023_シャルディナ盗賊団
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この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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023_シャルディナ盗賊団
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転生11日目もスパンッとミスリルの両手剣を振り下ろす。
グレーターラットは動くこともなく消滅した。
スキル・隠密を発動していると、グレーターラットに気づかれずに近づける。そこにスキル・急所突きの効果でダメージ3倍が100パーセントで発動。勝負は一瞬で決まった。
「ジョブ・暗殺者はスキル・隠密が優秀だし、急所突きは凄く強い。暗殺ならぬ瞬殺だな」
「ご主人様の日頃の研鑽の賜物ですよ」
「そんなことはないだろ。このミスリルの両手剣が優秀なんだ」
それと自力でジョブを替えられる能力もね。
アンネリーセがドロップアイテムを拾い袋に入れて、俺たちは2階層へ出た。
老人の時はゆっくりな動きだったけど、今ではキビキビ動いてOPPAIが揺れる。タオルを巻いても揺れるものは揺れる。眼福だ。
今のでレベルが上がったが、レベル3になるまで4体のグレーターラット狩りを繰り返した。
次は2階層のボスではなく、3階層のボスのジャイアントスパイダーを狩る。
2階層のボスは2体だから、暗殺者とは相性が悪い。効率を考えたら1体のほうがいいと考えたんだ。
ダンジョンムーヴで3階層のボス部屋近くへ移動。一々ジョブを変更するのは面倒だが、それ以上にダンジョンムーヴが便利だ。
パーティーがボス部屋に入るところだったから30分ほど待った。暗殺者だと一瞬で勝負がつくから勘違いしてしまうが、本来はこれくらいの時間をかけて戦う相手だ。気を引き締めよう。
ジャイアントスパイダーが現れる前に隠密で姿を隠す。
グレーターラットの時に調べたんだけど、姿を見られてからだと隠密は効果がない。だからジャイアントスパイダーが現れる前に、隠密で姿を隠した。
ジャイアントスパイダーに俺の姿は見えてないようだ。近づいてミスリルの両手剣を振りかぶる。
「っ!?」
細い足が俺の目の前を横切った。反応して後方に飛びのいたから当たらなかったが、今のは偶然なのだろうか?
ジャイアントスパイダーは今も俺に気づいていない。もしかしたら一定範囲に入ったら、隠密で姿を隠していても気配のようなものを感じるのだろうか?
試してみるしかない。
後方に回り込んで、先程の距離まで10センチくらいのところまで近づく。まだジャイアントスパイダーは反応しない。
ここでミスリルの両手剣を振りかぶる。反応はない。
ここではわずかにミスリルの両手剣が届かないから、先程の距離まで近づく。
ブンッ。やっぱり一定範囲に俺が入ると反応する。
ミスリルの両手剣の間合いが危険領域で、ジャイアントスパイダーは危険を感じて反応するんだと考察した。
それなら間合いの外から一気に飛び込んだらどうか。
上段に構えたミスリルの両手剣。スキル・神速を発動させ、反応されないギリギリから大きく踏み込んで振り下ろす。
ジャイアントスパイダーは反応したが、ビクンッと体を跳ねさせるだけですでにミスリルの両手剣が奴の体を切り裂いた後だった。
さすがは神速。その名にたがわぬ速さだ。
パリンッと硬質な破壊音と共に、ジャイアントスパイダーは消滅した。
今のは反応されていることから、急所突きが発動したか微妙な線だろう。
ミスリルの両手剣のATK補正値が大きいため倒せたが、鉄の片手剣のようなATK補正値が低い武器だと倒し切れなかったはずだ。
さすがはボスと言うべき反応だったが、おかげでスキル・隠密の熟練度が(微)から(低)に上がった。
