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042_俺のジョブは剣豪だぞ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 2023/3/2 加筆をしました。

 ■■■■■■■■■■

 042_俺のジョブは剣豪だぞ

 ■■■■■■■■■■



「ぐわっ……」

 バルカンの剣圧に吹き飛ばされて、地面を何度も転がる。手加減というものを知らんのか、こいつは。


 まだ転生19日目の午後だ。午前はガンダルバンたちの面接と、テーラーに採寸をしてもらった。その後、バルカンの野郎が屋敷まで呼びに来て、俺はドナドナされたわけだ。


 筋肉痛にやっと慣れてきたところだったのに、また筋肉痛になるじゃないか。しかも今日は青痣つきだ。


「早く立て」

「少しは手加減をお願いします」

「手加減している」

 それで俺は10メートルも吹き飛ばされたのかよ。こいつの手加減は手加減の内に入らないと思うのは俺だけか?


 他の兵士たちに視線を向けると、目を逸らされた。こいつら、バルカンを俺に押しつけやがったな!


 立ち上がるとすぐにバルカンが打ち込んでくる。それを受けたらまた吹き飛ばされるから、受け流すように動くが……。

「うわっ」

 受け流しが甘いから吹き飛ばされてしまった。


 この日も夕方まで休憩なしにしごかれた。バルカンの野郎は本当に脳筋で、俺は何度も死ぬかと思ったくらいだ。


 そんな日々が続き、俺はダンジョンに入れないまま1カ月が過ぎ、転生49日目にして12の月に入った。





 毎日のようにバルカンにしごかれていると、その訓練にガンダルバンと部下たちも参加した。しかもロザリナまで一緒に参加している。


「やぁっ」

「なんのっ」

「とうっ」

「まだまだっ」

 ロザリナとバルカンの訓練は、さすがと言うほかない。

 ロザリナが参加してくれたおかげで、俺のしごきは少なくなった。まったくなくなったわけでないのが残念だ。


 毎日バルカンにしごかれた俺は、剣士のジョブに転職できるようになった。

 そこで俺は剣士を飛ばして剣豪に転職した。旅人から剣豪に転職したんだが、これは神殿でちゃんと転職の実績を作った。

 転職時に神官が騒ぎ公爵に呼ばれる羽目になったが、ここは剣豪で通すことにした。

 ジョブ・剣豪の取得条件は分かっていないらしいから、構わないだろう。


 おかげでこれからは大っぴらに剣豪として活動できる。バルカンのシゴキもたまには役に立つ(笑)


 神殿は大きな町ならどこにでもあり、転職するのに1万グリル白金貨を2枚(20万円)も取られた。ぼったくりだろと思いつつ、剣豪に転職した記憶がある。


 ちなみに神官は転職可能なジョブを見ることができるらしいが、ステータス画面で非表示に変えることができたから俺の転職可能ジョブは消しておいた。便利なものだ。


 今は剣豪Lv5になっている俺だが、ロザリナとバルカンの動きはほとんど見えない。

 剣豪もそうだが、剣士、槍士、騎士などのジョブは訓練するだけでレベルが上がる。

 ただしレベルが上がると、訓練だけではレベルが上がりにくくなる。おかげでレベル5から全然上がらなくなった。それは戦闘ジョブだとしょうがないことだ。


 そんな訓練場に兵士が駆け込んできて、バルカンは訓練を中断して報告を受けた。


「何かあったようですね」

 俺と訓練をしていたガンダルバンが鍔迫り合いをしながら語りかけてくる。ここで気を緩めてしまうと一気に押し込まれてしまうから、気は緩めない。


 ガンダルバンの剣を流し距離を取る。

「俺たちに関係あることなら、呼ばれるだろう」

「左様ですな」

 ガツンッ。動きを止めず打ち合う。俺は両手剣、ガンダルバンは片手剣と盾だから剣同士の打ち合いは俺のほうが有利なんだけど、ガンダルバンは片手剣で俺の攻撃を受け止める。剣豪のレベルが低いこともあるが、訓練を積んだガンダルバンの剣捌きに翻弄される。悔しい。


「集合っ」

 バルカンの怒号のような声が訓練場に響き渡る。


 兵士がキビキビと動き、バルカンの前に集まる。俺たちもそれに混じった。

「これより騎士団は厳重警戒巡回を行う。昼夜問わずだっ」


 公爵家には騎士団の他に、町中の治安を守る警備隊がある。

 通常は警備隊が町中を巡回しているが、騎士団も巡回するとなると何かが起きたのは間違いないだろう。


「団長。質問をよろしいでしょうか」

「構わん」

「我ら騎士団が巡回を行うということは、警備隊からの応援要請があったと愚考いたします。それはあの件によるものでしょうか」

 バルカンに質問したのは、中堅どころの騎士だ。この1カ月で騎士や兵士の顔と名前、それに役職はある程度把握している。


「昨夜、また首切りネストが現れた。これで犠牲者は10人になる。警備隊も昼夜問わず巡回を行っているが、首切りネストは未だ捕縛できていない」

 11の月に入った頃から首切りネストという殺人鬼が現れるようになった。殺人鬼のペースなんて知らないけど、1カ月程で被害者が10人になったことを考えるとかなりハイペースの犯行じゃないかな。


