015_ラッキースケベ神の自称使徒
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015_ラッキースケベ神の自称使徒
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1階層のボスであるグレーターラットを倒した俺は、もう一度グレーターラットと戦った。
実を言うと、1回目のグレーターラットを倒したところで探索者のレベルが3に上った。
さらに、新しいジョブを取得していたから、そのジョブに変えて2回目のグレーターラット挑戦というわけなんだ。
両手剣の英雄 : 智勇を兼ね備え両手剣を扱う者。スキル・指揮(微)、全体HP自動回復(微)、身体強化(微)、バスタースラッシュ(微)が使える。取得条件は知恵と勇気を示し、初めて戦ったボスモンスターを単独で討伐すること。
スキル・指揮(微) : 指揮下にある全ての者のSTR、VIT、AGI、INT、MIN、DEXを5パーセント上昇させる。指揮下に置ける人数は10人まで。(パッシブスキル)
スキル・全体HP自動回復(微) : 自身と指揮下にある全ての者のHPを回復させる。回復量は毎分1HP。(パッシブスキル)
スキル・身体強化(微) : 自身のSTR、VIT、AGI、INT、MIN、DEXの各能力値を10ポイント上昇させる。(パッシブスキル)
スキル・バスタースラッシュ(微) : 両手剣技。剣先から5メートル以内の敵にATK2倍の斬撃を飛ばす。消費MP5。(アクティブスキル)
新ジョブの両手剣の英雄は、レベル1でレベル3の探索者とSTRやVITの値が同じ8(装備とスキルは含んでいない)になる。他の能力はやや低いが、スキル身体強化の効果でSTR、VIT、AGI、INT、MIN、DEXにそれぞれプラス10ポイントされることから、探索者よりもはるかに強い。
ちなみにスキル・指揮の効果は俺にはない。これは『指揮下』にある人用の強化スキルだ。
低レベルで転職を繰り返していることから本来の強さは分からないところだが、これは良いと思った。
アンネリーセに両手剣の英雄のことを聞いたが、英雄は滅多に現れない珍しいジョブだそうだ。それでも過去にはそれなりの数の英雄が現れている。
勇者のような地雷ジョブかと思っていたが、英雄はこの世界の人で何人も出ていると聞いて使うことにした。それにダンジョンを出たら他のジョブにしておけばいいだろう。
グレーターラットの動きがとてもゆっくりに見える。身体強化のプラス補正は凄いな。これでMP消費がないんだから、頼もしい限りだ。
「はっ」
グレーターラットよりも速く動き、その体を真っ二つにした。
あの攻撃パターンの隙を突くまでもなく、呆気なく勝ってしまった。あんなに苦労したグレーターラットなのに、ジョブが違うだけでこんなにも簡単に勝てる。
英雄系はこれ以上ない勇者並みのジョブらしい。戦闘力も高いが、味方を強化できるという利点もある。
勇者のように魔法は使えないらしいが、それを補って余りあるスキル構成だ。
「英雄が勇者並みなら、なんで勇者召喚があるんだ?」
「英雄が現れるのは運に左右されますが、勇者は召喚すれば現れます。こちらのほうが確実なのです」
「なるほど……」
効率や確実性を追求すれば、勇者というわけか。
良い武器と防具さえあれば、ボスは倒せるだろう。ただし知恵と勇気を示さなければいけないから、これが取得のハードルを上げているわけか。
俺の場合はグレーターラットの攻撃パターンを見抜いて勇気をもって攻撃に移ったから、この2つの条件を満たしてボスを倒した。そのおかげで両手剣の英雄を得られたわけだ。
「あ、レベルが上がっている」
まさか1体でレベルアップするとは思わなかった。さすがはレベル5のボスだ。
「新しいジョブは得られましたか?」
「そんなに簡単に得られたら、ジョブのありがたみがないだろ」
探索者にしても英雄にしても、かなり苦労する取得条件だ。俺はたまたま良い武器を持っていたから取得できたけど、そんなに簡単に新しいジョブが出るわけではない。
「そうですか。残念です」
俺のジョブのことなのに、自分のことのようにしょんぼりするアンネリーセが可愛すぎるだろ!
