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036_6階層を進んで

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 036_6階層を進んで

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 転生17日目。今日は朝から魔法使い装備を購入しに、怪しい露店を回った。

 露店ではINTかMINなどを上げるアクセサリーがあったら買おうと思ったが、他の効果も含めて今日はいいものがなかった。残念。



 ・魔法使いの杖 : MATK+6 INT+2 耐久値12/12

 ・魔法使いのローブ : MDEF+2 MIN+2 耐久値10/10

 ・魔法使いの帽子 : MDEF+3 INT+1 MIN+1 耐久値10/10

 ・迷宮牛革のグローブ : DEF+4 VIT+1 DEX+1 耐久値14/14

 ・迷宮牛革のブーツ : DEF+4 VIT+2 耐久値15/15

 ・幸運のネックレス : 即死を3回だけ回避する(3/3)

 ・幸運の尻尾 : レアドロップ率が5パーセント上昇。重複効果はない



 アクセサリー以外はアンネリーセが持つ装備と同じものだが、効果が多少違う。

 着替えはダンジョンの中でするとして、少し早いが昼にすることにした。


 外を出歩く時は、ジョブは旅人にしている。アンネリーセとロザリナのジョブに比べると、レベル1の旅人は見劣りする。それでも俺のジョブで誰かに知られているのは旅人だから、これにしている。

 何かあった時は2人が守ってくれると思うし、大丈夫だろう。


 ちょっとオシャレな店に入ったんだけど、定食屋だった。

 昼は5つのセットしかやってないと言うので、アンネリーセは肉のセット、ロザリナは魚のセット、俺は肉と魚のハーフセットを頼んだ。


 そろそろ米が恋しくなってきた。味噌汁も久しぶりに口にしたいな。

 醤油に近いバーガンがあるから、味噌があってもいいと思うんだけどなぁ。味噌は自分で造ったことあるけど、麹がないと造れない。さすがに麹なんて自力でなんとかできないし。

 今度ゴルテオさんの店で味噌がないか、聞いてみよう。




 ダンジョンに入ったらすぐにダンジョンムーヴで6階層に移動。昨日の続きから探索開始。何度も言うけど、ダンジョンムーヴ、マジで便利。


 少し歩いたらすぐにガーゴイルが出てきた。6階層ではガーゴイルしか出てこないのかな。


「エンチャント・ファイア」

 小さな火がロザリナに飛んでいき、拳に炎を纏う。

 あれ、足にもつかないかな? 次、やってみよう。


 そんなことを考えている間に、ガーゴイルは瞬殺されていた。


「お疲れ~」

「全然疲れていないなのです」

「ご主人様のエンチャント・ファイアが強すぎて、ロザリナの攻撃が3発で終わります」

 不完全燃焼のロザリナと、エンチャント・ファイアが強いとアンネリーセが言う。


「ガーゴイルはVITが高い代わりに、MINがかなり低いからだな」

 レベル18のガーゴイルはATK=108、DEF=180、MATK=48、MDEF=42。見ての通り、物理防御のDEFが異常に高いが、魔法防御のMDEFは低い。


 エンチャント・ファイアの攻撃力は、エンチャンターの俺のMATKによる。レベル8でしかない俺だが、MATKは装備込みで111もある。

 これでMDEFの低いガーゴイルに大ダメージが出なければ、ステータスなんて無意味だよな。


「ちょっと試したいことがあるから、つき合ってくれるかな」

「何を試されるのですか?」

 ロザリナは難しいことが分からないから、こういうことは聞かない。対してアンネリーセは興味津々で聞いてくる。2人のこういう差を見るのも楽しい。


「エンチャンターの魔法に、エンチャント・ハードとエンチャント・アクセルというものがある。この2つを試しておきたいんだ」

 実戦で使うのはリスクがあるからね。それにモンスターを倒した直後の今なら、他のモンスターに襲われることもないはずだ。


「ロザリナにエンチャント・ハードをかけるけど、いいかな」

「はいなのです」

「それじゃあ、エンチャント・ハード!」

 エンチャント・ハードを発動させるが、ロザリナに変わったところはない。


「おかしいな? 発動したと思ったんだけど? ロザリナ。何か変わったところはないか?」

「………」

 ロザリナの返事がない。無視されたわけじゃないよな?


