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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
97/363

96.海の集団戦

 自分をはじめ戦闘員は砂浜で留守番。


 他の人は大きな船に釣りおじさんを乗せて、沖合いに向かってしまった。


 ここのレギオン級は、何でもあの小判鮫を狙ってこの辺を回遊している事が多いらしいが、なにぶんサイズが大きいので、沖合いからこっち迄誘導するのだとか。


 よくまあそんな迂遠な方法が思いついたなと思ったが、色んな釣りNPCに話を聞いて回っていると大物情報って言うのが結構あるとの事で、


 しかも陸地より海の方が大物情報が出やすいと言うのだから、最強を自負する嵐の岬からすれば、いい狩場って事になるのかな。


 砂地で船が戻ってくるのを待っていると、いつだか一緒に怪鳥を倒した女の子が、


 「ほら!来るヨ!」


 言われて海岸線に目を凝らすとどんどん近づいてくる船影。しかし敵はまだ海中なのか姿が見えない。


 あっという間に船が近づける限界までやってきて碇をぶん投げて、小船で島に上がってくる面々。


 釣りおじさんもせわしなく、砂浜に辿り着くや否や大きな船の近くに小判鮫をくっ付けた針を投げ込む。


 あっという間に大きくしなる竿を一気に立てる釣りおじさんは術士のはずなのにどこにそんな筋力があるんだか?


 海中にいた巨大生物の姿が海上に現れる。


 それは大きな塔にしか見えない細長い巻貝。


 形状はランスだが、サイズがもう建物でしか表現できない。言ってみるならピサの斜塔が海から引き上げられたとしか言いようが無い。


 そしてそのまま強引に砂浜まで単独で吊り上げてしまう釣りおじさん。意味が分からない。


 細長い巻貝の下には蛸ともイカとも言えない、アンモナイト?オウムガイ?みたいな触手だらけの生き物。


 「どう攻略したらいいか分かりませんが『行きます!』」


戦陣術 激励


 まずは士気を高め、戦闘配置。


 敵のメインの攻撃は触手を使った叩きつけと巻き取り。


 こちらは重量系を揃えて前衛を構築したいところだが、どうやら【海国】のプレイヤーは比較的軽装が多い。


 必然的に自分とバルトさんが前に立つことに……。


 「ソタロー!全隊の把握は俺とアンがいるから、戦闘に集中してていいぞ」


 アンデルセンさんから声がかかり後方を確認すると、確かにアンデルセンさんと話した事のない女性プレイヤーがやや小高い位置に待機している。


 ではやりますか!


壊剣術 天荒


 伸びてきた触手を一本思い切り斬りつければ、それによって出来た隙間にバルトさんが入り込み、両手持ちの大剣で、思いっきり細長オウムガイを殴りつける。


 術か武技が乗っていたのか、塔の様なサイズの敵にも十分通用している。


 しかし、バルトさんの装備、明らかに体長くらいある大きなサイズの剣を振り回すなんて、ファンタジーが過ぎるんだけど、自分が地味なのかな?


 でもよく考えればビエーラさんも明らかにおかしなサイズのボウガン使ってたし【狩人】プレイヤーは割りとこういうのありなのかな?