「それはそうと、英雄がレベル3になるまでグレーターラット狩りをしていいかな?」
「はい。お供します」
ボス部屋から2階層へ入り、すぐにダンジョンムーヴを使って1階層のボス部屋前へ移動。
グレーターラットのレベルは5のためか、今の一戦で両手剣の英雄のレベルが2に上った。
あと2、3回戦えば、レベル3になるだろう。
それから2回で両手剣の英雄のレベルが3になった。
「レアドロップです」
レアドロップは幸運の尻尾だった。なんでもレアドロップ率が少しだけ上昇するらしい。これは装備品扱いにならないため、ベルトにつけておく。これだけで5パーセントだが、レアドロップ率が上がるらしい。
「高レベルのパーティーでは、この幸運の尻尾を必ず持っています。普通は20回以上狩って手に入れるようなアイテムですから、4回目でドロップしたのは幸運でした」
「そうなんだ。ラッキーだな」
幸運の尻尾というと俺はウサギを思い浮かべるんだが、この世界ではネズミの尻尾らしい。世界が変われば、常識も変わる。そういうことなんだろう。
今日の収穫はネズミの肉が16個800グリル、鋭い前歯が1個1000グリル、グレーターラットの尻尾が3個4500グリル。総額で6300グリル(6万3000円相当)。
まあまあな金額になった。これなら宿代と食費、それに装備のメンテナンス費を出してもそれなりに余ると思う。
あとボス部屋にあった遺品は、どれも二束三文だった。持ち帰るのがバカらしいから、置いてきた。誰か他の人が持ち帰るだろう。
ボスドロップ品はノーマルでも結構な金額になる。ボス周回は金策に丁度いい。
これも探索者のダンジョンムーヴがあるからできることだ。これだけでも探索者は良いジョブなのに、誰も取得しようとしない。
「この装備のメンテナンスをしてくれる店か職人を知っている?」
ミスリルの両手剣は自動修復があるからメンテナンスフリーだが、防具のほうはそうはいかない。
これまではダメージを受けなかったが、今日はグレーターラットに何度も攻撃を受けてしまった。
アンネリーセは少し考え、口を開いた。
「職人は知っていますが、まだ職人に出すほど悪くなっていませんから、私が手入れをします」
「それなら俺が……」
「ご主人様にそんなことはさせられません。私が責任をもって手入れします!」
「お、おぅ……頼むよ」
「はい」
宿に帰ったら手入れしてくれるらしい。
帰る途中に手入れ用の油を購入した。
「防具や武器は命を預けるものです。手入れは小まめにしなければいけません」
詳細鑑定もメンテナンスは小まめにしないといけないと言っていた。だから俺は職人に任せるものだと思っていたんだ。
そう言えば、ネイルーザさんは古着で剣を拭けと言っていた。あれれ? アンネリーセも古着で装備を拭くの?
老婆のアンネリーセが穿いていた下着……でも今は若々しいアンネリーセが穿いている。これはどう考えればいいんだろうか?
興奮するべきか、なえるべきか……人生の分かれ目のような、重大な分岐点かもしれない。
宿に到着し、部屋に戻って服を着替える。
普通に脱ぎ始めた俺だったが、アンネリーセも脱ぎ始めているのを見てピタリと手が止まった。
「あ、あの……」
「はい。なんでしょうか?」
アンネリーセは平気な顔で何をしているのだろうか? 老婆じゃないんだから、それは勘弁してほしい。いや、逆に見たいんだけど、見ていいのか?
ここはご主人様の威厳を見せよう!
「アンネリーセ」
「はい」
服から手を離したアンネリーセが俺を見つめてくる。
「俺は男だ」
「はい。最初知った時は驚きましたが、知っています」
「え、驚いてたの? どこら辺が? まったく無表情だったよね?」
「そんなことないです。とても驚きました。ただあの時の私は表情筋を動かすのも大変だっただけです」
「な、なるほど……」
やっぱ服を着ていると女の子に間違われるらしい。
「男物の服を着ていただろ?」
「男性用の服を着る女性は多いです。特に体を動かす職業の方は多いですよ」
それで色気のない女性をよく見たのか!?
いや、今はその話ではない。俺の威厳を示すんだ!
「男の俺の前で裸になるのに抵抗はないのか?」
「買われてまだ数日ですが、すでに私の裸はご主人様にお見せしてますから……」
それ老婆だったし! 胸だってシワくちゃで垂れ下がって臍まであったし!
「アンネリーセは若返った。その若くて瑞々しい体を俺に見られるのは大丈夫なのか?」
「恥ずかしいです。ですが私はご主人様のものですから……」
どんどん声が小さくなっていく。
「あまり見ないでいただけると……少しだけ目を閉じていただけると……」
見られたら恥ずかしいんだね。分かる。分かるよ、その気持ち。
だが、断る!
いや、見るだろ、普通。むしろ見ないほうが、ラッキースケベの神様に失礼だ。
この場面ではラッキースケベではないかもだが、俺はラッキースケベ神の自称使徒だからな!
「アンネリーセがどうしても嫌だと言うのなら俺は目を閉じるが、そうじゃないなら俺のことは女の子だと思ってくれ」
「え?」
秘技女の子のフリ!
「女の子同士ならそんなに恥ずかしくないだろ?」
「それはそうですが……分かりました。着替えの時は、ご主人様を女の子だと思うようにします」
あとは俺が欲望に耐えきれるかだ。だが、見ないという選択肢はない!
威厳? 何それ、美味しいの?
アンネリーセは着痩せするタイプだ。いや服着てても胸の主張は凄かったが、脱ぐともっと凄い。
FやGではない。おそらくその上のHはあるだろう。まさにHな体だ。
しかも腰のくびれがはっきりと分かるし、足も細い。それでいてお尻は形の良い安産型。安産型ですよ、奥さん。これ大事なことだから、2回言ったからね。
ああ、生きてて良かった。転生してるけどさ。
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