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君と暮らす5110日  作者: 中原 誓


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ペットの名前

 まだ私が犬を飼っていなかった頃、職場の先輩から言われた事がある。


 『犬に適当な名前をつけてはいけない』


 なぜならば、動物病院に行った時、苗字付きで名前を呼ばれるからだそうで。

 例えば私が『トンチンカン』という名の犬を飼っていたとしよう。その場合、間違いなく窓口で呼ばれる。


「中原トンチンカンちゃん。診察室へどうぞ」


 そして動物病院では、飼い主の事を『お父さん、お母さん』と呼ぶ。よって、私は『トンチンカンちゃんのお母さん』と呼ばれる事になるわけだ。


 それはそれで可愛いんじゃないかと思ったけれど。



 うちで初代の犬を迎えた時は、当時小学生だった息子に名前をつけてと頼んだ。

 彼はちょっと考えて『インターセプター』と言った。


 いやそれ、ロールプレイングゲームに出てくる犬だよね? カッコいいけどさ、ばあちゃんも呼べる名前にしてくれないかな? 舌噛むわ。


「うーん、じゃあね……」


 結局、別のゲームのヒロインの名前になった。錬金術でクエストをこなしていくゲームだ。


 2代目の犬の時は娘に頼み、こちらもゲームの中から選んだ。曲に合わせてコントロールボタンを連打する音楽ゲームだった。


 今回の犬の名前は、私が考える事になった。

 我が家の伝統に則ると、ゲームから採らなければならないわけだが、ここは漫画の『夜廻り猫』の中から名前を貰おうと候補をいくつか上げた。後は顔を見てから決めようと思っていた。

 しかし『この子です』と写真を見せられた時に、候補の名前は霧散した。

 横顔が初代の子に似ていたのだ。

 それならと、初代の子の名前になぞらえたものに決めたのだが、その結果、伝統通りゲームから採ったようになってしまった。



 実は、うちには文鳥もいる。


 本当は義母の鳥なのだが、今は私が世話をしている。

 名前は『ピーちゃん』だ。

 きちんと名前をつけた訳ではない、いつのまにかピーちゃんと呼ぶようになっただけだ。だいたい鳥は『ピーちゃん』か『ピーコちゃん』になるのではないだろうか。

 文鳥だから『ブンさん』ってのもありか?


 そしてこの文鳥、大人になってから世話を引き継いだので、やはり白雪姫ごっこはできない。今後、手乗りの鳥を育てたとしても、私の白雪姫時代は過ぎてしまった。

 今は悪いお妃様から魔法使いのおばあさんへと、絶賛爆進中だったりする。




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