これでジャイアントスパイダーに感づかれることなく倒せるのではないだろうか。
思った通りに隠密(低)だと、ジャイアントスパイダーに気づかれることなく一撃を入れることができた。
そのままジャイアントスパイダー周回を行い、暗殺者のレベルを6まで上げた。
ギルドでボスドロップ品を換金するが、やっぱり盗賊が入り込んでいる。本当にギルドが盗賊とグルなんじゃないかと思えてきた。
・グレーターラットの尻尾4個6000グリル。
・毒袋7個1万2600グリル。
・グリーンリーフ1個4500グリル。
※総合計2万3100グリル(23万1000円相当)
ボス周回は金策に丁度いい。考えを改めて奴隷購入を前向きに考えているから、お金はどれだけあっても邪魔にならない。
それにアンネリーセが奴隷制度の良いところを教えてくれ、困った人を救済する制度なんだと知ることができた。奴隷という名称がいけないのだ。他の名称にしたほうが、受ける印象が軽くなるのに。
さて、今日は盗賊を撒いてから、俺1人でもう一度外に出るつもりだ。
「お気を付けて……」
「うん。戸締りして用心は怠らないようにね」
「はい」
アンネリーセはレベルが高いから滅多なことはないと思うが、それでも絶対はないからね。
マントは羽織っているが、堂々と歓楽街を歩く。
一定距離を取ってついてくる奴が、スキル・感知で感じられた。釣られていると知らずに、盗賊が引っかかってくれたようだ。
今のところ1人の反応しかない。そこで酒場に入ってちょっとだけ時間を潰す。
「ミルクを」
「………」
マスターのようなアッシュグレイの髭のおじさんが無言でミルクを入れてくれた。酒場でミルクを頼むなと言いたいようだ。
温いミルクはなんとも生臭い。この世界では氷を作るとか、飲み物を冷やすという文化や習慣がない。
20分ほどチビチビ飲んでいると、盗賊ホイホイな俺の周囲に盗賊が集まってきた。最近、ホイホイが流行っている。
チャリンッと100グリル銀貨を2枚置いて席を立つ。
「ごちそうさん」
「………」
マスターは目礼して反応。
美味しくなかったけど、雰囲気のいい酒屋だった。
さて、盗賊は一時的に5人に増えたけど、3人に減った。2人は仲間を呼びに行ったのだろう。
酒場を出てフードを被る。今さらフードを被ってもばっちり顔を見られているが、人目を気にするように路地裏に入る。そこで隠密を発動。
俺に遅れて盗賊たちが路地裏に入ってくる。
「どこに行った?」
「この路地は行き止まりのはずだ。逃げ道なんてないはずだぞ」
「くそっ、また逃げられた。お頭にどやされるぞ」
そんなやり取りを、俺の目の前でする盗賊たち。なんとも滑稽だ。
「お頭になんて言うんだよ」
「お前が報告しろよ」
「いや、お前が行けよ」
あんたら、ダチョウ的なお笑い芸人か。
俺が俺がという展開にはならず、小太りの丸顔の盗賊が他の2人にケツを叩かれ報告することになった。
いつも嫌な役回りが回ってくるようで、この3人の中では一番立場が弱いんだろう。
俺もその丸顔の盗賊についていく。お頭に報告と言っていたから、アジトに向かうはずだ。
ケルニッフィは大都市というだけあって、かなり広い。北側から東側にかけて富裕層が住み、南側はダンジョンに近いこともあり探索者が多い。そして西側は貧困層が集まっている。城は町の北側にある。
南側から西側に入っていくと、徐々に建物が石ではなく木になっていく。さらに進むと掘っ立て小屋が目立つようになってくる。そのエリアを通ってこのエリアでは珍しい石造りの大きな屋敷があった。周囲は木の家ばかりだからかなり目立つ建物だ。
門番と一言、二言言葉を交わして、通用門を通った丸顔の盗賊。門番は4人居たが、全員盗賊だ。ここが盗賊のアジトで間違いないようだが、俺が思っていたのと大分イメージが違う。
屋敷の玄関ドアの前でも盗賊が番をしていた。丸顔盗賊はここでも一言、二言言葉を交わして屋敷の中に入って行く。門番と同じ言葉だったから、合言葉なんだろう。
