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077_王都ダンジョン8階層集団戦

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 ■■■■■■■■■■

 077_王都ダンジョン8階層集団戦

 ■■■■■■■■■■



 朝のひんやりとした空気に、野太い声が響く。

「なぜだっ!? なぜトーイは帰らんのだっ!?」

 声の主はバッカス。俺が公爵と一緒にケルニッフィに帰らないことを問い詰めている。俺の胸倉を掴んで。


「ちょっと公爵に頼まれごとをしまして」

「トーイが帰らなかったら、あれはどうなるのだっ!? ワシはもう待ちきれんのだぞ!」

 俺よりもゴルモディアのことかよ。まったく欲望に忠実なオッサンだな。

 まあむさ苦しいオッサンに一緒に帰りたいと言われても、お断りしたいからゴルモディアを鍛えたいと言われたほうがスッキリする。


「はいこれ。俺は両手剣が希望です」

「なんだ、ゴルモディアをワシに預けてくれるのか。それならそうと、早く言えよ」

 俺の手からゴルモディアを奪い取るように受け取り、頬ずりをする髭面のオッサン……。絵面的にヤバすぎるだろ。俺の視界に入らないところでやってくれ。


 バッカスは意気揚々と帰っていった。バッカスのおかげで俺のジョブ・酒豪のレベルは20まで上がった。それでもバッカスの飲み方には追いつけない。あれは化け物だ。酒に関してだけだけど。


 公爵邸を見渡すと屋敷を管理する使用人と警備の騎士と兵士はいるものの、今までよりもかなり広く感じる。


「俺たちも行くか」

「はっ」

 グリッソムを破滅においやるための証拠が見つからない。根を詰めるのもよくないと思い、久しぶりにダンジョンに入ることにした。


「ヤマト。厳島さんに変なことするなよ」

「しないから安心して」

「厳島さんもヤマトに変なことされたらすぐに言ってね。闇に葬ってやるから」

「うん。その時はお願いするね」

「ちょっと僕の扱いが酷くない!?」

 ヤマトがギャーギャーうるさいけど、無視だ無視。




 俺たちはダンジョンの入り口、パルテノン神殿のような建物に入った。

 今回は8階層の探索だ。さっさと10階層へ向かいたい。王女との約束は10階層のモンスターを1000体倒すこと。


 さっそくダンジョンムーヴで8階層に移動。さて、どんなモンスターが出てくるのか。

「コロンとカロンは一発だけ攻撃を入れたら無理をせずにな」

 ダンジョンムーヴに驚いている2人に声をかける。魔法契約で漏洩はできないから安心だ。


 姉のコロンは小さな体に似合った短剣を2本持って戦う、二刀流の短剣バージョンだ。

 ステータスはDEXとAGIが高い。言い換えると命中と回避が高いということだ。

 体が小さいから村人の時から短剣を使っていたそうだ。さらに元々器用だったことから短剣を2本使っていたら、双短剣士に転職できるようになったらしい。

「は、はい」


 妹のカロンはSTRとVITが高いゴリゴリの前衛タイプ。ガンダルバン並みの重装備で巨大な斧を使う。自分の背丈ほどの長さと、大きな刃がついた戦斧だ。

 背が高く骨格もしっかりしていて、腕も長いから戦斧のリーチはかなり長い。

 ジョブは重戦士で、このジョブは両手武器なら戦斧でも両手剣でも戦槌でも何でも扱える。

「分かりました!」


 一発でも攻撃が当たれば、ダメージがなくても経験値はもらえる。コロンはレベル13、カロンがレベル12だから、攻撃を受けると一発であの世逝きということになりかねない。特に軽装のコロンはヤバいだろう。だから無理せずにレベルを上げさせる。


 8階層の様相は7階層までと違って、洞窟内の熱帯雨林ではなかった。洞窟は変わらないが、森はなくなり広くて無骨な岩が死角を作る場所になっている。しかも川まで流れているが、その流れはかなり速く激流だ。


