047_聖剣召喚
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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047_聖剣召喚
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「ぎゃぁぁぁっ」
今度は何!? え、また?
振り返ると、なんと下級悪魔パティスが立ち上がっていて、キング●ングよろしく兵士を掴んでいた。むさい髭面の兵士だ。
なぜ美女にしない!?
避難したから近くに美女なんていないけどね。
「なんで生き返っているんだ?」
「そうか!?」
ビックリしたー。どうしたんだよ、ガンダルバン。
「忘れておりましたが、たしか悪魔は聖職者か勇者でないと殺せないと聞いたことがあります」
「はあ? ……もっと早く思い出せよぉ」
「申しわけございません。随分昔に聞いた話だったので……」
ガンダルバンを責めてもしょうがない。詳細鑑定をしっかり読んでなかった俺が悪いんだ。
しかし悪魔って面倒だな。
【ジョブ】下級悪魔Lv30
【スキル】ヘルファイアブレス(低) 悪魔契約(低) 囁き(低) 復活・悪魔
たしかにスキルに復活・悪魔がある。
このスキルによって勇者や聖騎士、聖者のような聖属性を扱えるジョブ以外ではとどめをさせないとある。
下級悪魔パティスが背中の翼をバサッバサッと飛び上がる。逃げる気だな。
「コノクツジョク カナラズハラス クビヲアラッテ マッテイルガイイ」
そういうの要らないから。
「アンネリーセ。あいつを落としてくれ」
「はい! マナハンド!」
ヌーッとマナハンドが伸びていき、下級悪魔パティスの足を掴んで引きずり落とす。
「グッ コンナモノッ」
尚も逃げようとしている下級悪魔パティスは、必死に翼を羽ばたかせている。
「必死だな」
ズドンッ。
「ナッ!?」
隠密を発動して近くの建物の壁を何度か蹴って立体的に屋根に上り、そこから大ジャンプして下級悪魔パティスの翼を切った。
「ギャァァァッ」
片翼を失った下級悪魔パティスは地面に落下、その衝撃で掴んでいた兵士を手放した。
「アンガーロック!」
ガンダルバンがすかさずアンガーロックで、下級悪魔パティスの敵対心を引き付ける。これで下級悪魔パティスは逃げたくても逃げられなくなった。ざまぁ。
「今だ、殴れ!」
俺の指示でロザリナと兵士たちが再び下級悪魔パティスを囲んでボコボコにする。
俺たちが殴りかかると、ロークが捕まっていた兵士を回収した。
「ウットウシイ ヤツラダ」
鬱陶しいのはお前だよ。
「オマエタチデハ ワレヲ コロス コトナド デキヌ ト シレッ」
腕を振り回し暴れる。
「うるせぇんだよ、この雑魚がっ」
ズバンッとガーゴイルバスターを振り抜く。急所突きと隠密の効果でウルトラクリティカルが発動し、HPがグンッと下がる。
「ローク隊長。今のうちに全員を退避させてくれ」
「承知しました」
騎士団員も含めて、逃げ遅れていた全員を退避させる。これからやることに、ロークをはじめとした騎士団員は邪魔だ。
「うおおおっ、アンガーロックッ」
ガンダルバンはタンクとしてよくやってくれる。ガンダルバンが居なかったら、下級悪魔パティスを倒そうなんて思わなかっただろう。
「キサマラァァァッ」
口から黒い炎が放たれる。
ガンダルバンはその炎を盾で受け止め、ロザリナは後方へ大きく飛んで退避、兵士たちは下級悪魔パティスの後方に回り込んで炎を回避した。
戦い慣れているのは知っていたが、初見のヘルファイアブレス攻撃を避けるなんて皆なかなかやるね。
「HP回復」
ガンダルバンはスキル・HP回復(中)を使った。これでHPが100ポイント回復する。全快だ。
「アシッドストライクッ」
俺も負けてられない。アシッドストライク、急所突き、隠密のトリプルコンボを発動。
「よし、DEFが下がったぞっ」
スキル・アシッドストライクは50パーセントの確率でDEFを低下させる。今の一発で効果発動だ。
皆がそれぞれの必殺技を放つ。
「グギャァァァッ……」
ズドンッ。下級悪魔パティスが倒れた。
ここで先程は気を抜いて復活させてしまった。
今回はそんなヘマはしない。
「聖剣召喚!」
メインジョブを転生勇者に変更し、スキルを発動させた。
眩い光の粒子が俺の前に集まってきて1つになり、剣の形を模っていく。
現れたのは俺が扱い慣れている両手剣だけど、ゲームに出て来るような派手な剣だった。中二病を発症しているような、とても派手な剣である。
その柄を掴みジャンプし、下級悪魔パティスの胸に降り立つ。
「もう二度と悪さするなよ」
聖剣を逆手に持ち、胸に突き刺す。
下級悪魔パティスは一瞬ビクンッとしたが、胸の傷口から光の帯が四方八方に飛散。まるで砂上の楼閣のような脆さを見せ崩れていき、寒風に飛ばされていく。
「ご主人様!」
「ご主人様~」
先程と同じくアンネリーセとロザリナが抱きついてくる。うん、良い感触だ!
