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家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら  作者: 琴子
番外編

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首に噛みつかれる話(コミックス5巻発売記念)

コミックス5巻が発売記念の学生エルジゼです。時間軸はふんわり考えていただければ……!



 じりじりと照りつける日差しから逃れるように、頭上に手をかざす。


「わ、今日も暑いね。日焼けしちゃいそう」

「…………帰る」

「ええっ、まだ教室にも着いてないよ!」


 夏休みが明けても連日気温は高く、暑いのが苦手らしいエルはずっとぐったりしている。


 わたしも暑いのは得意ではなく、少しでも涼しくなることを期待して長い髪をアップヘアにしていた。首周りが全て出るよう、髪はすべて丸くまとめている。


「こんなしょっぼい魔力量じゃなかったら、辺り一体凍らせてやんのに」

「もう、怖いこと言わないで」


 パタパタと手でエルを仰いであげながら、苦笑いを浮かべる。


 とにかく少しでも工夫をして、猛暑と言われている今年の夏を乗り切ろうと気合を入れた、けれど。




「おい、髪解け」

「えっ?」


 昼休み、エルと2人で昼食を食べようと庭園のガゼボに移動してすぐ、何故かそんなことを言われた。


 これまでエルに髪型について言及されたことはなく、驚いてしまう。


「どうして? 暑いしもう癖もついちゃってるから今日はこのままでいるつもりだよ」

「いいから解けって」

「ええっ」


 エルはどう見ても不機嫌で、訳が分からない。今日は不器用なりに上手に結うことができて、みんなに褒められて嬉しかったのに。


(確かに今日、ちらちらと視線は感じたけど……)


 それでも褒めるどころか苛立った様子で「解け」なんて言われると、こちらもむっとしてしまう。


「俺はお前を見──」

「とにかく、絶対に解かないからね」

「は?」

「もうご飯食べよう? 昼休み終わっちゃうし」


 これ以上、変な空気になりたくなくて、お昼ご飯の入ったバスケットを取ろうとした時だった。


「…………っ!」


 突然腰に腕を回されてエルに抱き寄せられ、首元に顔を近づけられる。そして柔らかな唇の感触の後、ちくりとした痛みが走った。


「エ、エル、待って」

「黙ってろ」


 抵抗しても離してはもらえず、数回痛みを感じたところで、ぱっと解放される。


 一気に顔に熱が集まるのを感じながら、首筋を手で覆い、エルから離れるように後ろに飛びのいた。


「な、ななな……何したの……!? 噛んだ……!?」

「そんなとこ」

「な、なんで……?」

「さあ?」


 どうして急にそんなことをするのか、さっぱり分からない。心臓は早鐘を打ち、もう夏の暑さなんて気にならないくらいに全身が熱くなる。


「ほら、さっさと飯食うぞ」

「ええ……?」


 その上、なぜかエルの機嫌は元に戻っていて、なおさら頭の中は「?」でいっぱいになった。


 ◇◇◇


 それから数時間後、わたしはエルの部屋で顔を真っ赤にして、エルを睨んでいた。


「ど、どうしてこんなことしたの……!」

「ようやく気付いたか。遅かったな」


 恥ずかしさと怒りで震えるわたしを他所に、エルは呑気な顔をして本を読んでいる。


「わたし、気付かなくて今日ずっとこのままだったんだよ!? ぜ、絶対に色んな人に見られた……」


 そう、エルは首筋にキスマークをつけたらしい。最後の授業終わりに気づいたリネに指摘された時には、声にならない悲鳴を上げた。


 みんなわたしを見ては気まずそうに目を逸らしている気がしていたけれど、そんな理由だったなんて。


 それからはもう髪の毛がぐちゃぐちゃだなんて気にせず、解いて隠し続けて逃げ帰り、今に至る。


「ひどい! 恥ずかしくてもう学校いけないよ……みんなわたしから目を逸らしてたもん……うう……」

「やったじゃん」


 動揺と恥ずかしさでいっぱいになるわたしを見て、エルは楽しげに口角を上げている。


「お前のこと、どいつもこいつもじろじろ見るからムカついたんだよ。しかもお前は解かないとか言うし」

「えっ?」


 話を聞いてみると、髪をあげたわたしの首筋を他の男の子たちが見ているのが気に食わず、髪を解けと言っていたらしい。


「そんなこと、言われないと分かんないよ」

「言おうとしたのに聞かなかったんだろ、バカ」


 エルは呆れたように肩を竦めると、わたしの腕を引いて隣に座らせる。そしてわたしの髪を手で避けて首筋に視線を向け、満足げな笑みを浮かべた。


「いいじゃん、俺のって分かりやすくて」

「お、俺のって……」

「違うわけ?」

「……違わなくは、ない、けど……」


 そう口籠ると、エルは子どもみたいに笑う。そんな笑顔を見るとわたしが何も言えなくなることを、エルは分かってやっているのだろうか。


「これに懲りたら今後は気を付けろよ」

「……エルって本当にやきもち焼きだよね」

「は、言っとけ」


 今回のは恥ずかしすぎたものの、エルがやきもちを焼いてくれるのは嬉しかったりする。もちろん、口に出しては言えないけれど。


 エルのせいでずっと体温は上がりっぱなしで、早く秋が来ることを祈らずにはいられなかった。


本日、鷹来タラ先生によるコミックス5巻が発売です!


挿絵(By みてみん)


見てください、この幸せと尊さとときめきと愛情に溢れた最高のエルジゼイラストを……(号泣)

Xではこちらのアクリルパネルが39名に当たる神キャンペーンもやっております(X:@kotokoto25640)


本編は初めてのキスからの学園祭のところでもうエルの糖度が大爆発しており、絶対絶対絶対絶対読むべきな最高の漫画にしていただいております。神です。

間違いなく後悔しないどころか人生が豊かになる一冊なのでご購入、どうぞよろしくお願いします!


マシュマロのリクエスト「エルがジゼルに嫉妬してキスマークを付けちゃう話」でした。すてきなリクエストありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 5巻発売おめでとうございます!!♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪ 同時にSSありがとうございます!! ブレないエルジセ、幸せな時間(時代)のストーリーありがとうございます!!
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