 嵐の岬の面々は大よそ軽装だが武器は様々好きな物を使っているようにしか見えない。


 中には銛装備の人もいるが、やっぱりでかい。しかもそれを投擲武器のように投げつけてるんだから意味が分からない。


 うん、集中しよう。


 兎にも角にも最前は自分とバルトさん。ダメージを最小限に抑えつつ、皆の攻撃チャンスを造るのが仕事だ。


 ひたすら攻撃を捌く事に集中していると、伸びてきた触手を再び斬ろうと剣を振ったら空振り、


 何故か敵がこちらに背を向けるので、逃げるのか?と思ったら……塔のような貝殻がこちらに倒れてきて、中央に陣取っていた嵐の岬の面々がいきなり壊滅状態。


 軽装ゆえの逃げ足で何とか逃げた者は吹っ飛ばされ、下敷きになった者は残念ながら死に戻り。


 意外に被害が少なかったのは前線に出て直接殴ってた接近組。


 「とにかく生き残った奴らの回復を急ぐから、接近組は何とか保たせてくれ!」


 アンデルセンさんからの指示に、無事だった者達は苛烈な攻撃を開始。


 コレまでの様子を見ながらどこかペース配分をしていた状況とは打って変わり、敵に隙を与えないようにテンポよく大技をぶつけていく。


 「攻撃力が上がる術を使いますがスタミナの消費が激しいので気をつけてください『行きます!』」


戦陣術 激励

戦陣術 奮闘


 これで、一気に全員の攻撃力や攻撃の回転速度が上がり、ダメージの蓄積も増えていく。


 本当は追い詰めるとボスは何をしてくるか分からないので、時間稼ぎには向かないが、ここで立て直せないと結局やられる気がしたので、仕方ない。


 そして、海の方に引く敵。


 しかし今度は振り返るでもなく、こっちを見たまま体半分海に浸かった状態。


 何をして来るんだ?と思ったら、


 「全員固まれ!『防御に集中しろ!』」


 アンデルセンさんからの指示に一斉に砂浜を駆け上がり揉みくちゃになりながらも密集隊形になった瞬間。


 さっきまでカンカンに晴れてた空が真っ暗に……、日差しを隠すのは海からの大津波。


 アンデルセンさんの戦陣術で防御状態になってはいるが、流されないように踏ん張るのでいっぱいいっぱい。


鋼鎧術 耐守鎧


 今持ってる自分の防御術はコレだけなので、あとは耐えるのみ。


 水が引いた時には、何故か自分に掴まってるプレイヤーが沢山いるんだけど、自分が鉄の塊だからですかね?


 しかし、敵は待ってくれない。畳み掛けるように再び倒れこみ。


 即座に盾と剣をその場で手放し、


鋼鎧術 空流鎧


 大急ぎで走って脱出。


 敵が再び貝殻を持ち上げるのに合わせて、自分も剣と盾を拾いに行き、何とか距離を詰めようとするが、海に阻まれて攻撃が届かない。


 敵からすれば浅瀬でも自分達のサイズからすれば、泳がないと届かない絶妙に嫌なポジション。


 「今です!水雷艇!行ってください!」


 アンデルセンさんと一緒にいたアンさん?が指示を出すと、普通の手漕ぎボートに樽を載せて特攻する数人。


 何が起こるのか見ていたら、接敵と同時に爆発。


 乗っていた人は海に飛び込み泳いで帰ってきている。


 次から次へと爆発するボートに押されるように海に戻される細長オウムガイ。


 完全に海に戻り、塔のような貝殻も倒れこみ沈んだと見えたところで、再び釣りおじさんの出番。


 あっという間に釣り上げられ逃げる事も出来ない可哀想な細長オウムガイだが、こちらは弱ったレギオン級を早いところ倒しきりたい。


 ここまで来たらなりふり構わず畳み掛ける。


 全員力の限りを振り絞ってひたすら攻撃。


 触手に巻き取られてしまう者も触手にはたかれ砂浜に沈められてしまう者も出るがかまってはいられない。


 でっかい銛が細長オウムガイの目に突き刺さった瞬間大きく震え、貝の隙間から魔石が露出。


 バルトさんがとどめの一撃を加えて、撃破。


 いつものファンファーレが流れて、


 最多防御


 を貰える事になったが、盾持ちの少ない嵐の岬だから、必然ガード回数は自分が最多になるか。


 手に入った物品は、胴当ての素材。


 一見貝殻の鎧だがかなり薄く体にフィットしそうな形だし、サーコートの下に着ても嵩張らないかも?


 あとはクラーヴンさんにお任せだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 訓練はしているが、経験が少ないソタロー 大人数での戦闘や、戦術の運営の経験は繰り返すしかない でもね、ソタロー 側まで行ける、まして、盾持ちなんだから、はじめは最大限の攻撃…
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