027_盗賊に囲まれた
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この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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027_盗賊に囲まれた
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俺の探索者がまだレベル9だったから、4階層のボスと再戦。
今度は俺がミスリルの両手剣を使えるし、ロザリナはバトルマスターLv1でも村人Lv10よりも強い。安定して4階層のボスを倒し、俺の探索者は無事にレベル10に上がった。
「ん、スキルが増えている?」
【ジョブ】探索者Lv10
【スキル】ダンジョンムーヴ(低) 宝探し(低) マッピング(微)
【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)
・マッピング(微) : 通過した場所を脳内マップに表示できる。正確に紙におこすこともできる。(パッシブスキル)
マップ表示があるのはありがたい。
ギルドで売っている冊子には5階層までのマップも描いてあるが、6階層からの冊子は売ってなかった。自分で情報を集めろということらしい。
「ついでだから、暗殺者もレベル上げしていいか?」
「え? ご主人様は探索者という珍しいジョブではないのですか?」
「そうか、ロザリナは知らなかったな。俺、自分で転職ができるんだ」
「え……えぇぇぇっ」
ロザリナが大声を出して驚いた。ボス部屋だと、外に声は洩れないからいいけど。
「ロザリナさん。ご主人様のことは誰にも言ってはいけませんよ」
「も、もちろんです!」
ロザリナの俺を見る目がキラキラなんだけど? 転職できるだけだよ?
暗殺者のレベル上げも順調に消化して、レベル10になった。
暗殺者だと一瞬でブラックアントを倒せる。ただし1体を攻撃すると、隠密が切れて他の2体に認識されてしまう。
そこでロザリナが1体、俺が1体を受け持って倒す。それを何度も繰り返してレベル10まで上げた。
さらに暗殺者もレベル10で新しいスキルを覚えることができた。
【ジョブ】暗殺者Lv10
【スキル】急所突き(低) 隠密(低) 痕跡抹消(低) 神速(低) 感知(低) 壁抜け(微)
【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)
・壁抜け(微) : 壁の向こうが空洞であれば、壁を抜けて移動することができる。消費MP8。(アクティブスキル)
これは役に立ちそうだ。あの婆さん盗賊の屋敷に入るのも、ドアが開かないと動けなかったからな。
その後、俺たちはダンジョンを別々に出た。堂々と顔を晒してダンジョンから出たら、盗賊が5人ほど俺の後をつけてきた。
池イカの姿焼きとゲソ焼きを10本ずつ購入して袋に入れ、さらに迷宮牛の串焼きも10本買った。迷宮牛は5階層で出て来るモンスターだ。池イカよりも高かったけど、美味しそうな匂いがしたので買ってみた。
あと丸いパンを薄く切ったものに、野菜と干し肉を挟んでサワードレッシングのようなものがかかっている。まあサンドイッチだな。これも人数分買った。
アイテムボックスのおかげで買ったままの状態で保存できる。
さて行こうか。5人を引き連れて林の中の細い道を進むと、盗賊たちが動いた。5人が俺を囲むよ。
「お前がトーイだな」
強面の盗賊Lv8だ。
「おい、なんとか言えよ」
ぬべーっとした顔の盗賊Lv9。
この2人は雑魚だ。5人の中で一番レベルが高いのは、俺の後方に居る奴だ。先程ちらりと見たが、こいつ盗賊じゃない。いや、元盗賊というべきだな。
「人に名を尋ねる時は、自分から名乗れ。その程度のことも知らないのか、最近の盗賊は? いや、盗賊なんかになる程のバカだから、知らないというわけだな。うん。盗賊はクズでバカでどうしようもない。害虫以下の存在だな」
盗賊たちは激高した。いやー清々しいほど挑発に乗ってくれる。
「このガキがっ」
1人が懐から短剣を出して、俺に突きつけてくる。喉元に当てられる短剣は、あまり質の良いものではなさそうだ。
この世界はステータス制だ。
こいつが仮に俺の喉をかき切ってそれがクリティカルになっても、俺のHPはせいぜい1ポイントか2ポイントしか減らない。
両手剣の英雄のDEF値は防具込みで114ポイントあるが、その質の悪い短剣込みのこいつのATK値は40ポイントもない。
盗賊は村人のように成長が悪いジョブだから、レベルが10でも20でもそれこそ50でもレベル6の両手剣の英雄には勝てないのだ。
俺がモンスターのステータスを観察し、被ダメージや与ダメージからATKとDEFの関係を計算した結果、この結論に至った。
これでも結構考えて戦っているのだ。せっかく詳細鑑定がステータスを見せてくれるんだから、使わなければ宝の持ち腐れになる。それでは詳細鑑定に悪いじゃないか。
「短絡的、短慮、浅慮、軽率、単細胞、そして稚拙。ちょっと考えただけであんたを形容する言葉がこれだけ出てくる。学がないのはしょうがないが、それを振りまいて生きていて恥ずかしくないか?」
「て、てめぇっ」
短剣を引こうとしたから、その腕を掴む。HPが減らないからといって、痛いのは痛い。わざわざそれを受け入れるつもりはない。
「こ、この野郎っ」
俺が村人なら、喉を切られるとそれだけで致命傷だぞ。
「なあ、これで切られたら痛いだろ。それくらい分からないのか。やっぱバカだな」
「離せ、この野郎っ。うわっ!?」
離せと言うから離したら尻餅をついた。
「何しやがる、こいつ」
「あんたが離せと言ったんだろ」
「離せと言って離す奴が居るかよ」
「ここに居るが?」
面倒くせー奴だな。吉●興業かよ。
「おい、遊んでないで、さっさと殺れ」
「えー、俺、殺られちゃうの? 嫌だなー」
「「「「ふざけるなっ」」」」
ふざけているのは、あんたたちだよ。
4人が飛びかかってきた。
アイテムボックスのクイック装備からミスリルの両手剣を出す。
───ズバンッ!
