060_公爵もザイゲンも怖っ(二章・完)
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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060_公爵もザイゲンも怖っ
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ゴルテオ商店で購入した鋼鉄製武器と鋼鉄製防具を机の上に並べ、これらの装備にエンチャントを施した。
転生66日目から70日目まで暇だったからエンチャントしまくった。MPポーションを飲みまくったおかげで、腹の調子が悪い。
・アタックソード : ATK+55 斬撃強化(微) 自動修復(微) 耐久値57/57(鋼鉄の片手剣 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アタック + エンチャント・リジェネーション)
・アタックバスター : ATK+69 斬撃強化(微) 自動修復(微) 耐久値68/68(鋼鉄の両手剣 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アタック + エンチャント・リジェネーション)
・アタックランス : ATK+71 刺突強化(微) 自動修復(微) 耐久値65/65(鋼鉄の槍 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アタック + エンチャント・リジェネーション)
・アタックアロー : ATK+45 刺突強化(微) 耐久値37/37(鉄の矢 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アタック)
・ディフェンスシールド : DEF+40 VIT+1 火耐性(微) 自動修復(微) 耐久値64/64(鋼鉄の大盾 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・ファイア + エンチャント・リジェネーション)
・ディフェンスメイル : DEF+50 VIT+1 氷耐性(微) 自動修復(微) 耐久値57/57(鋼鉄の鎧 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アイス + エンチャント・リジェネーション)
・ディフェンスプレート : DEF+30 AGI+3 自動修復(微) 耐久値54/54(鋼鉄の胸当 + Eランク魔石 + エンチャント・ハード + エンチャント・アクセル + エンチャント・リジェネーション)
ミスリルの両手剣がかなり見劣りする能力に仕上がった。
ゴルテオさんに聞いた話では、通常は鍛冶職人やアイテム職人が魔剣などのマジックアイテムを製作するそうだ。
俺の場合は買ってきた鋼鉄製装備にエンチャントを施す。特にエンチャント・ハードで下地を作るためか、能力に大きな差が出ている気がする。あくまでも気がするだけで根拠はない。
製作工程が違うと、アイテムの能力に差が出る。当然だと思うけど、新鮮だ。
エンチャント・ハードを2回施せば、さらに多くの効果をエンチャントできるかもと思いやってみたが、2回目のエンチャント・ハードは発動しなかった。
熟練度が低いのか、それとも同じエンチャントは2回できないのかのどちらかだろう。
また、革製品やローブのようなものに、俺のエンチャントはできなかった。エンチャント・ハードで耐久値が増えないどころか減ってしまうのだ。
エンチャント・ハードは金属製品か牙や骨などの硬いものにしか対応しないようだ。
そのためか、弓にはエンチャントができなかった。ただし矢のほうはエンチャントできているが、耐久性の問題でエンチャント・リジェネーションはできなかった。
鉄製じゃなくても金属製の弓があれば、もしかしたらエンチャントできるかもだけど今は手に入っていない。
ガンダルバンたちにこれらの武器と防具を装備してもらう。矢以外はどの装備にも自動修復の効果があり、通常の鋼鉄製品よりも大幅にATK値やDEF値が上昇している。