「ご当主様……その剣は……」
聖者や勇者じゃなくても下級悪魔パティスのHPをゼロにすることはできる。数秒かもしれないが復活までに時間があるのは分かっているから、動かない間ならレベル1の転生勇者でも安全に下級悪魔パティスを攻撃できると思ったんだが、本当に倒せた。
「あー、これのことは絶対に口外したらダメだからな」
聖剣召喚を解除すると、聖剣は光の粒子になって四散した。
「そんなものを召喚できるなんて、絶対に言えませんよ!」
日頃冷静なガンダルバンが叫んだ!
「ご主人様ですから、諦めてください」
アンネリーセさんや、それ、何気に酷くないか。
「ご主人様なのです!」
うん、ロザリナは黙っていて。
「まったく……いったいいくつの秘密をお持ちなのですか……」
「知りたい?」
「いえ、知りたくないです。言わないでください。今はあの剣だけでお腹一杯です!」
すっげー拒否られた。そんなに拒否らなくてもいいのに。
「ご当主様。こちらをご覧ください」
兵士の1人───リザードマン剣士のジョジョクが地面に落ちている何かを発見した。
「む、これは……」
直径10センチくらいの球の中で火が燃えているように見える。危ないものなんだろうか? 触ったら爆発しそうだ。
▼ 詳細鑑定結果 ▼
宝珠(下級) : 使用することでスキル・精霊召喚を取得し、下級精霊1体と契約できる。価値は計り知れない。
ある意味、危ないものだな、これは。
しかし悪魔を倒すとこんなものが手に入るのか!? これは俺に悪魔狩りをしろと言っているんだよな? むふふふ。面白くなってきたぞ!
それにしても悪魔からのドロップアイテムなのに、精霊と契約か。そういうのって、悪魔と契約できるとかじゃないのか? 悪魔となんて契約しないけど。
「ご主人様。ローク様です」
「ん、了解」
宝珠(下級)をアイテムボックスに収納。メインジョブも剣豪にチェーンジッ!
