表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら  作者: 琴子
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/88

ふたりずっと一緒に



 エルが戻ってきて、数日が経った。


「……あの、わたし、明日も仕事だしそろそろ寝ないと」

「行かなくていい」

「もう」


 そんなことを言うエルは今も、わたしを後ろから抱っこするような形でしっかりと抱きしめてくれている。


 口調は相変わらず素っ気ないものの、あれからずっとこうしてべったりとくっついてくるのだ。もちろんとても嬉しいけれど、恥ずかしくもあった。


「俺が養うって言ってんのに、なんで働く必要があるわけ」

「気持ちは嬉しいけど、仕事は辞めないからね」

「クソバカ、アホ」

「ふふ」


 相変わらず子供っぽいところにも、ホッとしてしまう。わたし達とは違い、エルはあれからほとんど時間が経っていないから当たり前なのだけれど。


「エルはこれからも神殿でお仕事をするの?」

「次の大魔法使いが現れるまでは、そうなるだろうな」

「……つぎの?」


 大魔法使いというのは、一人だけだと聞いている。だからこそ不思議に思い、わたしは振り返ってエルを見上げた。


「大魔法使いとしての力を、封印で使いすぎた」

「…………?」

「そのせいで、全盛期よりも力は格段に落ちてる。まあ、それでも今は俺が一番の魔法使いに変わりはないんだけどな。そのうち俺を超える奴が産まれてくるはずだ」

「そう、なんだ……」


 そんな仕組みになっているなんて、知らなかった。


「つーか急いで帰ってくる為に色々と犠牲にしたのに、7年も経ってた俺の気持ちが分かるか」


 とは言え、そうしていなかった時のことを考えると具合が悪くなるけどな、とエルは苦笑いを浮かべている。色々なものを代償にすることで、より強い力を得たのだという。


 けれど犠牲という言葉が引っかかり、不安になるわたしを見てエルは「だから、大丈夫だって」と笑った。


「その色々って、なに?」

「属性魔法が2種類使えなくなった」

「えっ」

「まあ、他にもいくつか使えるし大して困らない」


 エルはほとんどの属性が使えると言っていたから、2つくらい使えなくなってもさほど困らないのかもしれない。一番得意だという氷魔法も無事らしい。


 けれど、次の瞬間告げられた言葉にわたしは息を呑んだ。


「あとは寿命を削った」

「じ、寿命って……大丈夫なの?」

「ああ、余分な分を使っただけだ。これからは俺もお前と同じペースで老いるし、普通の人間と寿命も変わらない」

「……うそ」


 まるで大したことでもないように、エルはそう言ってのけた。視界が、じわじわとぼやけていく。

 

「何だよ、その変な顔」

「だ、だって……」


 エルには長生きして欲しいと思うけれど、実はわたしだけ老いて、先に死んでしまうことを不安に思っていたのだ。


 だからこそ、エルと一緒に歳を重ねていけることが何よりも嬉しくて、思わず泣きそうになってしまったのを堪えていたら変な顔だと笑われてしまった。


「本当に、いいの……?」

「ああ。お前がいないと、意味ないし」


 相変わらず素っ気ない言い方だけれど、彼にとってはきっと、最上級の愛の言葉のような気がした。


「……っエル、大好き。ずっとずっと、一緒にいようね」

「当たり前だろ、バカ」


 本当にエルらしいと思いながらも、ぽろぽろと泣き出してしまうわたしをエルはきつく抱きしめてくれたのだった。



いつもありがとうございます!完結時にいただいた沢山の感想も本当にうれしく、大切に読ませて頂きました。


そしてタイトルの通り、こちらの作品のコミカライズが決定いたしました……!!(;_;)エルとジゼルの世界がまだまだ広がっていくこと、本当に本当に嬉しく思います。


今後も書籍化、コミカライズについてのお知らせは活動報告やTwitter(@kotokoto25640)にでお知らせいたします。

引き続き、よろしくお願いいたします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コミカライズまで…2人の甘い恋の奇跡をビジュアルとしても楽しむ事ができるとは…いやはや楽しみですなぁ
[一言] 今更ながらですが。 このお話、本当に好きで何度も何度も読み返しても大好きで、 何というか、子供の頃から好きで仕方なかった童話みたいな位置づけにいるお話です。 完結する前から読んでいたのに…
[一言] ツンデレなエルさんに惹かれていっき読みしました。 初めてとは思えないとても読みやすい文章で楽しく読ませていただきました。寿命のことにも心配していたので2人で一緒に同じ時間の流れを感じることが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