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空色サプリ  作者: おじぃ
江ノ島

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気付かなかった江ノ島

 茅ヶ崎市中海岸在住の水城響です。きょうはお友だちの恋愛成就をお願いしにきました。どうか恋が叶うように、お願いします!


 お食事処のすぐ近くにある江島えのしま神社。通路沿いにある小さなこの神社には、恋愛の神様が祀られているという。大騎くんと秋穂ちゃんを見ていたら居ても立ってもいられず、ごはん待ちの間、思わず参拝に来てしまった。


 よくよく考えれば帰り際に寄っても良かったけど、来てしまったものは仕方ない。


 行き交う人々はカップルや友だち連れがほとんどで、過半数が10から30代くらい。パッと見だと単独行動は私だけ。


 私だってお食事処に戻れば彩加ちゃんたちがいるし、むしろ単独行動は滅多にしない。


 ご飯が運ばれてくるまでまだあと10分くらいはあるかな。


 そうだ、ならほんのちょっとだけ、江ノ島を散策してみよう。


 と、思い立ってはみたものの、江ノ島には小さいころから何度も上陸していて、いまさら何かを求めたところで新発見なんかあるのかな?


 島内のいたるところに石段、石畳が敷き詰められていて、どこかノスタルジックお土産屋さんやお食事処が軒を連ねている。


 それと、恋にまつわるスポットが点在していて、さっきの神社とか、その近くにはカップルで南京錠を掛けると結ばれるというオーシャンビュースポットもある。


 正直、いまの私には無縁だなと思いながら徘徊していると、観光客でごった返すメイン通りから分岐した細道が。


 こんな道、あったっけ___?


 吸い込まれるようにそこへ足を踏み入れてみると、道の右側には昭和中期ころの雰囲気が漂う民家が建っていて、その前を通過すると斜面や崖に自生した木々が生い茂り、車一台なら通れる幅のアスファルトの道が伸びている。観光客は見かけるものの混み合ってはいなくて、数十秒に一組と擦れ違う程度。この道はちょうど島の中腹を切り開いていて、向かって右が上、左が下。ここから落ちたら九分九厘助からない自信を持てるくらい地が遠い。島というよりは舗装された山道の雰囲気。路肩にはガードレール代わりに胸の高さほどのフェンスが連なっている。


 セミの声は昼間なのにヒグラシが目立ち、アブラやミンミンはベース程度にしか聞こえない。


 風が吹くと、木々はざらざらと擦れ合い、セミの合唱と共鳴して、ついさっきまでの喧噪が嘘のように静か。


「おおっ」


 ここは何気に絶景ポイントかも。


 アップダウンする道の途中、ふと生い茂った木々が開けた。その向こうには太陽に照らされた海と、笹船のように小さく見える周遊船。その北側には建物がぎっしり詰まった藤沢や、私たちが暮らす茅ヶ崎の街が見える。


 あぁ、そっか。単独行動で気付くことって、あるんだなぁ。


 いま私が立つ場所は、何百年もずっと昔から木々が生い茂っていて、そこを最低限切り開いて道にした、ほとんど原形をとどめた場所。


 海の向こうに広がる街も昔は‘かやが’生い茂る湿地帯の‘さき’だったという。その数キロ北側は山になっていて、この場所と同じように木々が生い茂り、各所に点在する沢ではいまでも水が湧き出ている。


 そんなふうに地域の歴史はある程度知ってるけど、何度も来てる江ノ島がそれを肌で感じられる場所なんて、いままで気付かなかったなぁ。


 みんなでわいわいがやがやも楽しいけど、こういうのもなんだかいいな。


 さて、そろそろお食事処に戻らなきゃ。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 約2ヶ月ぶりの更新となり、いつも長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。

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