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元奴隷騎士アンジェリカの華麗なる転職  作者: F式 大熊猫改 (Lika)


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第十一話

 リッスさんのアランセリカツアーも佳境だ。ヌチョさんは滅茶苦茶真剣に聞いているが、私は正直眠くなってくる話ばかり。


「ヌチョさん、これいつまで続く感じですか?」


「なんだい? アンジェリカにはまだ早かったかな? ウフフ」


 めっちゃ目がキラキラしてる……すっごい楽しそう。リッスさんもそんなヌチョさんに答えようと、凄い張り切って説明してくれている。アカン、私は限界だ。


「ヌチョさん、私ちょっと外の空気吸ってきます。ごゆっくりどうぞ」


「あらら、そうかい? じゃあ僕はもう少し見ていくよ」


 一人洞窟を抜ける。なんというか、ここが潜水艦の中だと忘れてしまう。空気も籠った感じしないし、普通に海辺の村のような雰囲気。というか海があるのはどういう事だ。


 そのまま一人で海? の方へ歩いていく。リッスさんのような大きなリス達が、魚釣りをしていた。潜水艦の中で魚釣りって出来るのか……初めて知った。


 と、その中に黒いシルエットのごつい男が混じっている。リスに混じって釣りをしている男。


「ヴェルガルド……何してるんですか」


「あ? なんだ、お前には俺が逆立ちしているように見えるのか?」


 そんな事言ってない。


「働かざる者、食うべからずってな。お前等の分も俺が釣っておいてやったからな」


「貴方……なんでそんな呑気なんですか。私達、今結構深刻な状況だと思うんですけど」


「だからって何しても変わらないだろ。だったら釣りをするに限る」


 何故?


「それに、お前が眠っている最中にこの中を練り歩いてみたが、俺達が乗ってきた船の残骸は見当たらなかった。問題は再浮上した時にそこに船があるかどうかだ」


「ほら! 深刻じゃん! 船無かったらそのまま泳いでアーギスまで行くつもり!?」


「まあ、大丈夫じゃねえかなぁ。俺の部下だって何度も修羅場は超えてる。あらゆる可能性を考慮して判断する筈だ。俺達がこの中に居るってことも、奴らなら……」


 いや、巨大魚だと思われてた物がじつは潜水艦で、その中に居るなんてどんな名探偵でも分かるわけないでしょ! あかん、なんとかしないと……私は泳げないし、海の真ん中に放り出されたら藻屑になる未来しか見えない。


「むむ、どうやらお困りのようむ」


 一瞬リッスさんかと思ったが、別のリスだ。リッスさんより、すこし太っちょのリス。


「再浮上した時に乗る船に当てが無いむ? それなら、ラスティナに頼むといいむ」


「……ラスティナ? どこのリスですか?」


「リスじゃないむ。君達と同じ人間む。でもちょっと……問題アリアリの子で、かれこれ一年くらい引きこもってるむ」


 人間? 私達の他にもこの潜水艦に攫われたのが居るのか。


「で、その子が居るとなんとかなるの?」


「ラスティナは魔法使いむ。三大賢者の一人だとか……それって美味しいむ?」


 ヴェルガルドの顔色が変わった。さっきまでニヤニヤしながら水面を眺めていたのに。


「三大賢者……? 一年もこの中に引きこもる賢者様が居るとはな」


「貴方、知ってるの?」


「超簡単に言えば、アーギスで最も優れた魔法使い達だ。このくらい常識だぜ」


 うざい。


「外ではドンパチやってんのに、一人だけ引きこもるか。臆病な賢者様も居たもんだ」


「それで、そのラスティナって子は何処に?」


「ここから見える、あの丘の上む。一軒ポツンと黄色い屋根が見えるむ? あの家に引きこもって……かれこれ三週間くらい姿見てないむ」


 もう餓死してるんじゃ……


「なので、これからご飯を作るからラスティナを引っ張り出してきて欲しいむ! 美味しいご飯を皆で囲むむ!」


「わかりました、私もお腹すきましたし……」


 



 ▽





 丘の上の黄色い屋根の家。木造の可愛い家ではあるが、何か変な匂いがする。焦げ臭いような、甘い香りのような……良く分からない。


「ごめんくださーい」


 一応扉をノック。予想通り返事は無い。代わりに、何か物凄い音が聞こえた。何かが割れる音と、ドタンドタン転がる音。転んでしまったのだろうか。


 ドアノブに手をかけ、そのまま遠慮なく捻って開け放った。

 鼻が曲がるかと思うくらい、異様な匂い。この匂い……まるでヌチョさんがヌチョヌチョにされた時の、あの植物の匂いに少し似ている。


「すみませーん、ラスティナさーん?」


 家の中に入ると地下へと続く階段がある事に気付く。どうやら、この下にいる様だ。謎の匂いはここから溢れてきているみたいだし。


「入りますよー」


 階段を降りた先……そこは真っ暗で何も見えない。地下だから当然窓もなく、換気など当然出来ないのに酷い匂いだ。机の上には怪しいカラフルな液体が入ったガラスの器が散乱している。


「ラスティナさーん」


「誰……?」


 ようやくそれっぽい声が聞こえた。声がした方を見るが、真っ暗で何も分からない。でも誰かが居るのは分かった。


「あの、貴方を読んで来いってリスに言われて……」


「ひぃ! 帰って! あのリス、私の嫌いな牡蠣を食べさせようとしてくるんだ!」


 まさか引きこもってる理由ってそれか。


「そんな事どうでもいいので、とりあえず……」


 だんだん目が慣れてきた。机の上にランプがあるのに気づき、ついでにマッチもあった。

 私はランプに灯りを。そのまま目の前の人物を照らすように。


「ラスティナさん?」


 金髪の可愛らしい女性がそこに居た。歳は私より少し上くらいだろうか。

 私がランプを翳すと、ラスティナさんは一瞬眩しそうに顔を手で塞ぎつつ、薄目でこちらの顔も確認してくる。


「……? え? 教皇陛下……?」


 ん? なんだって?


