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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
347/363

346.トラブルの予感しかしない

 「え?あの人帰ってたんですか?」


 定期報告の為に宰相に会うため【帝都】に来たときの事、帝城の守衛をしている【兵士】に声を掛けられた。


 何でも白竜をぶん殴るから会わせろと言ってきたから、追い出したそうな。


 何気にこの守衛の【兵士】は現代の邪神の化身討伐の立役者だった隊長の事は知っていたそうだが、何やら厄介ごとに巻き込まれそうだったので、知らない変な人として対処したそうな。


 そこを宰相に見咎められ、隊長は宰相邸に連行されたという事だ。


 宰相には珍しく手練の護衛を連れていたと言うから、相当警戒していたのだろうが、相手は非常識の権化だ。


 宰相邸が鮮血溢れる殺人現場になってなければいいけど……。


 嫌な予感の所為か、はたまた何時になく冷え込む気温の所為か、一つ身震いして宰相邸へと急ぐ。


 正面から乗り込んだとして、腹黒い二人の論争に巻き込まれて何か言える自信はない。


 片や悪評を一身に受ける覚悟を決めて、悪辣な手を使ってもどの程度の被害が出るか計算済みで実行する宰相。


 片や自由奔放好き放題逃げ放題、やる時は徹底的に相手の弱点を攻めたてて、一切良心の呵責を感じないサイコパス。


 絶対嫌だ巻き込まれたくない!


 そっと、宰相邸に近づき中の様子を窺う。


 だが断熱効果の高い雪国仕様の家は、音漏れにも強いのか、中の様子が全く分らない。


 悪戦苦闘していると、宰相の部下らしきヒトが、中の様子を教えてくれた。


 かなり断片的な内容だが、隊長は民を餓えさせた事に大層ご立腹のようだ。


 確かに食事は大事だし、気持ちは分るが、それで白竜を殴りにきたって言うのは、サイコパスを越えてアホなんだろうか?


 このゲームで自分達プレイヤーは、あくまでヒト範疇の生き物だ。明らかに超越的存在である白竜を殴ってただで済むと思ったのだろうか?


 噂じゃ自分なんかよりよっぽど世界中を巡って色んな存在に出会ったと聞いているが、噂は噂に過ぎない?


 まあでも、宰相と話していると言う事は、こちら側につくのかな?


 食料を放出して民が餓えるのを止めさえすれば、何か機嫌直してこっちで戦ってくれる気もするんだけど?


 でもそうなると、自分が戦う相手が結局いないままか……。


 自分の中に湧き上がる感情を整理できないまま、宰相邸前で考え事をしていると、隊長が出てきた。


 「隊長……随分と遅かったんですね」


 「まあ、こっちの情報が入らない場所にいたからね」


 「どうするんですか?宰相邸にいたって事はこちらに付く?」


 「いや自分は宰相殿に嫌われてたよ。だから取り敢えずは商人と交渉して食料を買い込もうかと」


 「向こうの陣営に持ち込むんですか?」


 「いや、何言ってんの?巻き込まれた民に配るに決まってんじゃん」


 「そうですか、じゃあ自分も付いて行きます。ずっと飢えたヒト達の事は気がかりだったので……それにしても、宰相閣下が隊長を嫌いだったなんて……気が合いそうなのに」

 

 何故か凄くほっとした気持ちで、食料買取に関しては全力で協力しようと気持ちが固まる。


 もし、お金が足りないなら自分も多少は私財を積んでるし、放出しても構わない。


 どうせ装備は整ってるし、欲しい物もないし。


 こういう場合は誰に相談すればいいかな~……取り敢えずイグラントに向かい、受付で大至急食料を扱っている商人を集めたいと伝えた。


 すると、一度は仲違したものの今ではこちらの味方になってくれたイグラント内勤者達が動いてくれて、本当にあっという間に商人を集め、交渉用のホールまで借り切ってくれた。


 なんと言うかこういう手続きに関して自分は何も出来ないので、内勤者達と話し合えて本当に良かった。


 何にも良くなかった……。


 隊長のその後の交渉はひたすらにアコギそのもの。


 すぐに話に乗った商人達は英断と言うか、民達の事を気にかけてた善良なヒト達だったようなので、大いに儲けてもらって良かった。


 問題はその後、まず皇帝に食料を売っていた者達は、隊長が東についた時点で、値崩れするとはっきり言われ、売る他なくなった。


 輸入業で稼いでいる者は、隊長に味方をしないと今後一切儲けが出なくなると脅され、やっぱり売る他なくなった。


 あとは宰相に義理立てする商人達だが、どうやら戦後色々と利権を手に入れる事にになっているらしいので、あとでゆっくりOHANASIしようと思う。


 「ソタロー助かったよ」


 「いや、自分には出来ないことだったので……飢えたヒトを助けてくれてありがとうございます」


 「別にお礼を言われるような事じゃないよ。じゃあ自分は皇帝のところ行くから」


 「隊長はもっとこの国が豊かになったらいいと思いませんか?」


 「思うよ。そしてその方法を自分は持ってる。だから内乱を終わらせて、一旦この国を元通りにしたい」


 「そうですか、それじゃ。自分は自分の方法でやってみます」


 「うん、それじゃあね」


 何かあっさりと道を分かってしまった。


 しかし、ここまで来たらもう戦争だろう。


 隊長と全力でぶつかり合う。血で血を洗う闘争。血が沸き筋肉が疼く。


 やっぱり、ゲーム側は自分と隊長が戦える様に調整してくれたのかな?白竜が戦う相手を用意してくれると約束したんだし……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ソタローが隊長に勝てない最大の理由は隊長をサイコパスだと思ってることだと思うの 能力が突き抜けすぎてるだけで、隊長自体は普通に周りが見えてる人なのに(笑) まぁ、周りが見えない学生で、…
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