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次の勇者を召喚します。  作者: P4rn0s


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3/6

逃げた勇者

光の中で、彼は即座に選んだ。


一つ目。

《身体変質》


二つ目。

《危機察知》


三つ目。

《自己再生》


戦うための力じゃない。

生き延びるための力だけを選んだ。


『能力選択を確認』


次の瞬間、嫌な感覚が走った。


まだ何も起きていない。

それでも、確信だけが先に来る。


──ここにいたら、死ぬ。


落下。


石の床。


王の間。


視界に人影。

水晶。

玉座。


危機察知が、叫ぶ。


刃。

拘束。

処理。


まだ誰も動いていないのに、

「結果」だけが、はっきりと見えた。


側近が前に出て、水晶を差し出す。


触れた瞬間、意味が流れ込む。


──魔力を注げ。

──測定を行う。


同時に、別の未来が見えた。


水晶が光り、

王が手を振り、

首が落ちる。


確定している未来。


彼は、能力を告げなかった。


床を蹴る。


叫び声。

剣が抜かれる音。


身体を変質させる。


皮膚が硬化し、骨格が歪む。

人の形が、崩れる。


刃が肉を裂く。

だが、自己再生が追いつく。


城を抜ける。


夜の街。


路地。

家々。

灯り。


危機察知が、止まらない。


ここも、安全じゃない。


人々が、逃げない。


こちらを見る目は、恐怖じゃなかった。


殺意だ。


誰かが叫ぶ。


「勇者じゃない!」


その瞬間、全てが繋がった。


王は、教えている。

式典で披露された勇者以外は、異物だと。


鍋。

包丁。

石。


一斉に、向かってくる。


逃げる。


だが、魔力が減っている。


変質が戻らない。

再生が遅れる。


倒れる。


何度も殴られ、刺される。


死なない。

だが、動けない。


そこへ、足音が重なった。


整った足並み。

兵士。


そして、側近。


彼は、慣れた手つきで水晶を取り出す。


触れられた瞬間、理解が戻る。


「回収対象だ。」


淡々とした声。


水晶が、魔力を吸い始める。


一気に。


能力が、剥がれていく。


危機察知が、静かになる。

自己再生が、止まる。

身体変質が、ほどけていく。


ただの、人間に戻る。


側近は、水晶を掲げた。


十分に光っている。


「これで足りる。」


次の瞬間、剣が振るわれた。


街の人々は、もう見ていなかった。


役目は終わった。


彼は、最後まで正しかった。


危機に気づき、逃げた。


それでも、

この世界では、それだけでは足りなかった。

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