「ご主人様。ロザリナの体を触ってみてください」

 アンネリーセがロザリナの腕に手を置いている。俺もロザリナの腕に手を置くと、凄く硬かった。


「まさか……」

「そのまさかかと」

 そこでロザリナが動き出した。


「びっくりしたのです! 体が全然動かなかったなのです!」

「「やっぱり」」

 ロザリナに聞くと、呼吸はでき瞳も動かすことができる。だけど口も体もまったく動かないらしい。


 エンチャント・ハードは全てのダメージを無効化するけど、これじゃあ逃げる時に使えないじゃないか。使いどころに困る魔法だな。


「それじゃあ次はエンチャント・アクセルだ。ロザリナ。構わないか?」

「大丈夫なのです!」

「エンチャント・アクセル!」

 エンチャント・アクセルを発動させる。


「走ってみてくれ」

「はいなのです」

 ビューンッ。


「おおおっ」

「速すぎて見えませんでした」

「俺もだよ」

 ロザリナの姿が消えたように見えた。

 多分暗殺者なら見えたと思うけど、今の俺はエンチャンターLv8だから、いやレベルが上がって9になったけど、どちらにしても魔法使い系ジョブの目では追えないくらいのものになったようだ。


「凄く体が軽いなのです!」

 帰ってきたロザリナが嬉しそうだ。

 当面はエンチャント・アクセルとエンチャント・ファイアでゴリ押しかな。


 そのゴリ押しでガーゴイルは瞬殺、探索者のマッピングで迷うこともなく、アンネリーセの魔力感知で罠にも引っかからない。俺たちいいパーティーじゃないかな。




 6階層のボス部屋の前に到着。誰も順番待ちしていない。

 5階層までは他の探索者の気配を感じて迂回していたが、この6階層は探索者の気配があまりしない。

 魔法がないとこの6階層は厳しいから、5階層でウロウロして剣士や槍士のレベルを上げているんだろうな。上手くいけば、上位ジョブに転職できるかもしれないし、魔導書がドロップするかもしれない。


「今までの傾向だと、ボスは上位種が出てくるはずだ。俺はこのままエンチャンターでいこうと思うが、アンネリーセとロザリナはどう思う?」


「ガーゴイルの上位種なら、物理攻撃に強いはずです。私はエンチャンターで良いと思います」

 アンネリーセは良いと言う。


「よく分からないなのです」

 ロザリナはそう言うと思っていた。


「それじゃあ、このままエンチャンターで」

 唐草模様のドアを開ける。

 さあ、鬼が出るか蛇が出るか。そう言えば、ゴブリンは小鬼族だったな。その進化種のゴブリンファイターのロザリナは鬼ということになる。もう居たよ、鬼さん。


 ボス部屋のドアが閉まると、ほどなくして床が光った。

「来るぞ」

「はい」

「はいなのです」


 光から現れたのは、ソードガーゴイル。これまでのガーゴイルは悪魔の姿をしただけで武器は持っていなかったが、こいつは剣を持っている。

 剣を持とうが、槍を持とうが能力はガーゴイルの上位互換でしかない。他の能力に較べ、MDEF値がかなり低いのは変わらない。


「エンチャント・アイス。行け、ロザリナ」

 雪の結晶のような氷がロザリナの拳に纏わりつく。

 エンチャント・アイスはエンチャンターがレベル10になった時に覚えた付与魔法だ。これまでの傾向では、ガーゴイルに対してエンチャント・ファイアよりもダメージが大きくなる。