丸顔盗賊に続いて滑り込むようにドアを入る。屋敷の中には多くの気配がある。詳細鑑定するとほとんどは盗賊だが、時々強姦魔とか放火魔などという物騒なジョブ名が出てくる。間違いなくここは盗賊団のアジトだ。
階段を上り3階へ向かい、廊下を進む。ドアの前に3人の盗賊が番をしている部屋があり、その前で立ち止まって合言葉を交わす。
ドアを通って中に入る。そこには1人の女性と3人の男が居た。女性がソファーに横になって1メートルくらいあるパイプをふかしている。煙が出ていることからタバコだと思うけど、そのパイプが趣味の悪い金色だ。
男は窓際に2人、ドアの横に1人。この赤茶毛の女性がボスなのか。
「あんたたしかゴゴクのところの若いもんだね」
ドアを入った直後は30くらいかと思ったけど、よく見るとかなりの厚化粧。パイプを持つ手のシワを見ると最低でも50。もしかしたら60過ぎかも。
「へ、へい」
「何しに来たんだい?」
「あの……あのガキについてですが……」
「あのガキ? ああ、ポツクを殺った奴かい。先程見つけたって、若い者が走っていったね」
丸顔盗賊はかなり緊張しながら、俺を見失ったと報告した。
「使えない子だね。放り出しな」
「へい」
「す、すみません!」
丸顔盗賊はドアの横に居た屈強な護衛に廊下に放り出された。
「はぁ……使えない子たちだよ。アタシの可愛い舎弟を殺った奴を、いつまで野放しにしておく気かねぇ」
赤茶毛の女性はパイプをふかして煙を吐く。
俺が殺した盗賊の中にポツクという名前があった。そのポツクは大盗賊団のシャルディナ家傘下の盗賊団を率いていた。
この女性は大盗賊団のシャルディナ家の大ボスのシャルディナ。こいつの下には、5つの盗賊団と300人の盗賊が居る。なかなかの大所帯だ。
これだけ大きな盗賊団だから、領主も下手に手出しができない。ここにこんな目立つ屋敷を建てていても、踏み込めないのは常時100人もの盗賊が護っているからだ。
しかも周辺にも盗賊が居て、何かあればわらわらと出てくるらしい。まるでゴキブリのようだ。
さすがに300人の盗賊を殺しまくるのは現実的ではない。せめてシャルディナの周辺と5人の幹部を一度に殺せば空中分解しないだろうか?
目の前に居るのに、俺のことに気づいてないことからこいつを殺すのはそれほど難しくないだろう。それでおしまいなら、それでもいい。
シャルディナを殺しても別の奴がシャルディナ盗賊団を引き継ぐ。その後に俺を狙うのでは堂々巡りだ。そういった連鎖を止めるには、盗賊団を壊滅させる他ない。
困ったな。こんなに大規模な盗賊団だとは思っていなかった。
一度引いて考えをまとめよう。
【ジョブ】暗殺者Lv6
【スキル】急所突き(低) 隠密(低) 痕跡抹消(低) 神速(低) 感知(低)
【ユニークスキル】詳細鑑定(中) アイテムボックス(中)
「こちらも数を揃えて、色々な対応が可能なようにしましょう」
宿に帰ってアンネリーセに盗賊団のことを相談したら、こう提案された。
益々奴隷を購入する方向に傾いていくが、それでいいのかと躊躇する。俺の敵を屠るために、盗賊とはいえ人殺しを前提に奴隷を買うのはかなり忌避感のあるものだ。
「盗賊はモンスター以上に駆除対象です。そのため盗賊を殺しても犯罪にならないのです」
アンネリーセに言われなくても戦力の増強は俺もするべきだと思うんだ。頭では分かっていても、心が納得しないんだよ。
「それを奴隷に強要するのは嫌なんだ」
「それなら強要しなければいいのです」
「え?」
「奴隷を買う時、盗賊退治すると言って了承した者を購入すればいいのです」
奴隷も自分の意志で戦うことを選べると彼女は言う。
「分かった。明日ゴルテオさんの店に行こう」
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