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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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66.帰還と変な人

 初心者服と最初のチュートリアルで支給された軍用長靴、アイテムバッグと[竜の歯片]以上が現在の自分の装備。


 魔物でも出てきたら、対応できるのだろうか?


 そうなると、元来た道を戻るとなれば、死に戻るほうが早いかもねって状態。


 そして、さっきの敵の陰になって見えなかった場所に、もう一個通路らしき物がある。


 最早こっちに賭けるしかない。折角死ななかったのだから、何とか生きて帰りたい。


 何か出てきたらその時はその時だ!


 まだ通ってない方の通路に入れば、階段。


 真っ直ぐひたすら長い階段を登りきった先は氷の壁?


 でも氷の壁の攻略法はもう知っている手で触る事!


 シャラァァンと砕け氷片に変わったので、先に進むと大河のほとり?


 しかし絶妙に高い崖。下は深そうな雪だが、落ちて死なないだろうか?


 ……考えても仕方ない!行くぞ!


 思い切って全身を広げて雪にダイブ。せめて体全部で衝撃を受け止めようと思ったが、


 結果ズボッと両手足を広げた、大の字で雪に埋る。


 まあ、今はお蔭様で初心者服って言う超軽量状態なので、あっさり雪から抜け出し、思ったことが一つ。


 物凄い寒い!


 ちょっと尋常じゃない寒さに、何でもいいから着る物はなかったかとアイテムバッグを漁れば、


 [軍狼の筒衣]が有ったので、とにかく着込む。


 いくらかマシだが、まだ足りない。デバフが発生してる。何とかしなければと辺りを見回すと丁度いいところにセーフゾーン。


 大急ぎで焚き火に火をつけて暖を取るが、どうやって帰ろう。


 大河沿いだというのは分かるが、この辺りに村か町はあるだろうか?せめて防寒具を買うか借りるか出来ればいいんだけど。どうしよう。


 途方に暮れていると、人が一人こちらに向かって歩いてきて、何故か声をかけてくる。


 「隣いい?」


 突然声をかけられて、ちょっと驚いてしまったが、ワザワザ断るのもおかしいかと、


 「え?あ?どうぞ」


 と応えてしまう。しかし自分はともかく相手は緊急な様子もないし、何で人がいる所で休もうとするんだろうか?


 しかし、ちょっと変わった服装だな。タイトなコートと言うかローブと言うか。


 フードつきのショートローブって感じかな?皮のブーツとコートの裾の間に見える服もなんか妙にぴったりしてるように見える。


 軽装なので術士なのかな?とも思うが、短めの剣を背中に背負ってる。何か俊敏そうな印象。


 余りじろじろ見ても悪いし、目を逸らすと相手も大河の方を眺めて座り込む。


 「そんな薄着じゃ、寒冷デバフで大変じゃない?」


 「いや、戦闘で装備が壊れてしまって」


 「ああ、そういうのあるよね」


 「お酒は?」


 「いや、未成年なので」


 何か普通に話しかけてくるが、初対面の人にお酒飲めるか聞いてくる人ってどんな人?


 何かちょっと変な人なのかな?でも警戒させてくるような動きはないし、どうした物か。


 さり気なく立ち去ろうにも、今はそれこそ寒すぎてどこに行ったらいいかも分からない。


 どうしよう、どうしようと必死に考えている内に相手の動きを完全に見過ごしていた。


 「はい、生姜は大丈夫?」


 「え?ええ・・・」


 急にカップを差し出してくる相手にどうやって対応すればいいんだ?!


 それにしても随分といい匂いだ。さっきまで祭壇で嫌な臭いに囲まれていた所為か、それとも体力を失っている所為か、単純に疲れてるのか、凄くおいしそうに感じてしまう。


 どうやらカップスープのようだが、相手は気にせずスッと飲んでしまう。


 疑っているわけではないが、毒などが入ってるわけじゃ無さそう。


 まあそりゃそうか、初心者服の人にいきなり毒盛ってどうするんだと、どんな嫌がらせだって話だ。


 どうやら鶏肉と生姜のスープの様だ。調味料なんかは少なめでかなり優しい味に仕上がってる。


 自分もコレくらい料理が出来ればなと思ってしまう。


 相手はさり気なく左手の甲を確認している事から、多分プレイヤーで間違いないだろう。


「飲み終わったカップは投げれば、霊子に代わって消えるから、バフ付いている内に街に入りな」


 そう言って、そのまま雪で埋もれた道なき道をサクサクと軽い足取りで、歩き去ってしまう。


 それにしても歩いてるだけなのに、速過ぎる気がする。あっという間に姿が見えなくなってしまった。


 あっけに取られている内に、お礼を言いそびれたのを思い出して、ちょっと悔いが残るが仕方ない。


 縁があればまた会えるだろう。


 そういえば、バフって言ってたなと<治療士>で自分の状態を確認すると、耐寒バフが付いていた。


 確かにいつの間にか寒くない。


 大急ぎで、近隣にヒトの住んでる場所がないか、探せば丁度いいところに町があったので、最低限の耐寒装備を購入。


 何しろ丸腰なので大河沿いの大きな道を通り【古都】へと急ぐ。


 河鼠位なら蹴り飛ばせば何とかなる。


 そのまま【兵舎】に向かい兵長に報告。


 「何とか生きて戻れました」


 「あ?なんだなんだ?藪から棒に大げさな」


 「いや、祭壇の奥に強敵がいて、装備も何も壊れちゃって……」


 「ああ……やっぱり瘴気生物がいたのか。高濃度の瘴気だしいるとは思ったがな……」


 「え!知ってたんですか?いや、アレは流石にキツイですよ!」


 「いや、だから試練が終わったら一回戻って来いって言ったろうが?」


 あっ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ソタロー]あ……………… 周り]……………ww ソタロー、猪突猛進疑惑確定に? 装備も、武器も溶けたので、作り直しだね~(笑) 戦闘力と、戦力の差を思い知る…
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