
「怪我をした時は、正直に言うんだぞ。それは恥ずかしいことではないんだからな」
「「はい」」
これで8階層も踏破だ。
8階層で戦った半魚人の総数は軽く3000を超える。
ドロップアイテムは次の通りだ。
<半魚人・ノーマル>
・Dランク魔石 : ギルド換金額15万グリル × 3000個 = 4億5000万グリル
<半魚人・レア>
・魔剣(片手) : ギルド換金額100万グリル × 70本 = 7000万グリル
・魔剣(両手) : ギルド換金額120万グリル × 50本 = 6000万グリル
・魔槍 : ギルド換金額100万グリル × 50本 = 5000万グリル
・魔弓 : ギルド換金額150万グリル × 20本 = 3000万グリル
・魔杖 : ギルド換金額120万グリル × 20本 = 2400万グリル
※魔武器は全て水属性。
<ボス半魚人・ノーマル>
・Cランク魔石 : 30万グリル × 80個 = 2400万グリル
<ボス半魚人・レア>
・魔剣(片手) : ギルド換金額200万グリル × 1本 = 200万グリル
・魔槍 : ギルド換金額200万グリル × 1本 = 200万グリル
※魔武器は全て水属性。
<ボス半魚人王・ノーマル>
・火属性の魔剣(片手) : ギルド換金額400万グリル × 1本 = 400万グリル
<宝箱>
・若返薬 : ギルドに提出してないが、想定換金額は10億グリル
・10万グリル黒金貨が30枚=300万グリル
8階層のモンスターから得たアイテムだけで、7億1900万グリルという換金額になった。
若返薬は公爵にでも売りつけてやろうと思っている。もちろん高額で。
1回入るだけでも億越えの儲けだから、本当に8階層は儲かる。でも数が多いから危険と言えば危険だ。そういったリスクとリターンをどう考えるかだな。
あと魔弓が意外と高い。これは魔力で矢を創るから、物理的な矢が少なく済むためだろう。
裕福な弓士などはこぞって魔弓を買ってくれるそうで、市場に出るとすぐに売り切れてしまうらしい。
レアドロップ率を上げてくれる『幸運の尻尾』を持っていても、ドロップはかなり少ないから売り切れるのも納得だ。
「さて、帰るか」
ギルドを出てもまだ日があった。
久しぶりに屋台でも見て行こうかな。
「ガンダルバン。俺は屋台を見て行くから先に帰ってくれ」
「承知しました。では、アンネリーセ殿の他にロザリナとバースをお供に」
そんなに仰々しくしなくてもいいんだが、ガンダルバンの立場ではそれを言わないといけないんだろうな。
それを受け入れて、ガンダルバンたちの背中を見送る。
「3人とも行こうか」
「はい。トーイ様」
「はいなのです」
「承知いたしました」
アンネリーセが右、ロザリナが左、バースが後ろにつく。
王都のメインストリートともなれば人が多く混みあっている。
夕日が人々や町を赤く染める。なかなか趣のある景色だ。雑多な感じはするが、嫌いじゃない。
もっとも愛しいアンネリーセと歩いていると、どこだって俺にとっては天国だ。
ご愛読ありがとうございます。
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次の更新は3月25日です。