「狙われているのは、主に娼婦だ。夜間は路上に出るなと警告しているが、娼婦が夜に路上に出ないのは商売にならぬ。残念なことだが、娼婦たちを止めることはできない」

 彼女たちは自分の体を売って、日々の糧を得ている。娼婦だって食わなければ生きていけないから、商売するなとは言えないようだ。

 命令してもいいと思うが、食えないといずれ餓死する。餓死する前に首切りネストが捕まればいいけど、困ったことにそんな保証は誰もできない。


 バルカンの指示で騎士団員たちが訓練場から走って出ていく。

「フットシックル殿。訓練は今日までだ。首切りネストの件が片づいたらまた相手をしてやろう」

 何その上から目線!? 俺がいつ稽古をつけてくれと言ったよ!? と怒鳴りたいが、できないのが辛いところだ。


 ちなみにフットシックルというのは、この世界での俺の家名になる。俺の先祖を辿っていくと歴史上のある有名人になるんだ。その有名人の名前からそうつけた。

 まあ、深く言う必要もないから家名の話はこれで終わるとして、暇になったから久しぶりにダンジョンでも行こうかな。


 俺は犯罪者を取り締まる必要はない。騎士団も動いているんだから、俺のような捜査のその字も知らない奴が出しゃばっても邪魔になるだけだろう。それに騎士団も動員されたのだから、そのうちなんとかなると思う。……思いたい。


「屋敷で昼を食べたら俺たちはダンジョンに向かうが、ガンダルバンたちはどうする?」

「主人を守るのが我らの役目です。お供いたします」

「それじゃあ、先に飯だ。行くぞ」


 屋敷に帰る間に何度も騎士団員を見かけた。全員の顔を知っているわけではないが、顔見知りも混じっていたから挨拶をする。





 屋敷で早めの昼食を食べ、ダンジョンへ向かったのは転生50日目のことだ。


「ダンジョンに入るのも久しぶりだな」

「ご主人様がバルカン様に気に入られて、訓練漬けでしたから」

「あれを気に入られてと言うなら、世の中間違っていると思うぞ。アンネリーセ」

「うふふふ。そうでしょうか」

 バルカンの野郎に気に入られたら、もれなく命の危機を感じるとかおかしいだろ。


 さて、今回俺はダンジョンにアンネリーセ、ロザリナ、ガンダルバン、他兵士4人を連れてきた。

 兵士は5人必要なんだが、あと1人は募集中だ。それはさておき、今回はガンダルバンたちが一緒だ。

 5人は俺が自分でジョブを変えられるとは知らない。でも守秘義務を魔法契約書で交わしているから問題ない。


「俺のジョブやスキルのことは、口外することを禁止する。いいな」

 一応、こう言っておかないと守秘義務が適用されないらしい。


「剣豪のことはすでに多くの者が知っていると思いますが?」

 ガンダルバンは不思議そうに首を傾げた。その仕草はアンネリーセやロザリナのような可愛い女の子がやるからいいんだぞ。クマのオッサンでは可愛くない。


「そうだ、俺のジョブは剣豪だ。いいな、誰かに聞かれてもそう答えておくんだぞ」

「承知しました……?」

 5人は何故という顔をしている。


「それじゃあ、行くぞ」

 ───ダンジョンムーヴ。


「「「「「えっ!?」」」」」

 壁にドアが現れたのを見て、5人が驚いた。


「ほれ、さっさと進め」

 ドアを開けて5人を押し込む。俺たちも入って、皆が移動したのを確認して解除。ドアが消えたことにも5人は驚いた。


「こういうことを言うな。そういうことだ」

「な、なるほど……承知しました。お前たちも決して他言するなよ」

「「「「はいっ」」」」

 魔法契約しているから安全だけど、ガンダルバンは兵士たちに念を押している。


「今のはもしかしてダンジョンムーヴですか?」

「その通りだ。ガンダルバンはダンジョンムーヴのことを知っているのか」

「以前、一度だけジョブが探索者の者と一緒にダンジョンに入ったことがありますので」

 その時にダンジョンムーヴを使って移動したんだな。


「便利だろ?」

「ええ、とても便利です。ところで、ここはどこでしょうか?」

「ここは6層のボス部屋の近くだ」

「たしかダンジョンムーヴは行ったことがある場所にしか移動できないはずですが……当主様はここまで来たことがあるということですね」

 よく知っているな。俺はそれを肯定した。


「某はともかく、この4人はレベル10少々です。さすがに6層のボスは危険です」

 ソードガーゴイルのレベルは24。倍以上のレベルのボスと戦うのが無謀なのは、俺でも分かっている。


「そのための作戦を今から説明する。今日はボスを何度も狩るから、しっかりと作戦を理解してくれ」

 ドン引きするガンダルバンたちを尻目に、俺は作戦を説明した。と言っても大した作戦ではない。簡単だからすぐに覚えられるはずだ。


「作戦は理解しましたが、まさかボスがソードガーゴイルだったとは……」

 ガーゴイルは物理が効きにくいから、厄介だと思っているようだ。


 だけど、戦力は揃っている。

 剛腕騎士Lv22のガンダルバン。魔法使いLv21のアンネリーセ。バトルマスターLv20のロザリナ。そしてエンチャンターLv18の俺。

 4人の兵士は横からチクチク殴ってくれればいい。レベルの低い4人に、ダメージは期待していないから大丈夫だ。


 

ご愛読ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
作者の知識不足、“藤〇”という苗字は藤原氏系では無く植物の藤からとった名字、藤原氏系の苗字は“〇藤”というのがが現代の定説。
[一言] 足利だと思ったが藤原もあるのか。 独自性が出て来て某ハーレムが薄れて来た。 面白くなりそう。
[一言] 「さて、今回俺はダンジョンにアンネリーセ、ロザリナ、ガンダルバン、他兵士4人を連れてきた。」 屋敷の守備のために人員を全く配置しないんだ。
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