表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
349/363

348.【古都】制圧会議

 「何度も言っているように、正面戦闘で雌雄を決するのは構いません!こちらの方が数の上では有利なんですから!しかし【古都】を囲む攻城包囲戦は認められません!」


 「将軍が自身で仰ってる様に数の上では有利なこちらが、何故力押しで制圧してはならないんですか?」


 「いいですか?相手はあの隊長ですよ?味方のヒトが被害にあわなければそれ以外はどうなっても気にしないサイコパスなんですよ!建物も環境も全部犠牲にして敵が最も嫌がることを徹底的にやって抹殺する凶悪な危険人物と戦うという事をもっとちゃんと把握してから作戦立案してください!」


 隊長が元皇帝派についてからというものの、自分の所にやたらと持ち込まれる作戦案だが、大抵力づくのモノばかりで、全部却下!


 今迄散々話し合いと人気取りで上手い事占領してきたのに、何故か今になって大軍で攻め寄せれば!とか言ってくるの、意味が分からない。


 そんな折、宰相に呼び出されて【古都】制圧作戦会議をする事になった。


 「ソタローのいう事もよく分る。相手は仮にも邪神の化身を打ち倒す現代の英雄だ。しかし、その相手を打ち倒さなければ、この乱は成り立たない。このまま手をこまねいている訳にもいくまい?」


 「それは正にその通りです。だから自分は時間を掛けてでも【古都】裏側の山間部を取ることを主眼に置いて作戦行動を進めています。それ以外に【古都】を落とす方法はありません。それは【座学】の歴史の授業でもそう物語られています」


 「しかし歴史通りというのは、それこそ思考が硬直しているのではないか?相手が何をするのか分からないなら、こちらは何もさせぬほどの圧をかけるべきでは?」


 「だからこその山間部制圧なんです。それ以外に制圧の道はありません。何しろ枯渇させようにも隊長が大量の物資を持ち込んでしまったので、まだ当分は篭城を決め込むでしょうから、数を生かした正面決戦は出来ませんし」


 「しかし【古都】の南側は大河、西側は森、東側は山に向う傾斜と、どこからでも攻めるに事欠かないだろう?」


 「事欠きます。【帝国】はどこへ行っても雪だらけ、雪が最大の障壁なんです」


 「そんな事は言われるまでもない。天変地異でもおきない限り、状況は変わらないのだ。やるしかないだろう?」


 「何故ここに来てそんなに慌ててるんですか?」


 「ソタローは勝ちすぎた。想像をはるかに上回る勢いで【帝国】内のあらゆる街や町村を手中におさめ、この内乱はソタローの一人勝ちと言う者も少なくない」


 「自分は戦ってません!なのに勝ちも何もないでしょう?民意がこちらに向いている事を自分の手柄にする気もありません。しかし、【古都】戦に関しては戦わずに済まされるものではないでしょう?ここで、失敗する訳にはいきませんよね?慎重に事を運びつつ、一撃で沈めるその為には早計な作戦ではいけません」


 「当然だ。だが元皇帝があと都一つまで落ちぶれたのも確かなのだ。そうなれば何とかこの内乱で手柄を上げ戦後の地位を獲得したい者達が、逸るのも仕方のないことだろう?」


 「だとしても、軽率な作戦は避けるべきです【古都】の弱点は北側、山側にあります!宰相が焦っているなら、自分も今すぐ出ます!」


 それだけ言って、自分は【旧都】に戻り、自分の隊を率いてカトラビ街に向う。


 そしてカトラビ街兵長に頼み事をする。


 「すみません、ずっと何もかもお任せしてきてしまったのに、もう一つ我侭を聞いてもらっていいでしょうか?」


 「そりゃ、可愛い後輩の頼みを聞きたくて参戦したんだからな。それでどうしたい?」


 「自分達が横を通り抜ける間、攻撃しない様に伝えてもらってもいいですか?街の独立に水を差すつもりはありませんと」


 「分かった。ちょっと待ってな」


 それだけ言って相変わらず飄々と、何の警戒もしてないかのように私服でカトラビ街のトンネルに入っていく。


 行軍中に攻撃されても困るので、こちらは一旦距離を取って食事タイム。


 プリプラに任せて【兵士】達に食事をさせているが、明らかに今までとは見違うほどに質素だ。


 まあ宰相に限らず、宰相派のほぼ全員が気がついている嫌な事実。


 内乱初期に宰相が東部に仕掛けた食糧不足を逆にやり返されている状況、しかもやり返した側の方が意趣返しって言う雰囲気なので、宰相の悪評が際立つ結果になっている。


 行軍は食事が最重要、敵の食料を絶つっていうのが如何に有効な手だったかを身を持って知らされ、一刻も早く【古都】を落とさねばと焦らされるが、まだ我慢の時間だ。


 もう一息で【古都】を落とせるのに、その一息をやたら長く感じていると、兵長が帰ってきた。


 「早かったですね!それで、交渉は上手く行きましたか?」


 「ああ、街ごとこちらについてくれるとさ!」


 「いや、何でですか!今迄ずっと頑なに中立派だったはずなのに!」


 「それが、篭りやすいように最低人数だけ残して、殆どの【兵士】達が出て行っちまった所為で、住民の不安が限界なんだと。だから宰相派からヒトを出して、安心させてやって欲しいんだとさ」


 「分りました……じゃあ」


 「俺が【旧都】に戻って話をつけてこようこっからは交渉じゃなくごり押しの戦闘だろ?俺はやる事なくなっちまうからな」


 「一仕事してもらって早々すみません」


 「いいって事よ。飯だけ食ったら【旧都】に戻るわ」


 カトラビ街の兵長には世話になりっぱなしだが、これで【古都】の裏側、【帝国】最東部の山間部を押さえにいける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