「はいなのです」

 バネのように飛び出したロザリナは、一気にソードガーゴイルに迫り拳を入れた。多分数発入れているけど、よく見えない。


「ん、これは……」

 詳細鑑定の結果を読んでいたら、ソードガーゴイルの特徴が分かった。


「そいつのHPが3割を切ったら、HPを全回復するぞ」

「それは面倒ですね。私も攻撃しましょうか」

「いや、この6階層までは俺とロザリナで対処したい。アンネリーセは今までと同じように、危なくなったら介入してくれ」

「承知しました」

 やれることは2人でやる。アンネリーセに活躍してもらうのは、7階層からと決めている。

 この6階層は攻撃の全てをロザリナに任せる。そう決めて挑んでいる。だったら、ロザリナに全て任せる。それだけだ。


「エンチャント・ファイア」

 ロザリナの足に炎が纏わりつく。


 ロザリナの拳と蹴りがガリガリとソードガーゴイルのHPを削っていく。さすがはボスだけあって、HPが高いから攻撃回数が増える。


「てやっ」

「はっ」

「ふんっ」

 ロザリナがソードガーゴイルの剣を躱しつつ殴る。精神力と集中力の要る攻防だ。


 攻撃は全てロザリナに任せっきりになる。ここに至るまでにエンチャント・ファイアをかけた後に両手剣の英雄に転職して参戦しようとしたら、エンチャントが切れてしまった。

 魔法付与中にジョブを変えると、魔法がリセットされるのがそれで分かった。





「来た。HP3割で全回復だ」

 ソードガーゴイルの体が一瞬光って、HPが全回復した。ただでさえ硬いのにこれは卑怯だ。だがこれを越えなければ、俺たちは先に進めない。


「ロザリナ。集中を切らすなっ」

 俺は叫ぶ。


「はいなのですっ」

 ロザリナも叫んで応える。


 HPを7割削るのに2分30秒かかった。

 エンチャント・アイスとエンチャント・ファイアの効果は共に5分。

 残り2分30秒でロザリナが削れるソードガーゴイルのHPは7割。3割足りない。

 だが、手はある。俺はそのタイミングを間違えずに、ロザリナに指示する。それができなければ、俺とロザリナでは勝てないということだ。


「ロザリナ。鉄拳と蹴撃を発動させるんだ!」

「はいなのです!」

 鉄拳は拳の攻撃時にATK値+30ポイント、蹴撃は足で攻撃した時にATK値+40ポイントのスキルだ。

 物理攻撃だから大きなプラスにはならないが、ないよりはマシだ。


 残り2分。残りHPは8割ちょっと。

 残り1分30秒。残りHPは7割を切っている。鉄拳と蹴撃の効果で、HPの減りが早くなっている。

 残り1分。HPは5割ほどになっている。

 残り30秒。残りHPは3割ちょっと。ここだ!


「ロザリナ。闘気だ! ATK値を4倍にするんだ!」

「はいなのです!」

 ボフンッとロザリナの存在力が膨れ上がる。

 たった30秒しか持続しないが、ロザリナのATK値を4倍にしてくれるユニークスキルだ。


 だが、これで終わらない!

「エンチャント・アクセル!」

 ロザリナのAGI値を3倍にする。単純に速度が3倍になるわけではないが、概ね3倍だ。これなら手数も足数も3倍にでき、ソードガーゴイルのHPを削り切れるはず。


 俺にはロザリナの残像しか見えない。

 それでも火花や氷花が飛び散るのが分かる。


「ロザリナ、いぃぃぃっけぇぇぇっ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 パリンッ。


 ソードガーゴイルが消滅した。

 ロザリナが削り切ったのだ。


 直後、エンチャント・アイス、エンチャント・ファイア、エンチャント・アクセル、そして闘気が切れた。

 ギリギリの戦いだったが、ロザリナは一度も被弾することなくソードガーゴイルを倒した。


「おめでとうございます。ご主人様、ロザリナさん」

「ありがとう」

「ちょっと疲れたのですが、面白かったなのです」

 アンネリーセからドロップアイテムのガーゴイルソードを受け取る。石製の片手剣だけど、鋼鉄の片手剣よりも優秀だ。


 俺のステータスを確認するとレベルが18に上がり、ロザリナもレベル20に上がっていた。

「もうすぐアンネリーセに追いつくぞ」

 俺は笑顔になる。


「お待ちしています」

 アンネリーセが微笑み返してくれた。

 この微笑みを見ると、疲れが吹き飛んで元気になる。


「ロザリナもよくやったな」

 汗で濡れた髪をワシャワシャと乱暴に撫でてやる。

「あわわわ~」

 反応が可愛くて、ついやってしまう。



<トーイ>

【ジョブ】エンチャンターLv18

【魔 法】魔力強化(中) エンチャント・ハード(中) エンチャント・アクセル(中) エンチャント・ファイア(中) エンチャント・アイス(低)

【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)



<ロザリナ>

【ジョブ】バトルマスターLv20

【スキル】剛撃(中) 鉄拳(中) 蹴撃(中) 防御破壊(中) HP回復(低) 気法(微)

【ユニークスキル】 闘気(低)


 ・気法(微) : 5分間拳に気を纏い、無属性のダメージを与える。MATK値+30ポイント。消費MP7。(アクティブスキル)



 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』をよろしくです。


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マイホーム・マイライフ【普通の加護でも積もれば山(チート)となる】
― 新着の感想 ―
[一言] 今まで読んだ感想は「出来がいいがキャラクターの個性が薄い異世界迷宮でハーレムを」と言ったところでしょうか。新鮮味が足りないというか。
[気になる点] 前話でエンチャント・アクセル(低)となってたけど、エンチャント・アクセル使ったのこの話が初めてッポイ描写している。 スキル使わなくてもランクあがるの? こんな初見殺しボス詳細鑑定なし…
[一言] 殴る瞬間にエンチャント・ハードかけて、殴った直後に解除すればもっと威力出るんじゃないか?(机上の空論)
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