新装備に着替えてもらったが、元々鋼鉄装備だったから見た目はあまり変わってない。ちょっとだけ色が変化して、金属的なシルバーからやや黄みかかったシルバーになっている。
予備を少し残して、ほとんどはゴルテオ商店に売った。なんかひと財産できた気がする。
転生71日目にやっと公爵から呼び出しがあって、城に向かった。
城内はかなり綺麗になっていたが、壁や天井の穴はさすがに塞がってない。
公爵の執務室に入って挨拶し、この数日何をしていたのかと聞かれたから屋敷でのんびりしていたと答えた。
エンチャントは1時間もあれば終わる。MPポーション飲むのも限界があるから、1時間で限界だ。後はアンネリーセの膝枕で昼寝したり、アンネリーセの膝枕で本を読んだり、アンネリーセの膝枕で耳かきをしてもらったりしていた。すっごく有意義な時間だったよ。
「城内の穴はどうするのですか?」
「新しい城を建てることにした」
改修できるらしいが、城はかなり古いものだから新しくするらしい。大きな城だから、どれだけの費用がかかるのだろうか? 俺が心配することではないが、ちょっと気になる。
「さて、フットシックル名誉男爵家にはいくつか話がある」
「いくつもですか?」
要らないですよ。
「嫌な顔をするな」
「顔に出てました? それは失礼しました」
公爵がため息を吐く。俺がため息を吐きたいんですけど。
「勲章は略式で授与することにした。フットシックル名誉男爵もそのほうがいいだろう」
「略式ですか?」
文官がトレイを持ってきて、公爵の机の上に置いた。そこから勲章を手に取った公爵が俺にそれを差し出してくる。
俺が受け取ったら、これで終わりらしい。いや違った。革袋も出てきた。前回の時ももらったけど、お金だね。前回より多いのは撃退と討伐の差ということらしい。
「これだけでいいのですか?」
「城内があの状態だ。今回は略式で渡す。そなたの配下にも勲章を配っておいてくれ」
こんな簡単でいいなら、授与式なんてやらなくていいのに。
「言っておくが、特例だからな。通常は盛大に行うものだぞ」
「あ、はい。そうですよね」
公爵には俺の心の声が聞こえているようだ。俺なんかの考えなんかお見通しっていうことだろう。
「次は褒美の件だ」
はい? 今お金もらいましたよ。
「そなたを男爵にする」
「え?」
「本当は子爵にしようと思ったが、そなたは喜ばぬだろう。だが爵位をそのままにしておくのも悪しき前例になってしまうから、名誉を取ることにした」
要約すると、子爵は勘弁してやるが、名誉を取った男爵になれと言っているようだ。
「俸給は変わらぬし、領地もない。今までと変わるとすれば、爵位を子孫に譲れることだな。その程度のことは受け入れろ」
小出しにして俺が断れないようにしている? 俺の性格をよく分かってらっしゃる。なんでこんなに知られているのだろうか?
「それからこれは頼みなのだがな」
「頼みですか?」
なんか質問形ばかりだな、俺。
「当家の騎士と兵士を鍛えてやってほしいのだ」
「はい?」
「そうか、引き受けてくれるか」
「いえいえいえ、今のは了承じゃなくて聞き返したんですけど」
「分かっている」
くっ、遊ばれてる? 俺、おちょくられている?
「しかし公爵家にはバルカン様という強者がいらっしゃるではないですか。私に兵を鍛えろと言わなくても、バルカン様に命じればよろしいのでは?」
「バルカンは騎士団全体を見なければならん」
その割には俺を引きずっていき、訓練させたよね。しかも毎日。あの1カ月ちょっとのことは忘れませんよ。トラウマとして。
「若い者たちをダンジョンに連れていってくれるだけでいいのだ」
「無理です」
きっぱりお断り。ダンジョンに行って兵士を鍛えるということは、つまるところレベル上げだ。兵士たちは最低でもレベル10にはなっている。そういった兵士たちのレベルを上げるのは、最低でも4階層ということになる。
4階層までどんなに急いでも1日半はかかる。そこでレベル上げして帰ってくるだけで4、5日はかかるだろう。そんなものにつき合ってられない。
そもそも俺の場合は人に見せられないジョブやスキルが多いからね。
「そう邪険にするな」
「では、丁寧にお断りさせていただきます」
「……どうしてもか?」
「はい。どうしてもです」
