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君と暮らす5110日  作者: 中原 誓


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ファーストコンタクト

 うちの犬達を買ったペットショップは、ちょっと入りづらい店構えをしている。

 入口は狭く、中が見えにくい。ショーウィンドウに犬・猫を並べるような事もなく、その時々に入口の看板に『〇〇の子犬(子猫)がいます』と書いてある程度だ。

 どこか一見さんお断りな雰囲気がある。


 なぜそこに行くことになったかと言うと、実家の父が『あそこはいい犬を置いている』と言ったからだ。

 なんでもそこのビルの外壁工事に行った際、昼休みに店の中を見せてもらったらしい。(さすが動物好き)

 初代の犬をそこで買い、2代目の犬は店にフードを買いに行った際、ペットショップ側から『いい子がいるんですが見ていきませんか?』と声をかけられたのがきっかけだった。

 キャバクラの客引きみたいだなと思ったが、夫はまんまと引っ掛かかり、後日一人でショップに行って内金を払って来た。

 曰く、『俺の事を覚えていた』。

 やれやれと思いながら、犬用品を買い足して2代目の犬を迎えた。


 その後、職場の先輩の旦那さんもそれと全く同じセリフで犬を買ったと聞いた。

 もっともらしい理由をつける時って、言う事は同じなんだなと、妙な感心をした。




 それから何年も後の話だが、ある日娘が2代目の犬の顔をしげしげと見て、


「お前、キャバ嬢みたいな顔してるね」


 と、言った。

 目の縁がアイラインを入れたように黒くて、まつ毛がバチバチに長かったかららしい。

 うちに来た時の経緯(いきさつ)を思い出して、思わず噴き出してしまった。




 さて先週のこと、そのペットショップから電話が来た。

 子犬が元気で店に着いた事、誕生日から法定の日数を越えたら会いに来ても大丈夫という事だった。

 『この日に行きます』と予約を取り付けて、仕事帰りに夫と子犬に会いに行った。


 黒い! 小っさい! 動いてる!


 初代の犬は、短毛種(スムース)とワイヤーという硬い毛のダックスの間に生まれたスムース寄りの子だった。

 一方、新しい子犬もスムースとワイヤーの子だが、こちらはワイヤー寄りのようだ。毛が少し長めで口の周りの毛がモシャモシャしている。


 感じたのは喜びだった。


 前の2匹を迎えた時は想像さえしていなかった。いずれ来る別れの日のことを。

 今は経験して分かっている。今も痛みにも似た気持ちがある。


 それでも、思うのだ。


 さあ、一緒に暮らそう。



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