3人の胴体を切り裂く。2人は今ので即死だが、1人はちょっと浅く生きていた。
生き残った盗賊は腹から血を流しているが、HPの残りは3割になっている。かなり厳しい表情でのたうち回っている。
「ば、バカな……ただの旅人が……なんで……?」
「へー、俺が旅人だったの、知っているんだ」
その話、興味ある。詳しく話してほしいかな。
「俺さ。あんたたちに何かしたかな?」
リーダー格の元盗賊を睨みつつ尋ねてみる。
視線を彷徨わせている。逃げ道を探しているのが分かる挙動だ。
「言っておくけど逃がさないからね」
仮にこいつを逃がしても、すでにこいつらのアジトは掴んでいる。あそこに行けば、他のアジトも掴めるだろう。でも逃がさないよ。
シャルディナ盗賊団を潰そうと思うのは、俺が安心して眠るためだ。俺の周りを盗賊がうろつかないようにし、俺や俺の関係者にウザいことをさせないため。
だけどこいつを逃がさないのは、世の中のため。自分でも柄にもないことをしていると思うが、こいつを逃がしたらまた多くの人が殺されることだろう。
ジョブ・虐殺者を持つこいつは弱者を殺し悦に浸るクズ中のクズだ。これまでに多くの罪もない人を殺してきた。これからも殺し続けるだろう。もしかしたらその中に俺に関係する人が含まれるかもしれない。だから逃がさない。
「へへへ。俺を殺したら後に引けなくなるぜ」
強気だね。だけど俺、そういう脅しには屈しない。俺は誰にも屈しない。これまでも、そしてこれからも。
「後に引く気はない。安心しろ」
「ま、待て……」
「そっちが喧嘩を売ってきた。あの婆さんもすぐにあんたの後を追う。安心しろ」
「ばあ……さん……お前、どこまで」
「あんたが知る必要はない」
ミスリルの両手剣を向ける。
「待ってくれっ」
虐殺者が土下座して、地面に頭を擦りつける。
「……なんのつもりだ」
「抵抗しない。だから殺さないでくれ」
「大人しく捕まると言うのか?」
「そうだ。俺は抵抗しない。大人しくする。だから殺さないでくれ」
土下座するそいつの後頭部が踏めるくらいの場所まで移動。踏まないよ、でも踏んでやりたい。
「大人しくするなら、痛い目を見ることはない。警備兵に突き出して終わりだ」
「あ、ありがとう。感謝する」
背嚢を下ろして縄を出そうとしたその時。
「油断したなっ」
虐殺者が死角になっている懐から短剣を抜いて俺に向けた。
その短剣には毒が塗られているのか、明らかに禍々しい色をしている。いくらダメージが少ないとは言え、これを受けるのは危険だ。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇっ」
ガシッ。
「油断するわけないじゃん」
虐殺者の腕を掴み、短剣を止める。
こうなることは分かっていた。こいつが簡単に降伏するわけがない。何かしないほうがおかしいと思っていた。
だからどんな展開でも対応できるように、警戒するのは当たり前。ただもう少し趣向を凝らすかと思っていたんだが、すごくベタな展開で逆に驚いているくらいだ。
───メキッバキッゴキッ。
「ぎゃぁぁぁっ」
握力任せに掴んでいた腕の骨を砕いた。
その腕を捻って、虐殺者の毒短剣を足に突き刺す。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「俺、クズに容赦はしないから」
ニカッと良い笑みを見せてやる。どうだ、爽やかだろ。
「ひぃぃぃっ」
傷つくからそんなに怯えるなよ。
虐殺者が懐から何かを取り出した。当然、俺はそれを奪い取る。
「あぁぁ……それを……」
どうやら解毒剤のようだ。用意がいいね。
「これ飲みたいの?」
「は、はい……」
「じゃあさ、俺の質問に答えてよ」
「………」
「早く飲まないと危ないんじゃないの?」
「うぅぅ……何が……聞きたい……?」
汗をダラダラと流す虐殺者が、解毒剤のために色々吐いてくれた。
盗賊から転職するだけあって、こいつはそこそこ幹部だ。色々知っていたよ。
今日は長い夜になりそうだ。
ご愛読ありがとうございます。
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