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046_ 下級悪魔パティス

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 ■■■■■■■■■■

 046_ 下級悪魔パティス

 ■■■■■■■■■■



「トーイ殿!」

 ローク隊長が駆け寄ってくる。暗闇から顔面凶器が現れると、かなり怖いものがある。無意識に攻撃しなかった俺を自画自賛。


「あの女が首切りネストなのですか?」

「ナイフでアンネリーセの首を切ろうとしたのは確かですが、首切りネストかどうかは」

「レコードカードを確認させます」

「そうしてください」


 詳細鑑定をしておけば、もっとスマートに捕縛できたはずだ。アンネリーセに怖い思いをさせずに済んだ。ちょっと反省だな。


「間違いない。こいつが、この女が首切りネストだ」

 レコードカードを確認したロークが自慢げに叫んだ。


 しかし首切りネストの正体が娼婦だとは思わなかった。いや、まだ娼婦と決まったわけではないか。でも女だとはまったく思っていなかった。思い込みはダメだよね。

 多分だけど、騎士団や警備隊の誰もが男だと思っていたはず。俺だけが勘違いしていたわけじゃないのが救いだな。


「なんで騎士団が居るんだ。あんたたちの巡回は終わったはずじゃないのか」

 リネンサが叫ぶと鼻血が撒き散らされた。


「お前を捕縛するための嘘の情報だ。引っかかってくれて助かったぞ」

 ロークがとても誇らしげにリネンサを見下ろしている。それ俺の作戦だからね。


 首切りネストをおびき出すために、この辺りの娼館や酒場に騎士団の巡回が終わったと噂を流させた。リネンサはその噂に騙されて、出てきたようだ。

 まさか1日目で首切りネストを捕縛できるとは思っていなかったから、情報操作の有用性を知った感じだね。


「ローク隊長。あとは任せてもいいですか」

「はい。お任せください!」

 縄でぐるぐる巻きにされたリネンサを見て、俺は頬を引き攣らせる。なんで亀甲縛りっ! 以前、アンネリーセも亀甲縛りをしたけど、この世界では亀甲縛りが普及しているの?

 でも日本でも昔は犯罪者を縛るときに亀甲縛りが使われていたはずだから、いいのか?


 そんなわけで、俺は踵を返して帰ろうとした。

「ぎゃぁぁぁっ」

 なんだ?


 悲鳴が聞こえたほうを見ると、騎士団員が吹き飛ばされて壁に激突したところだった。

 何が起こった?


「ウガァァァァァァァァッ」

 リネンサの筋肉が盛り上がって、それが縄を引きちぎった。


「えぇ……なんの冗談だよ?」

「「ご主人様」」

 アンネリーセとロザリナが俺を庇うように前に出る。


「ご当主様。お下がりを」

 ガンダルバンがさらに前に出て、兵士たちが俺たちを守るように展開して警戒マックス状態。


 リネンサの筋肉はどんどん大きくなっていき、まるで巨大なゴリラのようになっていく。

「あれはなんだ? 何が起きているんだ?」


「まさかあれは!?」

「ガンダルバンはあれが何か知っているのか?」

「……おそらくですが、あれは悪魔憑きです」

「悪魔憑き……?」

「悪魔と契約した者のことです」

 なんとまぁ……。まるで映画のような話だった。


 詳細鑑定でリネンサを見た。マジか……。



 ▼ 詳細鑑定結果 ▼

【ジョブ】娼婦Lv15 (悪魔憑きLv30)

【スキル】房中術(中) 性病耐性(低) 絶倫(低)

【契 約】下級悪魔パティス



 本当に下級悪魔と契約していたよ!

 リネンサは本名みたいだけど、なんでネストなんだろうか? それなら首切りリネンサでいいじゃないか。

 あー、でも首切りリネンサじゃ、こいつが犯人ですってタレこまれそうだな。


 てかさぁ、ジョブが娼婦って良いのか。スキルに性病耐性があるからいいのか?

 おっと、こんなことを考えている場合じゃないや。


「こいつ、悪魔憑きだぞ! 盾持ちは前列に!」

「隊長、盾持ちなんていませんよ。俺たちは探索者や平民の恰好をしているんですから」

「うっ……こんな時に」


 なんかすみません。その作戦、俺が提案しました。

 しょうがない。ここは一肌脱ぐか。


「俺を囲んで、騎士たちから見えないようにするんだ」

「はい。お前たち、ご当主様を囲め」

 ガンダルバンたちは俺よりも大きな体をしているから、俺を隠すのは簡単だ。


 アイテムボックスからガンダルバンたちの盾と武器を取り出して渡す。俺もガーゴイルバスターを取り出した。


「ローク隊長。ここは俺たちが」

「す、すみません。おい、すぐに援軍を呼ぶんだ」

 俺たちが前に出ると、ロークは近くに展開している騎士団を呼びに行かせた。


 その間にもリネンサはまるで巨大なゴリラのように変形して、2階建ての建物くらいの大きさになった。まるでニューヨークのビルに登ったゴリラのように大きいが、その頭から羊のような巻き角がある。ついでに尻尾もある。