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 何故、なんでこんな所に陛下が! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! こんな所に閉じこもってごめんなさい! でもこれには深い理由があるような無いような、どちらかと言えばアリよりの無い方向の……!」


 それ、無いじゃん。


 というか私の顔を見てビビリ散らかしている。そうか、私の顔はアーギス連邦のお姫様と同じ顔なんだ。いや、でもなんで教皇陛下……?


「あのー、そろそろ外に出ませんか。リス達が美味しい料理を作ってますので……」


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」


 何故怖がる。ご飯があるって言ってるだけだぞ。


「とても天気も良く……」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「あいうえお」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 私が言葉を発すると怯える生き物らしい。もうここに閉じ込めておこうかな……。


「ところでこの匂い……なんなんですか? ここで一体何を?」


 怯えるラスティナさんらしき人物。私はガラスの入れ物に手を伸ばすと、途端に飛びついてきた。


「駄目ですぅ! 陛下! お気を確かに!」


「いや、なんなの!?」


「これは……惚れ薬なんです! 私が開発しました! これさえあれば、私はモテモテに!」


 何言ってんだコイツ。


「私がモテモテの間に、陛下はあの方と一緒になってください! それでこの国は救われます、我らがグランドレア王国は救われるのです!」


 ……グランドレア? 何処の国?


「あの、すみません……ラスティナさん?」


「はい、陛下。ラスティナ・ベルサは私でございます」


「三大賢者?」


「ははっ、その通りでございます。グランドレア王国の三大賢者の一人、歌姫の異名を持つラスティナでございます」


「……アーギス連邦の人だよね?」


「……なんですか、それ」


 微妙な所で話が嚙み合わない。アーギス連邦を知らない? そんな馬鹿な。あの大国を知らないなんて、小指を動かしたら薬指まで動いてしまう事を知らないも同義だ。


「とりあえず、外に出ましょう。ここは空気が悪すぎます」


「ははっ、陛下!」


 もう面倒くさいから陛下ってことにしておこうか。

 いやいや、ヌチョさんに誤解を解いてもらおう。私では言葉足らずになりそうで、新たな誤解が生まれそうだ。


 そのまま家から脱出。ラスティナは……私より背が小さい。今気付いた。


「陛下? 少し背が大きくなりましたか?」


「いいからこっち来て。もう何日もご飯食べてないんでしょう?」


「ご飯なら食べてましたよ。あの惚れ薬、なんか一口でお腹一杯になっていい感じなんですよねぇ……」


 何故かは分からないがコイツはもうダメだ。早く何とかしないと……という気分になってくる。

 正直、あまり関わりたくない人種だ。


 そのままヴェルガルドやリスさんがいる浜辺へと。すでに火が起こされており、何やらいい匂いが。

 そこにはヌチョさんも居た。アランセリカツアーは無事に終わったらしい。


「ヌチョさん、もう解放されたんですね」


「何がだい? とても魅力的な時間だったよ。はて……そのお嬢さんは?」


「あ、こちら……三大賢者のラスティナ……」


「へいかぁぁぁぁぁ!」


 いきなり私の前に出てくるちびっ子、ラスティナ! 


「いけません陛下! こんな顔のいい男と関わってはいけません!」


 顔がいい、と言われてヌチョさんはまんざらでも無さそうだ。なんかイラっとする。前髪整えないでください。


「そうだぞアンジェリカ。顔のいい僕には関わらない方がいい」


「ヌチョさんは黙ってて。ラスティナ、とりあえず、まともなご飯を食べて」


 ヴェルガルドとリスが貝やら魚やらを焼いていた。思わずお腹の音が盛大に鳴り響きそうだ。

 

「さあ、できたむ! 僕の特性手料理、食べてくれむ!」


 大皿に盛りつけられたその料理。大きな魚のお腹を割って、野菜やその他の穀物を詰めているようだ。なんかチーズが物凄く食欲をそそらせる。


「ラスティナ、こっちに来て食べるむ。君全然食べてないんだからむ」


 強制連行されるラスティナ。しかしお腹は空いていたらしく、一口食べるとモリモリ食べだした。初見は私より年上だと思ったが……いや、確実に歳は上だろう。見た目が幼いだけで。


「あの、ヌチョさん。グランドレアって国知ってますか?」


「あぁ、知ってるよ。アーギス連邦の元となった三つの国の内の一つだね」


 そうなんだ。


「でも珍しいね。君からその国名が出てくるなんて。何処で聞いたんだい?」


「ラスティナが言ってたんです。自分はグランドレアの三大賢者だって」


「ははは、歴史に詳しいのかな。話が合いそうだ。よくそんな古い事知ってるなぁ。文献がやはり帝国より充実してるのか。アーギス連邦羨ましいな……」


 古い事……?




「あの、グランドレアってそんな古い国なんですか?」


「あぁ、古いって言っても……五百年くらい前の話だよ。アランセリカに比べればまだまだ新しい方さ」





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