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君と暮らす5110日  作者: 中原 誓


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虚無を飼う?

 子犬を見に行ってから一週間後の週末を、引き取り日に決めた。



 年明け、まだ子犬が決まる前から、私と夫は休日の度に少しづつ犬の住む場所を作っていた。

 前の犬達が子犬の時は同居の義母がいたので、最初からリビングで放し飼いだった。ハウスとしてのサークルもあったが、入口は開けっ放し状態。

 今度は夫婦2人、しかも共働きとあっては、日中、子犬にはサークルの中にいてもらわなければならない。市販のケージを置いて『はい終了』とはいかない。

 結果、家具を動かして場所を確保し、フロアマットを敷き、今まで使っていたサークルに百均のメッシュパネルを継ぎ足し、家具や壁に接する面を冬場に使う窓用断熱マットで囲うという大事業に発展してしまった。

 出来上がったものは、柴犬でも飼えそうな広さのサークルだった。

 どうよ、と仕上がりを画像に撮って娘に送ったなら、『虚無を飼ってる人みたい』という返信が来た。


 改めて見ると、主のいないサークルの眺めはちょっと不思議な光景だ。

 犬用玩具のポップな色合いがそれをさらに助長している。


 同じ画像を息子に送って『虚無を飼ってる人に見えるって』と言ったら大ウケしていた。



 そんな無人(無犬?)のサークルにもやっと主が入る。

 当日バタバタするのも嫌だから、子犬を迎えに行く数日前にサークルの全面にペットシーツを敷いてみた。

「こんな感じかなぁ」

 まあ、こんなもんだろう。と、仕事に行って帰って来た夕方の事、サークルの隅に敷いたペットシーツが汚れているのに気が付いた。


 あっ、オシッコしたんだ――何の違和感も無くそう考えて取り換えようと近づいた。


 けれどそんな訳はなく、それは夕暮れの光が見せる錯覚だった。


 2代目の犬が亡くなる前、あまり歩けなくなった彼女のために寝床近くにペットシーツを敷いた。けれど、もともとトイレにしていた場所も行くかもしれないからと、そちらにも用意していた。

 そうして使われなかった一枚だったのだろう。

 適当に畳んでしまっていたために、クシャリと軽いしわができていて、犬が使った後のようになっていた。


「なぁんだ、あんた、中に入ってみたの? どうだった?」


 2代目の子に話しかけてみたが、返事があるはずもない。


 あるいは彼女のいたずらではなく、虚無の仕業だったのかもしれない。





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