最適解の勇者
目を開けた瞬間、理解した。
ああ、これは異世界転移だ。
白い空間。
身体の感覚の希薄さ。
どこからか聞こえる声。
『能力を選択してください』
『制限時間は二十秒です』
短い。
だが、迷わない。
視界に浮かぶ能力群を、流し見する。
剣術強化。
身体強化。
魔力増幅。
耐性付与。
回復促進。
知識が、即座に順位付けをする。
三つしか選べないなら、答えは決まっている。
一つ目。
《魔力総量増幅》
二つ目。
《身体能力の恒常強化》
三つ目。
《状態異常耐性》
攻撃特化は、いらない。
生き残れなければ意味がない。
『能力選択を確認』
了承。
落下。
重力。
石の床。
王の間。
すぐに状況を把握する。
水晶。
測定。
ランク付け。
選別。
ここまで含めて、テンプレートだ。
側近が水晶を差し出す。
触れた瞬間、言葉が理解できる。
「能力は?」
「三つです。」
即答。
「内容は?」
「魔力増幅、身体強化、状態異常耐性。」
側近の目が、わずかに細くなる。
水晶が、光を放つ。
今までとは明らかに違う輝きだ。
王が、身を乗り出す。
「ランクは?」
側近が答える。
「高位。即戦力です。」
周囲が、ざわつく。
優越感が、胸の奥に広がる。
ああ、当たりだ。
今回は、当たりを引いた。
王が言う。
「勇者よ。魔王討伐のため、力を貸してもらう。」
「はい。」
迷いはない。
地球に帰れるなら、やる理由は十分だ。
だが。
王は、続けてこう言った。
「その前に、一つ確認がある。」
側近が、水晶を掲げる。
「貴殿の魔力は、召喚に適している。」
嫌な予感がした。
「次の勇者を呼ぶには、これだけの魔力が必要だ。」
理解が、追いつく。
水晶が、魔力を吸い始める。
一気に。
止まらない。
「……待ってください。」
言葉は、通じている。
だが、誰も止めない。
身体強化が、意味を失う。
魔力が、抜けていく。
耐性が、剥がれていく。
力が、能力が、削ぎ落とされる。
水晶は、眩く輝く。
側近が、静かに告げる。
「役目は終わりです。」
「は?」
理解した瞬間、首に衝撃が走った。
床に倒れながら、最後に見えたのは、
次の召喚陣が光り始める光景だった。
強かった。
しかし、最強ではなかった。
だから、切られた。




