016_罠解除は力業
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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016_罠解除は力業
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転生8日目の朝は眠い。昨夜、俺が床で寝ようと毛布を敷いていると、アンネリーセが床で寝ると言い出した。
「今の私は元の体を取り戻しました。床で寝ても平気です」
「いや、女の子を床で寝かすわけにはいかないから」
そんなやり取りを何度か続け、折衷案でどちらともなく「一緒に寝る」ということになった。
物語のヒロインのような可愛いアンネリーセの寝顔が真横にあるんだ。普通の神経の18歳男子が寝られるわけない。俺は一晩中彼女の寝顔を見つめていた。
誰だよ、美人は3日で飽きるって言った奴は? 何時間見続けても飽きないんですけど。3日経っても絶対飽きない自信があるぞ、俺。
「おはようございます、ご主人様」
「うん。おはよう」
顔が近い。鼻と鼻がくっつきそうだ。胸はすでにくっついている。すごいボリュームだ。柔らかい。マシュマロなんて目じゃない。
この世界にはブラジャーがない。パンツもカボチャパンツで、色気はない。昨夜彼女の使い古したと思われるパンツを使って防具の手入れをしていた。防具になりたかったよ。
老婆だったけど、アンネリーセが穿いていたパンツなら構わない。むしろご褒美だ。
話が逸れたけど、ブラジャーがないからノーブラなんだ。老婆の時はしぼんで垂れていたから目立たなかったけど、今は凄く目立つ。男たちの目にアンネリーセのノーブラを見せたくない。これは俺だけのものだ。
そんなわけで、タオルをさらしのように胸に巻いてもらおう。
「きつくないか?」
「大丈夫です」
アンネリーセの胸は『大きすぎる』からさらしを巻いても『大きい』になる程度だ。ブラが欲しいが、ないものは我慢するしかない。
だけどいつかブラを作ってやろうと決めた。そういった目標があるとやる気にもなる。
食堂へ行くと、給仕のおばさんが怪訝な目で見てくる。昨夜の夕食を食べている時も、おばさんは何度も見ていた。
あの老婆からこんな若くて可愛い子に乗り換えやがってと思っているのかな。違うんだよ、この可愛い子があの老婆なんだからね。
若返ったアンネリーセは、老婆の時のように食べることはなくなった。あの時は無意識に食べて生命力を維持していたようだ。
ダンジョンに向かう道中、アンネリーセはローブのフードを目深に被って顔を隠してもらう。こんな可愛い子が歩いていたら、絡んでくる奴も居ると思うんだ。
「ご主人様は自覚がないのですね」
「ん?」
「ご主人様のほうが可愛いですよ」
そう言えば、それなりに可愛い容姿をしていたんだった。だけど自分のことはなかなか可愛いと認識しない。この世界に来て鏡を見たことがないからだろう。
「それじゃあ、俺もローブを羽織るか」
「それがいいでしょう。探索者の中には乱暴な者も居ますから」
丁度服屋の近くだったから、ローブを買った。装備するものではないから、俺の容姿を隠せればなんでもいい。
地味な灰色のローブのフードを被った俺と、黒いローブのフードを被ったアンネリーセはダンジョンに入った。今日は露店に寄らず真っすぐダンジョンに入った。
アンネリーセの食欲が普通の女の子程度のものになったから、買っておいた池イカの姿焼きやゲソ焼きの消費が少なくなったからだ。
ダンジョンに入るとすぐにダンジョンムーヴで2階層に移動した。今日は2階層のモンスターを相手に戦うつもりだ。
「モンスターです。距離25です」
40メートルから50メートルくらい先にモンスターが居るらしい。ボス部屋を出たところからすぐ出てくるんだな。
ジョブを両手剣の英雄に変え、そのモンスターを視認できる場所まで進んだ。
「グレイラットか」
レベルは2だ。
ミスリルの両手剣で切り捨てる。手応えなし。動きもゆっくりに見えた。グレーターラットでも苦戦しないから、グレイラットLv2なら苦戦はしない。
「ガンガン行こうぜ!」
「はい」
ガンガン行くのは俺だけど、今日はできれば2階層のボスを倒したいからどんどん進む。
