111_公爵領入り
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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111_公爵領入り
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バッカス子爵の屋敷に到着したのは、5日目のことだ。
「おお、久しぶりだな! 飲むか!」
いきなり宴会になった。
メインジョブを酒豪に変えて、バッカス子爵が注いでくれる酒を飲む。
「相変わらず強い酒だな、これ」
「ガハハハハ! ドワーフにはこれくらいがいいんだ! さぁ、飲め!」
「バッカス子爵も飲めよ」
「ガハハハハ。ワシを酔わせようというのか! 甘いぞ、トーイ!」
甘くても辛くてもいいから、お前が飲め!
5日の強行軍直後のバッカスの酒はキツかった。
宴会が始まって2時間ほどでさすがに倒れた。
朝起きたら酒豪がレベル23になっていた。昨夜だけでレベルが3も上がってしまった。どんだけ強い酒を飲まされたんだ、俺?
「起きたか! これがお主の剣だ!」
渡されたのは長さが130センチほどの剣だ。振ってみると不思議と馴染んで、ずっと愛用しているもののように感じた。
漆黒の剣は巾広で肉厚。丈夫そうではあるが、俺が剣に求めるのは斬れ味だ。
「試し斬りをしてもいいか?」
「おう、中庭に試し斬りの丸太がある。こっちだ」
中庭にいくつかの丸太があった。細いものから太いものまで様々だ。
直径30センチ程の丸太を前に、剣を構える。
息を整えて、袈裟切りに振り下ろす。
まるで手応えがない。だが、俺は丸太を斬ったはずだ。
ツツツと切れ目が見え、丸太がずり落ちる。鈍い音を残して転がる。
「凄い斬れ味だ。気に入ったよ」
「ガハハハハ! ワシが丹精込めて鍛えた剣だ。斬れないわけなかろうが!」
まだ詳細鑑定をしてないが、相当な名剣なんだろうな。
「この剣の銘を聞いてもいいか?」
「それは黒斬だ」
「黒斬……いい銘だ。気に入ったよ」
俺はバッカス子爵に礼を言い、黒斬の代金を聞いた。
「ワシが好きで鍛えたんだ。それに材料はお主のものだ。金なんぞいらんわい」
「いやそれじゃあ、俺の気が済まない」
「ガハハハハ。それならまたいい金属が出たらワシに鍛えさせてくれ!」
そういうことか。なら……。
アイテムボックスから金属の塊を出す。
「なななななななんだとぉぉぉぉぉぉぉっ!」
青銀色のミスリルが50キロ、朱色のヒヒイロカネが50キロ、漆黒のゴルモディアが50キロ。
「これはミスリル! こっちはヒヒイロカネ! そしてゴルモディア! ぐわっ! ワシは、ワシは……今、猛烈に感動している!」
金属の塊に頬ずりし、涙と鼻水を流しているよ……。
「これをワシに鍛えさせてくれるのか!」
「ミスリルは代金替わりに譲渡するから、ヒヒイロカネとゴルモディアは俺の家臣用の武器にしてほしいんだ」
「ワシに万事任せろ! いい武器を鍛えてやる!」
暑苦しいが頼もしい。そんなバッカス子爵にほしい武器のリストを渡す。
「それじゃあ、頼んだよ」
「おう、任せておけ!」
俺はバッカス子爵の屋敷をあとにし、ケルニッフィに向かった。
ちなみに黒斬の能力はこんな感じになる。
・黒斬 : ATK+130 STR+20 AGI-10 斬撃強化(高) 刺突強化(高) 不壊 (価値2億グリル)
比較対象として魔剣サルマンはこんな感じ。
・魔剣サルマン : ATK+97 AGI+20 魔法吸収(高) 不壊 (価値2億5000万グリル)
価値は魔剣サルマンのほうが高い。おそらく魔法吸収の効果が珍しいものだからだと思うが、黒斬も素晴らしい能力と効果だ。
共に不壊の効果があって、壊れない。だから耐久値は存在しないようだ。
2本ともいい剣だから、どちらを使うか迷う。予備に持っておくのも贅沢な剣だ。
ケルニッフィに到着すると、すぐに屋敷に入った。
「お帰りなさいませ。旦那様」
「「お帰りなさいませ。旦那様」」
