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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
338/363

337.一家の野望

 地道に増やした自分の隊


 中隊長 ウチューク 【重装兵】及び【工兵】隊

  パリツェ  【歩兵】及び【憲兵】隊

     プリプラ  【弓兵】及び【支援兵】隊

     ローシャ  【騎兵】及び【伝令兵】隊

     エイリーク 【軽歩兵】及び【海兵】隊

     レオパール 【術兵】及び【拠点兵】隊

     バリバー  【歩兵】及び【突撃兵】隊

     ムィシ   【偵察兵】及び【雪伏兵】隊

     ミトシス  【衛生兵】及び【保護兵】隊


 ここに自分直属のいつもの部隊長達が20人づつ率いるので、自分を入れて901人+50騎編成の大隊が完成した。


 更に老【将官】ジャシィにも1000人率いてもらっているが、内訳はお任せ。


 「前にも少し話したが私は指揮の腕はあまり高くない。無難に一方面を固める事しか出来ないのでそのつもりでな」


 「それについては逆に自分の出来ない処理の方を日頃お任せしてるのに、今回の戦闘もついて来て下さるだけありがたいです」


 とまあ、例の死神紳士?に恨みのある老【将官】は手堅いタイプだったらしい。


 だとしても、いやだからこそ、堅実に退路確保や消極的でも被害を最小限に抑える軍運用をしてもらえれば、それだけで助かる。


 暴れるのは自分の役目だ。


 長らくサボらせてきた筋肉達が、ざわめくようにバキバキと音をたてる。


 【帝国】内で最も道幅が広く、自分のような超重量タイプでもなければ一番歩きやすい道と言えば?


 大河沿いだ。


 【帝都】【旧都】【古都】と三つの都が全て大河沿いに存在し、西から東へと一直線に繋がっている。


 都の壁や門などハード面において最も防御力が高いのも必然的に大河沿いとなるのだが、


 それでも今回は、あえてその道を進む。


 理由は簡単、中立派にどれだけの戦力があるか分からないが、大兵力を集めるほどの求心力はなさそうだから。


 内乱が始まって以来、ヒト通りの減った大河沿いの広い通りを真っ直ぐ進むと、正面に相当規模の軍が帯陣している?


 その軍の後ろには【旧都】が見えているし、多分十中八九【旧都】防衛軍だろうが、なんで外に布陣してるんだ?


 兵力的に劣っていたら、普通は壁の内側で防衛戦じゃないか?


 そんな事を思いつつ、距離を広めにとって行軍を止める。


 何しろヒトの大軍との戦闘経験はないのだ。適切がよく分らない。


 大きめに安全マージンをとりながら行動するのが、今は無難だろう。何しろ最初は交渉からだし、いきなり詰める必要もない。


 そんな事を思っていると、敵陣から三名のヒトが出てきた。


 遠目にシルエットしか見えないのだが、誰なのか察してしまい、唾を飲み込む。


 何しろ、姿形もハッキリしない内から三人のうち両側の二人がキラキラしてる……。


 周りの【兵士】や幹部達をその場に留め、自分は一人で対陣の中央に向う。


 「ソタロー!見違えるようだな?男子三日会わざれば……と言うが、刮目して見ずとも、その成長振りの著しい事、影ほどにしか見えぬ内から感じ取ったぞ。筋肉の祭典で華々しい結果を残した後も鍛え続けた証拠だ。我輩心底感服しておる」


 「お久しぶりですロデリック。しかし、何でまた中立派に?」


 「ふふふ!簡単な事だよソタロー!私達は身分の枠なんか全部破壊し、誰もが平等かつ自由に競争する社会を目指しているからね!今の内から実力を存分に世の中に示していく!そう!目立つ為に中立なのだ!」


 相変わらず悪いヒトではないのだが、言う事がよく分らないセサル師匠は置いておく。


 「師匠はそんな事しなくても十分目立つから大丈夫ですよ。ホアン師匠、何でまたこんな事を?」


 「理由はいくつかある。まずは身分制度の撤廃と言う点で、意見が一致した事。最初から下についてはそれこそ実力を示す機会が失われる事。そして腕っ節以外も十分役に立つという事を示す為だ」


 「腕っ節以外も?指揮能力とか?」


 「いや、あの【帝都】でぬくぬくと働いてきた内勤者共を一網打尽にして黙らせる事が出来れば、ソタローは助かるんじゃないか?」


 「……?どうしよう一気に質問しなきゃいけない事が増えちゃった。まず何で自分の味方をしてくれるんです?それと、自分が追い出したヒト達って内勤者だったんですか?彼らが内勤者だったとして、それは何もしない事が総意だとか言うから、闘ってケリをつけただけですけど?」


 「我が弟子よ!立派に育った私達の誇りよ!なんでソタローの事を私が見捨てると思ったんだい?最初から最後まで、ずっと可愛い弟子の味方さ!そして、素晴らしき【帝国】の英雄に悪い噂と言う卑劣な手段で傷をつける者達を私が許せるのか?否!絶対に許さん!我が剣の錆びにしてくれるぞ!」


 セサル師匠のキラキラ成分が一気に増して、何かチクチクしてきたので、ちょっとクールダウンしてもらいたい。


 「師匠のお気持ちは嬉しいんですけど、やはり自分の蒔いた種ですので、自分で刈りますよ」


 「つまり不届きな【帝都】内勤者の首を狩って、門前に晒すと?さすがソタロー!一切の容赦がない!素晴らしい!だが軍事が、彼ら内勤者無しでは成り立たないのも確かだ。素直に従う者は助命してあげてもいいんじゃないかな?」


 「いや、首は狩りませんけども、だから何で師匠達は中立派を率いて【旧都】を占領したんですか!」


 「ふむ、息子達の話は迂遠で分りづらかったか。つまりソタローに反抗する者を我輩の名で集め、一網打尽にする。ついでに【旧都】を差し出し手土産とし、更に我輩達の実力も示せるという事だ。初めから我輩は白竜様を頂点に据える宰相派を支持しているし、白竜様を復活させたソタローには強い尊敬の念を抱いておる。共に手を取り合い【帝国】を強い国にしようではないか!」


 交渉するどころか、何をするでもない内から中立派が味方なんだけど?

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