 バースの道案内で進んでいると、気配を感じた。

「もうすぐ接敵する。気を引き締めろよ」

「「「はっ!」」」


 気を引き締めて隊形の確認をした俺たちは前進する。

 現れたのは魚の頭に人間の体をした半魚人だ。その手には槍や剣、杖など多種多様な武器がある。体も鎧のような鱗で覆われていて硬そうだ。


「杖を持ったやつは魔法を使ってくるぞ」


 半魚人はソルジャー(両手剣)、ランサー(槍)、ナイト(盾・片手剣)、マジシャン(杖)、アーチャー(弓)の五種類だ。

 それらの半魚人が20体。初見のモンスターの初戦としては、なかなかハードルが高い。特にコロンとカロン姉妹を抱えている現状では、ちょっと考えてしまう。


「私たちなら大丈夫です。最悪は引きますので」

「そう威張って引くと言うのもなんだがな」

 ガンダルバンが苦笑すると、2人が慌てて頭を下げた。


「20体なら抑えてみせます。やらせてください」

「ガンダルバンがそう言うなら、いいだろう。ソリディアは眷属を多めに召喚してくれるか」

「はい、お任せください」


 俺はメインジョブをエンチャンター、サブジョブを転生勇者に変更して皆にエンチャントを行った。

「よし、行け!」

「「「応っ!」」」


 ガンダルバンが巨体を揺らして突撃する。

 その後にジョジョク、リン、ロザリナが続き、ソリディアが召喚した4体のレイスがゆらゆらと飛んでいく。


 すぱんっすぱんっと魔毒の弓から矢が射られる。毒が付与された矢は、こういった集団の連携を崩すのに丁度いい。矢が刺さった数体の動きが明らかに悪くなった。


「サンダーレイン!」

 アンネリーセの魔法が半魚人を蹂躙する。毒矢を受けていた数体はそれでこと切れた。


 半魚人マジシャンが水の槍を放った。ガンダルバンがそれをデスナイトシールドで防ぐ。しっかり見えている。


「セイントアタック」

 俺も魔法で援護する。1体を倒した。


「はぁぁぁっ!」

 リンがアクロバティックな動きで宙を舞う。ソルジャーの両手剣を器用に躱して反撃とばかりに槍を突き刺した。


「てやっ!」

 リンの槍に刺され、脇ががら空きになったソルジャーの懐にロザリナが潜り込んで拳を5発叩き込んだ。吹き飛んだソルジャーは倒れて動かない。いい連携だ。


「ローズ。頼む」

 俺の契約下級茨精霊であるローズを召喚し、ガンダルバンたちに群がる半魚人たちを拘束する。地面から現れた茨に絡めとられて、半魚人たちの動きが止まった。


 後方からマジシャンが魔法を撃ってくる。水系の魔法のみだが、遠距離攻撃は邪魔だ。

「アンネリーセ。あの2体のマジシャンを攻撃できるか」

 ガンダルバンたちを挟んで距離があるため、俺の魔法では届きそうにない。

「お任せください」

 アンネリーセの魔法なら、攻撃できるようだ。さすがは愛の賢者様だね。


 ミスリルの杖を掲げたアンネリーセの魔力が溢れ出す。

「サイクロンカッター」

 竜巻が起こり、2体のマジシャンを飲み込む。竜巻に翻弄されて、体中から血を流し、腕や足が細切れになっていくのは、なかなかスプラッターな光景だ。

 だけどそれでマジシャンはいなくなった。あとは接近戦だけ。


「コロン、カロン。行け」

「「はい!」」

 ローズの茨でかなり動きを封じているから、2人でもつけ入る隙はあるだろう。


 ガンダルバンたちが残りの半魚人を倒していく一方、コロンとカロンがチクチク攻撃する。


 最後はソリディアが召喚したレイスがナイトを倒して終わり。さすがに20体は多かったが、この8階層ではこういった集団戦がメインになるのかもしれないね。


 ドロップアイテムはDランク魔石が18個と半魚人たちが持っていた武器の両手剣が1本、槍が1本だった。

 武器はどれも魔剣と魔槍で、効果がついていた。これらを使うのはジョジョクとリンだけど、俺がエンチャントした武器を持っている。

 しかも王女からもらった魔剣と魔槍もある。性能は王女からもらった武器>俺のエンチャント武器>ドロップアイテムの順だから、ギルドで換金することにした。


 ちなみに俺がもらった魔剣サルマンは、王家の宝物庫で保管されていただけあってかなり性能が高いものだった。ミスリルの両手剣の代わりに使うつもりだったけど、まさかいきなりエンチャンターをメインジョブにするとは思っていなかったよ。


 

ご愛読ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バッカスなかなか好きなキャラだな
[気になる点] 精霊どこいった? なんか歴史的な何かじゃなかったのか。
[一言] そういえばこっちはカクヨムに掲載しないんですね、まあカクヨムの方は閲覧で資金になるらしいので開くだけですから複数のお話を見ることに意味があるのか分からりませんが。
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