大きな息を吐いた公爵は、分かったとひと言だけ呟いた。
「フットシックル男爵に任せれば、兵士たちの質の底上げになったものを。本当に断るのか? 報酬は用意するぞ」
今分かったって言ったよね! まったく女々しいくらい諦めが悪いよ、この公爵。
「はい。お断りします」
ちょっとでも隙を見せるとつけ込まれそうだから、言葉短く拒絶する。許容できるものとできないものがあるの、分かるかな。
公爵はしつこく聞いてきたが、絶対にダメ。
「……次は宝珠の対価だな」
そんなものもあったね。もうお腹一杯なんですけど。
「それこそ子爵になるつもりはないか?」
「ありません」
「そうキッパリ言うな」
そう言うと知っていて聞いているでしょ。さっき言っていたじゃん。
「当家が所持しているマジックアイテムを譲る。どういうものがいいか?」
「公爵家所蔵のマジックアイテムですか!?」
これはラッキーだ。どんなお宝が出てくることやら。
「宝物庫にあるもので、家宝以外ならなんでも構わん」
公爵はバサリッと紙の束を机の上に置いた。
「このリストの中から選べ」
ではさっそく……わくわくするね。
しかし多いな。どれだけ宝物庫にしまい込んでいるんだ。てかさ、こんなの見せていいの? 俺が盗賊だったら、盗みに入っちゃうよ。やらないけど。
お、良いものがあるぞ。AGIを上げるマジックアイテムだ。こっちはMPを増やすマジックアイテムか。さすがは公爵家の宝物庫にしまい込まれている品々だ。
「それは後からゆっくり読めばいい。次に移るぞ」
「これで最後じゃないのですか?」
悪魔討伐の勲章と褒美、それから宝珠を譲渡する対価の話だけじゃないの? 次なんて要らないでしょ。
「王家がフットシックル男爵に褒美を与えると言ってきた」
「はい?」
「王家がフットシックル男爵に褒美を与えると言ってきた」
いや、それは今聞いたよ。聞き返したんだけど、同じこと繰り返さなくていいですから。さっきからちょくちょくおちょくるよね。
「あの悪魔撃退の後に褒美を与えると言ってきたが、昨日は悪魔討伐に対して改めて褒美を与えると言ってきた」
「もしかして……」
「王都に赴く。拒否は認めん。私も向かうから、共に行くぞ」
えぇぇ……。そんなの聞いてないよー。
「悪魔討伐というのは、それほどのことだ。王家だけでなく、他の貴族たちもフットシックル男爵に興味を持ったはずだ」
うげー。そんな興味持たなくていいですから!
王家とか貴族とかだけでも面倒なのに、王都にはあいつらが居るんだよなぁ。
容姿が変わっているから俺のことは分からないと思うけど、あいつらの性格を考えると絡まれそうで面倒くさい。
噂ではかなり落ちぶれているようだが、それでも勇者という肩書はそれなりの影響力を持つらしいから関わり合いになりたくないんだよ。
ウザ絡みされる未来しか思い浮かばない。
憂鬱な心を晴らすために、マジックアイテムを選ぼう!
俺はINTが上がるマジックアイテムを選んだ。
ザイゲンと警護の騎士たちに守られて、そのネックレスがやってきたときはすごく嬉しかった。
「宝珠の価値からすると、そのネックレスは見劣りする。これはその差額だ」
ザイゲンが革袋を差し出してきた。このネックレスもかなり良いものだと思うけど、宝珠はそれ以上ということらしい。
こんなにもらっていいの? 凄い額だよ?
まあいいか。モンダルクに渡しておこう。
それにしてもこのネックレスはアンネリーセに合いそうだ。綺麗なアンネリーセをもっと美しくしてくれると思う。これを選んで良かった。
MP+150、INT+15、MIN+10、MATK+30、MDEF+20の効果を持つ魔女の首飾り。これはアンネリーセ用にと選んだものだ。
「4日後に王都へ発つ。忘れずにな」
あらザイゲンさん、まだ居たの。
「いやですねー。忘れるわけないじゃないですか」
当日腹痛になるかも。発熱するかも。病気になるかも。
「体調不良でも良い医者がいる。何も心配することはないから、連れてきてくれ」
ザイゲンめ、ガンダルバンに念押ししている。しかも俺の心を読んでいるよ。怖っ。
公爵もザイゲンも怖っ!
ご愛読ありがとうございます。
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