68.新装備注文と新日常
「すみません。先日作って貰ったばかりなのに装備全損しました」
ゴドレンの店に行き、すぐさまクラーヴンさんに謝る。折角丹精込めて作ってもらったのに、もう壊してしまったのだから、当然だ。
「ああ、気にするな。使ってりゃ壊れる事もあるし、鞄の中で死蔵されるよりずっといいぜ。それに装備壊れちまうなんてよくある話だろ」
「そうなんですか?」
「おう、ソタローも<手入れ>持ってるだろ?【兵士】ならよ。それで丁寧に使ってて壊れたんなら仕方ないだろ。旅から帰ってきたあいつも派手に壊してたしな」
「え?旅から帰ったって?」
「知らなかったのか?隊長のやつ帰ってきてるぞ。んで早々にまた任務行ってくるとよ。何とも忙しい奴だぜ。まあいい、それで装備だよな今回は何か希望あるのか?」
「ええ、実は先日手に入れた素材を使いたいと思ってて……」
[軍狼の長靴素材]
[軍狼の筒衣]
[軍狼の冑素材]
軍狼と戦った時の素材をとりだし、クラーヴンさんに渡す。
「なるほどなこの辺りは多少分かる。この筒衣に合わせてセット装備にするのが、いいだろう。だがコレじゃ足りないな。残りの素材をどうするか……」
「その残り素材なんですけど、どうやら今回の任務報酬で国から提供があるみたいなので、それを上手く使って欲しいんですけど」
「何だそういう事か!じゃあ、任せておけ。希望があれば言えばいいが、分からなければ上手く見繕うぞ」
「希望は相変わらず、雪に埋もれずに戦える重装備です」
「だろうな。じゃあその辺り踏まえて多少日数を貰うぞ。装備できるまでは【訓練】なり【古都】内で出来る任務でもこなすんだな」
「そうですね。そうします。よろしくお願いします」
と言う事で、装備依頼は完了。クラーヴンさんに任せておけば間違いない。
しかし、ここで重要なのはいつの間にか隊長が帰ってきたという事。
思わず興奮してしまうが、また任務で出かけたという事だし、
まだ慌てる時間じゃない!
まずは、ガンモに例の祭壇をクリアした事の報告。しかしまだ同様の楔はあるみたいだし、また続報を入れる事を約束しておく。
それにしても楔って言うのはあの瘴気生物の事だよな?
試練は[竜の歯片]を手に入れるものだったし、瘴気生物を倒す為に用意されたクエストだと思うんだよね。
しかし、ちょっと解せないのはアレだけの強敵を倒して、装備も全損したのに何も手に入らないって事。
だからこその国務尚書からの素材供給なのだろうが、特殊装備の一つもないってのは悲しい。
ある意味[竜の歯片]が特殊装備なのかもしれないけど、クエスト用装備みたいだし、おいそれとは使いたくない。
ま!仕方ない!
過ぎた事は置いておいて、次のことを考えよう。
目指すは白竜復活!しかし【古都】はある意味初心者ゾーンみたいな物だ多分。
何しろスタート地点なのだから、もっと強力な魔物はいくらでもいるだろう。
つまり別の場所の楔はもっと強い可能性が十分に考えられる。
しかし、瘴気生物と言うだけあって濃い瘴気の場所に出現するのなら、NPCを連れて集団戦って訳には行かない。
そうなるとやれる事は二つ。プレイヤーの知り合いを増やす事と自分のレベルアップ!
レベルって言う概念の無いゲームだけど、要はもっと強くなるぞ!って意味。
まずは【座学】で白竜や瘴気生物、集団戦についてもっと学ぶ。
何しろコレでも中隊長の称号を持っているので、習える範疇が一気に増えて、頭が痛い。
次に【料理番】でもっと作れる物を増やす!雪の中で立ち往生した時にさり気なく生姜スープを差し出せるようになりたい。
そして【整備】任務、装備を不用意に壊してしまわないように今まで以上に気合を入れて<手入れ>をし、常に最高の状態を保とう!
最後に【訓練】結局己を高める事が、一番大事!ゲームだもん当然じゃん!
「うん、ソタローは随分と急に成長したみたいだけど何かあったのかい?」
「自分なりに殻を破ったといいますか、やる事が決まって気合が入ってるって所でしょうか」
「そういう精神的なことじゃなくて、身体能力がグッと伸びてるみたいなんだけど。成長期って事かな?若いって素晴らしいね!」
「そうなんですか?成長期なんてあるんですね!じゃあ今の内にどんどん伸ばしましょう!」
「うん!いいよ!その気合、熱さ、とても素晴らしい!でも心は熱くとも頭はクールに保つんだ……」
「どういうことです?」
「折角それだけの余力があるんだよ。ここで一つ今後の成長方針を決めようじゃないか。それから重点的にそこを育てた方が絶対効率がいいよ。まあ効率より、思いのまま量をこなす方がいい場合もあるけど、両方やれば?」
「倍伸びるって事ですね!」
「パァァァァァフェクト!すでにソタローの筋力は重剣に盾やフルプレーーートを装備するには十分だ。ではここで何を伸ばすべきか」
「素早さ?器用さ?」
「それもいい!が、僕は別のものを推したい。術だ!確かに最低限の敏捷や正確さは必要だろうが、重量装備の時点で他人よりどうしても劣ってしまうものでもある。勿論、術にしても純粋な術士に比べれば遠く及ばないだろう。しかし、今の戦闘力に上乗せする形で術を使えばかなり戦いやすくなるのも事実」
「なるほど……確かに集団戦でも術は使うし、高めれば有用な気はしますけど、まずは<鋼鎧術>からだって……」
「うん、それは余力が少なかったからね。今なら精神力を一気に高められる。そしてソタローが身に着けるべき術は……」
「なんでしょう?足が遅い分遠距離攻撃とか?」
「それもいいが、ただの術の撃ちあいでは押し負けるのがおちだ。妨害術や自己強化も織り交ぜていくのが吉だろう。なにしろ攻撃力と防御力は十分にあるのだから、あとは距離を詰めるための手札の数がモノをいう」
手札の数か。足が速くならない分、相手の足止めが大事だと、そうなるとどんな術がいいのだろうか?