モンダルクたちが迎えてくれた。
リビングに入って、お茶を淹れてもらう。
「到着早々ジョジョクには悪いが、休憩したら城へ行き公爵様に面会を申し込んでくれ」
「承知しました」
ジョジョクの背中を見送って、俺はモンダルクたちを集めた。
「まずは長いこと留守にしてすまない」
モンダルクたちがそのようなことはないと返事する。俺もここまで長く留守にするつもりはなかったんだよね。まさに予定外ってやつだね。
「手紙で知らせたように俺は子爵に陞爵し、領地をもらった」
「「「おめでとうございます」」」
めでたいかは、実際に領地経営をしてみないと分からない。まだどんな土地なのか確かめてないからさ。
「この屋敷は管理人を置いて、皆には領地へ来てもらいたいと思っている。問題はあるかな?」
「ありがとうございます。お供させていただきます」
モンダルク夫妻、ゾッパ、ケニーは領地への引っ越しを了承してくれた。
モンダルクの息子のジュエルは王都組なので、すでに了承を得ている。
この屋敷は公爵家からもらったものなので、買取したいと思っている。
なにせこのケルニッフィにはダンジョンがある。この屋敷があると便利なのだ。
翌日、公爵に面談することができ、屋敷の買取を申し込んだ。
「屋敷はすでにフットシックル子爵の名義になっている。今さら返せとは言わん。それよりも王都ダンジョンの10階層のモンスター討伐が終わったそうだな?」
公爵は王都の出来事の報告を求めてきた。
ダンジョンの9階層、10階層の話から、王女とのやり取りなどを報告した。
「これからは領地を守っていくだけでなく、発展させなければならぬ。それは領主としての務めだ。励むがいい」
「ありがとうございます」
屋敷の買取を考えていたが、いいと言うので贈り物をすることにした。
「こちらを受け取ってください。9階層のボスからドロップしたものです」
ヒヒイロカネ鎧を贈る。
「これは……」
「ヒヒイロカネの鎧です。魔装になってます」
「いいのか?」
「構いません。他にいくつかありますから」
「いくつもあるのか?」
「ええ、いくつかありますよ」
ニコッとほほ笑むと、公爵はまるで化け物を見たような、引き攣った顔をした。そんな顔をされると傷つくよ。
帰り際、バルカンに呼び止められた。
「もはや某の及ぶところではなさそうだ。一手御指南願いたい」
以前は有無を言わさず拉致されたのに、丁寧に頭を下げられた。
こういう態度で頼まれると、嫌とは言えないよな。
訓練場でバルカンと対峙する。
以前は大きく感じたバルカンだったが、今はそこまで感じない。俺が強くなったからだろう。
訓練用の剣をお互いに構える。俺もバルカンも大きめの剣を選んだ。俺は両手剣派だからね。
バルカンは大柄だから、普通の剣では物足りないのだろう。
息を合わせてお互いに踏み込む。
剣と剣が打ち合う甲高い音。
レベルはかなりの差が開いた。それでもバルカンの剣技は長年の研鑽によって磨き上げられた素晴らしいものだ。
以前は我武者羅についていくだけで精一杯だったが、こうやってバルカンの剣技を見るのは勉強になる。
「ふーふー」
10分ほど動きを止めずに打ち続けたバルカンが息を整える。
あれだけ激しく打ち合ったのに、あの程度の息の乱れしかないのか。さすがだな。
「今日はいい訓練になった。感謝する」
バルカンが頭を下げる。頭を下げたいのは俺のほうだ。この10分で俺はもっと強くなれたと思う。
「こちらこそ勉強になりました。ありがとうございます」
レベルが同じで、俺にサブジョブやステータスポイントがなかったら、バルカンには一生勝てないかもしれない。
きっと幼い時から厳しく剣の研鑽をしてきたんだろうな。
俺も負けずに研鑽を積まないとな。
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是非とも購入してやってください!
コミカライズも決定です。お楽しみに!
ご愛読ありがとうございます。
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