「モンスターです。角を右に曲がった先に居ます。角のすぐ向こうに居ますから気をつけてください」
「了解」
モンスターの気配を俺も探っているが、まったく感じられない。
角の手前で、息を大きく吸って吐く。
角を一気に曲がってモンスターを視認。同時にミスリルの両手剣で一刀両断。
今回もレベル2のグレイラットだった。
「2階層にはグレイラット以外に、アッシュゴーレムが出てくるんだよな?」
ギルドで購入した冊子に、木のゴーレムが出てくるとあった。
「はい。グレイラットとアッシュゴーレムがセットで出てきます」
複数相手の戦闘は初めてだ。
「2体相手の時は、どうやって戦えばいい?」
「私が1体引き受けましょうか?」
「いや、今はアンネリーセに頼らず、やれるところまで1人でやってみたいんだ」
情報は別。そういうのは、事前準備の内だからね。
「まずは動きの速いグレイラットを倒します。その間、アッシュゴーレムの動きに気を払うことを忘れないでください」
「OK、分かった」
2分ほど歩いたら、アンネリーセの魔力感知に反応があった。
「今度は2体です。距離30です」
初めての複数相手の戦闘だ。緊張する。
グレイラットと一緒に現れたアッシュゴーレムは、複数の根がウニョウニョ動き移動できる奴だ。枝が4本あって、頭はアフロのように葉が茂っている。
「場所が悪いな」
アッシュゴーレムが手前に居て、グレイラットはその向こう側に居る。これではグレイラットを先に倒しにくい。
アッシュゴーレムの攻撃手段は、4本の枝を鞭のように使うらしい。それを掻い潜ってグレイラットを倒すか。
いや、ここはセオリーじゃなくても、手前のアッシュゴーレムから倒す。グレイラットの攻撃なら、躱せるはずだ。
「危なそうなら、頼む」
「はい。お気をつけて」
「はぁぁぁっ」
一気に距離を縮めてアッシュゴーレムに斬りつける。手応えはほとんどない。
足を止めずに俺に敵意をむき出しにしているグレイラットの攻撃を躱し、反撃する。
2体は消滅した。
アッシュゴーレムは硬くてもミスリルの両手剣の敵ではなかった。それに俺自身もかなり強くなっている。両手剣の英雄は伊達ではない。
「ご主人様の攻撃力は異常です」
「異常と言われるのは心外だよ」
自分でも異常だと思わないわけではないけど。
「申しわけありません。ですが、それだけ安心できます」
安心して見守ってもらえるように、もっと両手剣を上手く扱ってみせるぞ。
モンスターを倒しつつ進んでいると、アンネリーセが腕を引いた。
「罠です」
「え、どこ?」
罠と言われても、何も見えないし感じない。
「あの床を踏むと、罠が発動します」
あの床と言われても、俺にはさっぱり分からない。
「解除できるかな?」
「問題ありません」
解除できるようだから、頼んだ。
「マナハンド」
ヌーッと半透明な腕が出てきて、床を押し込む。
ガタッ。ズシャッ。
壁の一部が消えたと思ったら矢が飛んで、逆の壁に当たって床に落ちた。
「解除できました」
力業だった。それでも解除できるからいいか。
グレイラットを切り捨てると、アッシュゴーレムの枝を身を低くして躱す。グレイラットが消滅するが、さらに枝が迫って来る。それを後方に飛んで躱す。
ミスリルの両手剣を高く掲げ、大上段に構える。
スキルの発動を思い浮かべる。
「喰らえ。バスタースラッシュ!」
ミスリルの両手剣に力が宿る。
「はぁぁぁぁっ」
振り切ったミスリルの両手剣から、淡く光ったほぼ透明の刃が飛んでいく。
アッシュゴーレムはその刃を枝を振って迎え撃ったが、刃は枝ごと幹を切り裂いた。
溜めは約1.5秒。発動後の硬直は2秒といった感じだ。使用前後にこれだけの無防備の時間があると、使いどころが難しい。
今はいいが、いずれバスタースラッシュでも倒せないモンスターが現れるだろう。それを考えると、バスタースラッシュの使いどころは考えなければいけない。
「2体との戦闘も慣れてきた」
「はい。かなり安定した戦い方です」
「剣の扱いのほうはどうかな?」
「ご主人様のために正直に言いますが、まだまだです」
本当に正直に言ってくれる。下手なおべっかされるより、よっぽどマシなんだけどね。
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