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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
337/363

336.中立派台頭

 老【将官】を仲間にして進む占領と安定していく内政。


 更には白竜を後ろ盾に持つ宰相派で手柄を立てようとする、割と俗だが素直なタイプの【上級士官】が何人がこちらについた事で、加速が止まらない。


 自分は戦うばかりが専門で、政治的な動きはよく分らないものの、周りの様子を見れば順調である事だけはよく分る。


 そうして遂に自分のやる事がなくなってしまったので、何か任務でもないかカトラビ街の兵長に聞いてみたら、


 呆れ顔で牙を研いでおけと言われたものの、そろそろその牙も研ぎ過ぎてなくなってしまいそうだ。


 【帝都】の一角に宰相が借りてくれた家で日がなぼんやり過ごす。


 イグラントは元々軍幹部の集まる場所で、自分にはちょっと居心地が悪い。


 一般兵や【下士官】はやたらと気を使ってくるし、残った中立幹部達は腫れ物に触るように自分を避ける。


 まあ、どちらにつくか迫ったのは自分だし、黙って働いてくれるヒトをとやかくしようという気はない。


 そして宰相派の軍幹部は少ない。元々軍縮派とも言える宰相ならではの人気の無さだ。


 【訓練】する相手もいなければ、闘技場に行くのにもままならない。


 本格的に暇を持て余し、一人で狩りにでも出かけようかというタイミングで、報せが入る。


 「ソタロー将軍!緊急事態です!」


 「うん、それは大変ですね。すぐ行きましょう!」


 「まだ、内容を伝えておりません。慌てずに聞いてください。本当に緊急事態なんです」


 やっとやる事が出来たと思い、つい気持ちがはやってしまった。深呼吸をして聞きなおす。


 「分りました。それで何がありましたか?」


 「【旧都】を中立派が占拠しました。声明文を読み上げますか?」


 「……長いですか?」


 「長いです。そして回りくどくて面倒くさくて、結局ただの言い訳です」


 「じゃあ、大事な部分だけ教えてください」


 「皇帝は民の支持を得られず、宰相は軍から見放された。それは中間管理職であった中立派を軽んじた結果だと、なのでどちらか厚遇してくれる方につくって感じです」


 「……もしかして、中立派って自分がどっちにつくか決めろって言ったヒト達かな?」


 「多分そのヒト達が多く含まれているんじゃないでしょうか?」


 「自分の事が嫌いなら、なんで皇帝のところに行かないんだろう?」


 「多分今迄中間管理職で甘んじていたのは、皇帝に気に入られなかったか、もしくは能力が……」


 「別に自分は皇帝に気に入られてないけど、将軍だよ?」


 「じゃあ、能力の方がアレなんじゃないでしょうか?」


 「やめたまえ、そんな事を言うものではない」


 いつの間にか来ていた宰相に窘められてしまった。しかし相変わらずこのヒトは供も連れずに、フラッと現れるな。


 「すみません。確かに能力のない方達が【旧都】を落とせる訳ないですよね。コレは完全に自分の責任ですし、すぐにでも軍を率いて【旧都】を落としに向います」


 「待つのだソタロー。相手は条件のいい方につくと言っているのだ。ただでさえ指揮官が足りなくて困っているのだし、ここは慎重に取り込むのも手だろう」


 「でも、従いますかね?寧ろ条件を飲んだ事をいい事に、要求が天井知らずになっていくんじゃ?」


 「無理だろう。それをすれば今度こそソタローに潰される。それ位の事が分からぬほど我が国の中間管理職は無能ではない」


 「そうですか?ちなみに中立派の条件とは?」


 「内乱後の地位の保証。身分制度の撤廃。軍縮に伴う各階級における席数の削減を中止すること」


 「却下ですね。やはり戦うしかないでしょう」


 「ふむ、一応理由を聞いておこう」


 「内乱後の地位の保証ですが、一度こちらの陣営が気に入らないと出て行った者達が、何を言ってるんですか?という事です。先にこちらの陣営についた者が優先されるのが道理でしょう。そうなれば、必死で手柄を上げてもらうしかありません」


 「そうだな。ソタローの言う通りだ。他二つに付いてはどうだ?」


 「身分制度の撤廃は別にいいと思いますが、同時にそう簡単なモノでもないでしょう。空約束しなければならない程こちらは落ちぶれてませんし、もし戦後嘘だと突っつかれた場合、折角の新体制に罅が入りかねません。最後に軍縮はこちらが大々的に上げている事なのに、何故役職者の定員が減らないと思っているのでしょうか?【兵士】のいない軍の幹部になりたいんですかね?」

 

 「道理だな。ソタローがそこまではっきりと先を見据えているのなら、任せてもいいだろう。【旧都】に向かい交渉してきてくれ」


 「自分の隊は連れて行ってもいいんですか?」


 「勿論、決裂次第【旧都】陥落に向けて動いてくれていい、現場の事はソタローに任せる。何しろ今回は元皇帝派も動くだろう。そうなれば、なんにしても素早い判断が第一となる」


 「……自分に勤まりますかね?」


 「今回の内乱の主役は最初からソタローだ。ソタローの判断こそが正しい。安心したまえ」


 「え?いや、何で自分が?」


 「当然だろう?事の発端は白竜様復活なんだから、後にこの内乱はソタローの乱と呼ばれるのかもな……」


 何かいきなり歴史を背負わされた気がするんだけど?何でこうなった?

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