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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
333/363

332.黒の防壁

 雪原の街を宰相派の占領下に置き、当面の内政はこれまで通りとして、あとは宰相に【伝令兵】を送り込んで、あとはお任せだ。


 自分の仕事は戦闘だし、政治の事は分らないので仕方ない。


 戦闘と言えば、この街の防衛について街長に尋ねると、


 「専守防衛ならそれなりの日数持つとは思いますが、元々貿易中継地点として存在する街ですから、行軍を阻むようなものはありません。出来うるなら早目に【旧都】や【黒の防壁】を押さえていただけると、非常にこの上なく助かります!」


 との事だ。


 個人的にはこのまま北上して、かつてペンギンと戦った北西部巨大湖を占拠しに行こうと思っっていたのだが、予定変更せざるを得ない。


 まずは【黒の防壁】を訪ねて、どちらにつくか聞いてみよう。


 もし仮にここを押さえた場合、東から攻められた時に心強い拠点となる。


 逆に戦うとなった場合、今の人数で落とせるだろうか?基本100人で守っている砦だが、中にいるのは黒の森から溢れる魔物を狩る戦い慣れした【兵士】達だ。


 【黒の防壁】こそ、交渉で何とかすべき場所なのか?


 正直な所、交渉に自信は一切ないので、取り合えずどうするのか聞けたら上出来のつもりで行ってみよう。


 雪原の街で一度宿泊し、翌日ログインして早々に【黒の防壁】に向う。


 雪原の街内部は以前来た時と変わらず、ごちゃごちゃと荷物でいっぱいで、よく宿泊できたなと我ながら不思議だが、息苦しいしさっさと出て行くに限る。


 前にも通った事のある道、雪降る【帝国】の森。


 森の中は雪が少なく歩きやすいだけでなく、知っている道という気安さも手伝って、足取りが軽い。


 ここ最近【帝都】を中心として活動してきたが、やはり本来自分の本拠地は【古都】だ。


 【古都】に近づくほど、慣れた風景になっていき、妙に高ぶっていた気持ちを安定させる。


 気がついた時には森を抜け、目前には【黒の防壁】がどっしりとその威容を隠すでもなく、存在している。


 やはり、今の自分の隊では落とせないなと確信し、今回は話だけに留めようと決心した。


 防壁の堅さだけなら雪原の街だって大した物だったとは思うが、やはり歴戦を潜り抜けてきて、魔物の血で塗り固められたかのようなこの砦は、オーラが違う。


 それが建物から発せられるものなのか、ここを守る中の【兵士】達から発せられるものなのかは、分らないし、あえて明言するのもでもないだろう。多分そのどちらの物でもあるだろうから。


 防壁前で行軍を止め、自分が前に出ると、中から出てきたのは知ってる顔。


 「チータデリーニ!お久しぶりです!」


 「おう!ソタロー!大変な事になったな。だが見違えるように立派になったもんだ。それなら将軍にもなるか」


 「いや、別に何も変わりませんよ。やっと『さん』付けする癖が抜けてきたくらいで、この内乱も頼まれて白竜様を復活させただけですし……」


 「いやいや、それが立派な偉業だろう。この国のヒト達共通の悲願だったわけだからな。それで、ソタローはこの砦を取りに来たのか?」


 「出来れば、こちらについて頂けるとありがたいです」


 「ふむ、もしこの砦を内乱に使う場合、黒の森から出てくる魔物にはどうやって対応する?代案はあるか?」


 「……いえ」


 「じゃあ、駄目だな。俺達の仕事は黒の森から出てくる魔物から一般のヒトを守る事、それは上が誰であろうとも同じ事だ。俺は俺の家族と目に映る範囲のヒトを守る為に【兵士】をやってるし、ここにはそういう奴らばかりだ」


 「つまり、中立という事ですか?」


 「今の所はそうなる。ソタローは言ったそうだな?中立を理由に何もしない奴は殴ると、俺達はこの砦のあるべき理由に準じて、この砦を中立地帯とする。もし俺達を立ち退かせたかったら、黒の森から溢れる魔物に対応する為の代案を用意しろ。それが総意だ」


 コレは、無理だ。梃子でも動かない。


 そして自分も闇雲にチータデリーニさんを殴る気にはなれない。


 何しろ言ってる事に芯が通ってる。多分こうなると皇帝派から声を掛けられても、同じように答えるだろう。


 もし、それでコロッと皇帝派につく様なら、その時に力づくで潰せばいい。


 と、いうのが自分の判断だ。あとは宰相に連絡だけ入れて、何かあれば指示をもらおう。


 黒の森から溢れる魔物に対応する方法、そんな物があるなら交渉も可能だろう。


 ちなみに自分にそんな案はこれっポッチもない。


 黒の森で戦った事はあるが、あの時は先に隊長が掃除してくれた後に入っただけの事。


 今の自分なら近い事は出来るかもしれないが、それでも狩り尽くすまでは、いかないだろう。


 内乱中に自分が指揮を取って黒の森の魔物狩りをしていたら、いつの間にか内乱が終わっていましたじゃ話にならないし、


 もう一個砦を築くには時間もお金も必要だ。


 何か物理的障壁になるような物を用意して、代わりに砦を自分達の陣地にして使う方法……。


 やっぱりないな。


 軍狼の時もそうだったが、黒の森の魔物は砦に向かって突っ込んでくるんだから、やはり砦は【黒の防壁】の名前通り、壁として存在してなきゃならない。


 やはり、ここは一旦置いて、西部統一を優先しよう。

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