 特撮の怪人が変身するのを見ているようで、ちょっとだけウキウキしてしまったのは内緒だ。


「#%(&$%($#%&(%#&%&$#」

「何を言っているんだ?」

 まるでノイズのような不快な声を発するリネンサ。いや、すでに下級悪魔パティスに体を乗っ取られている。受肉というやつっぽい。


 下級悪魔パティスは、体が巨大ゴリラ、頭は雄羊、背中にコウモリのような被膜の翼の化け物になった。


「モウスコシ チカラヲ タクワエテカラ ジュニクスル ツモリダッタガ マアイイ オマエタチヲ イケニエニシテヤロウ」

 あ、喋った。さっきのノイズはなんだったんだよ。


「しかし片言なんだな。所詮は下級悪魔か」

「ワレヲ バカニスルトハ イイドキョウダ」

 睨まれてしまった。


 下級悪魔パティスが体をちょっと動かすと、石造りの建物が破壊された。

「うわー、迷惑な奴だな」

「ご当主様。悪魔の強さは尋常ではありません。後方に」

 ガンダルバンの表情に余裕がない。それほど強いということか。


「いや、俺も一緒に戦う。危なくなった時は、逃げるけどな」

「そうしてください」

「フフフ ワレカラ ニゲラレルト オモウナヨ ヒトヨ」

「ふふふ。逃げる気はないから安心しろ、下級悪魔よ」

 俺は下級悪魔パティスと睨み合いながら、不敵に笑う。


「行きます!」

 ガンダルバンがアンガーロックを発動。


「グオォォォッ」

 ガツンッと鈍い音。下級悪魔パティスの拳を、ガンダルバンが盾で受け止めた。

 ガンダルバンの足元の地面が窪む。それだけで、相当な威力があるのが分かる。


「こんなものっ」

 ガンダルバンが下級悪魔パティスの拳を押し返す。パワーで引けはとらない。


「ナンダト」

 下級悪魔パティスは驚いているようだけど、レベル差はほとんどない。

 下級悪魔パティスのレベルは30。対してガンダルバンのレベルは28。4人の兵士もアンネリーセもロザリナも皆レベル28だ。

 多少の不利はあっても、決定的な差ではないのだよ、下級悪魔くん。


 ロザリナと兵士たちが下級悪魔パティスを囲んで殴る。アンガーロックが効いている間は、ロザリナたちに攻撃が向くことはない。


 下級悪魔パティスが暴れると、周囲の建物が破壊されていく。民間人が蜘蛛の子を散らすように逃げまどう。

 ロークたちが民間人の避難誘導をしている。父親は脳筋だけど、ロークはまともだ。顔は同じDNAだけど。


 俺はメインジョブを両手剣の英雄にし、サブジョブを暗殺者に変更した。

 隠密を発動させ、下級悪魔パティスの後方に移動。

 ジャンプしてガーゴイルバスターを振り降ろす。


 ズバンッ。


「グギャァァァッ」

 下級悪魔パティスが振り向くが、俺はすぐに隠密を発動しているから姿は見えないはずだ。


「ドコダッ」

 怒りの声だと分かる。

 虫けらくらいにしか考えてない人間に、大きなダメージを受けて怒っているんだな。


 下級悪魔パティスはガンダルバンに攻撃するが、それが周囲の建物へも被害をもたらす。

 石の破片が雨のように降り注ぎ、それが避難する民間人に当たって被害を出していた。


「ブチコロス デテコイ」

 そう言いながらガンダルバンを殴る。怒りは俺へ向いているようだが、体がガンダルバンを攻撃するようだ。見ていてちぐはぐな言動になっている。


 だいたいさ、怒りたいのは俺のほうだぞ。こいつがリネンサにとり憑いたおかげで、3時間以上も寒風に曝されているんだからな。風邪ひいたらどうしてくれるんだよ。

 アンネリーセだって囮とは言えあと少しで危なかった。この怒りはまとめて全部こいつに叩き込んでやる。


「ドコニ イルゥゥゥッ」

 ここに居るさ。ズバンッ。


「グアァァァッ」

「アンガーロックッ」

「ファイア」

 ガンダルバンがアンガーロックをかけ直すと、アンネリーセのファイアが命中。

 火に焼かれて悲鳴を上げる下級悪魔パティス。いい気味だ。


 ―――アシッドストライク。


「ギャァァァッ ヒキョウモノッ スガタヲ アラワセ」

 リネンサにとり憑いて、悪さをしていた奴にだけは言われたくない。


 今のアシッドストライクで、下級悪魔パティスのDEF値が30パーセント低下した。


「今だ、ぶちかませっ」

「「「「「応!」」」」」

「はいなのです」


 ガンダルバンのスキル・パワーアタック(中)。ATK値が3倍になる攻撃だ。

 2人の剣士のスキル・スラッシュ(中)。こちらもATK値が3倍になる攻撃だ。

 2人の槍士のスキル・三連突き(中)。これはATK値が3.5倍になる攻撃だ。

 ロザリナのスキル・ラッシュ(低)。これは1分間攻撃回数が3倍に増える。ATK値+30ポイントになるスキルだ。

 そしてアンネリーセの無属性魔法・マナストライク(中)。マナの槍を放つ攻撃が、下級悪魔パティスを貫いた。


「グアッ……」

 ズドンッ。


 下級悪魔パティスが倒れた。HPもゼロになった。終わりだ。


「ご主人様」

「ご主人様~」

 アンネリーセとロザリナが抱きついてくる。うん、いい感触だ。何とは言わないが、とても柔らかい。


「ご当主様。お怪我はございませんか?」

「怪我はない。皆もご苦労様」

「思ったよりも楽に倒せました。レベルが上がったおかげです」

 ガンダルバンたちは、俺のところに来る前のレベルで出会ったらヤバかったな。


「トーイ殿!」

「ローク隊長。後始末をお願いしていいですか?」

 寒くて死にそうだ。早く風呂に入りたい。

「もちろんです!」


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 取り敢えず何でもかんでも鑑定する癖つけたら?
[良い点] 色事系ジョブ欲しい! トーイくんもいつ理性が白旗上げるかわからないしね 今回の件でリーセたんに娼婦ジョブ追加されてたりして
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