341.衝突
バルトさんや赤騎士さんに会ってから、他のプレイヤーの事が気になる。
何しろ今までは自分が発生させてしまったクエストと言う感覚だったので、自分で解決する事しか考えていなかったし、仮に他のプレイヤーが参戦する場合、自分が個人的にお願いする形になると思っていた。
しかし話を聞く限り、他プレイヤーも自分とはまた違った形でこの内乱に参加できるとの事。
何なら自分の敵側につく事も許可されてるのだから、プレイヤー各々の判断でいずれかの勢力に所属して戦争に参加できる
つまりどちらが勝ってもストーリーが進むのだろう。そしてどちらに進むのかは、プレイヤーの手に委ねられている。
じゃあ、自分の立場は?
内乱を発生させるクエストフラグ立てが一つ。
こうして宰相派の将軍になってるし、この内乱を主導する役目もあるだろう。
っていうか、かなり自分有利に進み続けてるこの内乱。元皇帝派に行くプレイヤーっているのだろうか?
あれかな?敢えて劣勢に身を置くのが好きなヒトもいるだろうし、向こうで戦ったからと言って、プレイヤーが処罰されることもないだろうから、対人集団戦をバチバチ楽しみたい人向けクエストなのか?
処罰されないよね?
負けた側は全員処刑!とか……。多分大丈夫!
でもそうなると、負けたほうの処遇はどうなるんだ?
こちらは元皇帝を追い出して、白竜を皇帝にすればいいのだけど、向こうは反乱を起こした宰相と将軍である自分をどうするんだ?
ま!追い出された時はその時だ!もしかしたら白竜復活を為したのが、内乱のきっかけという事は、
もしかしたら、白竜復活に免じて不問とか、ゲーム的ご都合主義だって十分にありうるし、今は兎にも角にもやれる事をやろう。
そう!他のプレイヤー!カヴァリーさんやビエーラさんが仲間になってくれたら心強いし、クラーヴンさんも戦闘じゃなくて、装備のメンテや製造に携ってくれたら凄く助かる。
何ならポーさんにご飯作ってもらえたら、行軍も楽になる!何なら殆ど会った事もないけど、コージァさんも一緒に来てくれたらありがたいな~。
とは言え、今の自分が【古都】に単独で向ったら……絶対危ない。
こんな時はいつでも宰相に聞いてきたけど、自分は【旧都】、宰相は【帝都】にいる。
そして、いつの間にかポータルが使えない。
最重要最前線から将軍である自分が抜けて、歩いて【帝都】まで戻る訳にもいかない。
一先ずカトラビ街の兵長に聞いてみるかな?
負けた場合の処罰とかは流石に分らないだろうけど【古都】のプレイヤーとの連絡の取り方なんかは手段を持ってるかもしれない。
と言う訳で早速【旧都】の【兵舎】へと向う。
そして【兵舎】入り口にはやっぱり兵長がいる。
【古都】の兵長にしてもカトラビ街の兵長にしても相応の身分だと思うのだが、しかもカトラビ街の兵長は服装まで自宅でくつろぐスタイル。
内乱中とは到底思えない、リラックスした格好なのだが、今日はいつもと表情が違う?
「ソタロー!丁度良かった!今ヒトをやって呼び出すつもりだったんだ。落ち着いて聞いてくれ!」
「どうしたんですか?藪から棒に?まさかどこかで戦闘でも始まりましたか?」
「そのまさかだ。遂に元皇帝派と衝突したぞ。場所は【旧都】からほど近い町だが、空白地帯だった場所を占領に向ったら、丁度相手もそのつもりだったようで、部隊が対峙している」
軽い気持ちで、言ってみた事が正解だった。
大きく深呼吸して、冷たい空気で肺を満たす。
一旦【古都】プレイヤーの事は忘れて、頭を戦闘に切り替えて、兵長の話を聞く。
「東側に入りこんだのだから、元皇帝派との衝突はあると思ってましたが、その時が来ましたか。それで?こちらは何人連れて応援に向いましょうか?」
「そこは将軍であるソタローが判断するべきだ。しかし東側は西と比べて大軍を展開できる場所が少ないから、少数精鋭で叩くことをお奨めする」
「少数精鋭ですか……自分が行くのが一番いいとは思いますが……」
「問題は機動力だろうな。既に対峙していると言う事は、手遅れの場合もある。その時は一目散に撤退できることも望ましい」
「分りました!ローシャの【騎兵】隊をぶつけます。そして後ろから自分が後詰で向かうと言う方針でどうでしょうか?」
「それなら、手堅くていいかもしれないな。もしローシャが敗れて撤退してきた時、ソタローが退路確保してやればいいんだし、悪くはないだろう」
すぐに場所を教えてもらうと、確かに【旧都】からほど近い、東側よりの町だ。
深い森に入ってすぐの所にある町なので、全く開けてないという事もないのだろうが、敵は何狙いだろうか?
あくまで占領域を広げて戦線を押し上げる一環なのか、それとも資源か、特殊な兵科でも眠っているのか?
いずれにせよ、ここからが本番だ。
今までは後ろ盾のお陰でほぼほぼ戦わずに【旧都】まで占領してしまったが、コレはあくまで態勢が整ったに過ぎない。
もう一度ゆっくり頭を冷やしながら、速やかに現地に向かう準備をする。