これで証拠はなくなった。
「悪魔は逃げた。これで通すぞ。いいな」
「「「「「承知しました」」」」」(ガンダルバン、兵士たち)
「はいなのです」(ロザリナ)
「それがよろしいでしょう」(アンネリーセ)
「トーイ殿!」
ロークが息を切らせて走り寄ってきた。
「あの悪魔は?」
「すみません。飛んでいってしまい、逃がしてしまいました」
翼があったのは、ロークも見ていたから納得してね。片翼を切ったのは忘れてくれ。追及されたら生えたことにしよう。うん、そうしよう。
「そうですか……。すぐに公爵閣下に報告をします。一緒に登城してください」
えぇぇぇ……嫌だよ。早く風呂に入りたいのに。などと言えず、俺は城へ向かった。はぁ……。
目の前には眉間にシワを寄せた公爵。眉間のシワキャラはザイゲンのキャラだよね。そのザイゲンはシワどころか溝になっていたよ。
ロークの部下たちが首切りネストことリネンサのことを聞きとり調査したんだが、リネンサは長年ヒモだった男に騙されて莫大な借金を背負わされたそうだ。しかもその男はリネンサのそばで別の女と暮らし始めた。
そりゃー恨むよな。俺ならその男を殺しているところだ。でもリネンサはその男ではなく、寝取った女を恨んだ。それはその女だけではなく、他の女もだ。世の中の女全てとまではいかないが、寝取った女と同じ商売女を恨んだ。
その結果、悪魔に憑かれてしまい、商売女たちを殺すようになった。悪魔は殺した女たちの魂を食い、とり憑いたリネンサの怨嗟の感情を食らった。
「悪魔は倒しても倒しても復活すると聞いたことがある。討伐できなかったのは痛いが、致し方ないか……」
しょうがないよね、だから早く俺を解放してちょーだい。
「悪魔の件は国に報告しなければいけません」
「うむ。次はどこに現れるか分からぬから、私はここを離れられぬ。誰を使者にするか」
公爵とザイゲンが国への報告の使者について話し合って、誰それに任せるとか言っている。俺、居なくてもいいよね。
「バルカンは領内各所に警戒をさせよ」
「承知いたしました」
警戒しなくていいとは、言えないんだよね……。
「さて、フットシックル名誉男爵」
「はい」
やっと帰れるんだね。
「今回の件、よくやった。褒美をとらす」
「えぇぇ……」
褒美は呼び出さないことでお願いします。
「なんでそんなに残念そうにしてるんだ?」
「あ、いえ、なんでもないです」
「まあいい。フットシックル名誉男爵のこの度の働きは、素晴らしいものだ。よって勲三等牡丹勲章と金100万グリルを与える」
OK、勲章とお金もらって終わりね。眠いし風呂も入りたい。早く頂戴。
「悪魔を撃退したが、倒したわけではないから牡丹が妥当であろう」
え、俺に聞いているの? 勲章の種類なんて知らないんですけど。
「勲三等牡丹勲章は中位の功績に対する勲章だ。今回は悪魔の撃退ということで、討伐ではないため牡丹が妥当だと仰っておいでだ」
ザイゲンが教えてくれた。
ちょっと待てよ。褒美にアンネリーセの奴隷解放を頼んだら、OKされるんじゃない?
「あの……」
「何か」
「勲章は要らないので、私の奴隷を解放していただけないでしょうか?」
「その奴隷のことはザイゲンから聞いている」
ザイゲンはちゃんと公爵にアンネリーセの話をしてくれていたようだ。
「アンネリーセが居なければ、悪魔の撃退はできなかったでしょう。ですから、どうか恩赦を与えていただければと」
公爵は腕を組み、数秒考えた。
「いいだろう。恩赦を与えよう。その上で、フットシックル名誉男爵に勲章を与える。いいな」
勲章はどうでもいい。アンネリーセの解放が赦されただけでも、悪魔を倒した甲斐があったというものだ。
「感謝いたします。公爵様」
「後日、そうだな5日後に勲章の授与式を行う。奴隷の解放もその時に行う」
「へ?」
何それ? 勲章の授与式? そんなのするの?
「勲章は授与式を行うものだぞ、フットシックル名誉男爵」
ザイゲンに呆れられたけど、俺はそんなこと知らないよ。
「でも名誉男爵になった時は何もしなかったですよね?」
「そなたの叙爵理由が他の者に洩れるのはよろしくなかった」
シャルディナ盗賊団を壊滅させた功績だっけ? 俺は認めてないよ。
「あの時は貴族の中にも関係者が居て、いくつかの家を潰した。そなたがその恨みを買うのを避けるためにも、そなたは献金によって名誉男爵になったことにしている」
「献金ですか?」
「献金の額が多い者を年に数人名誉男爵に叙爵している。それに紛れ込ませたのだ」
「なるほど」
公爵も考えているんだ。
「今回は悪魔の件だ。このケルニッフィの存亡の危機とでも言えるような事案だからな。盛大に勲章授与式を行うとしよう」
それは要りませんから。
そんなわけで勲章をもらうことになってしまった。残念に思っているとバルカンと目が合った。
「ふむ。良い気配だ」
「え?」
バルカンに微笑まれたんだけど……。まさか剣豪のレベルが上がったのを感じたのか?
三段活用?してみました。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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