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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
332/363

331.雪原の街占拠

 一先ず、氷精を使う雪原の村の若者達を集めて、自分の隊に編成しなおす。


 どうやら雪原の豹は【術兵】扱いだったらしく、ここでまた欲しい兵種が手に入った。


 正直な所、氷で武器を作って戦うヒト達はある意味前衛の気もするが、そこは気にしない方向で行こうと思う。


 さて問題は、何の音沙汰もない雪原の街だが、多分脅かしすぎて誰も出てこないのだろう。


 もう少し理性的に対話する姿勢を見せておけば後々楽だったろうに、取り合えず奪って献上すればいいとばかりに襲い掛かった所為か、誰も出てこない。


 せめて、街の意思だけでも聞いてから戦いたかったが、事ここに置いては攻める以外の選択肢はない様だ。


 物資が満載で、取れば交易の中心地として、資産調達が容易になるだろう土地を野放しにする勢力はないであろう。


 ここは確実に自分が占拠して、次への備えとしたい。


 仮にここを橋頭堡に出来れば【黒の砦】及び【旧都】に攻め込む時、適切な距離と隊を休ませる十分な拠点となる。


 「スルージャ!この街の偵察を頼みます。他の人員は一旦休憩!」


 雪原の街を睨む位置で、一旦休憩を取り、偵察の報告を待つ。


 その間自分はログアウトし、身の回りの状況を整えて再ログイン。


 ゲーム内の時間は現実の三倍速、ログインした時にはスルージャが待機していたので、街内の様子を聞く。


 「まず街の防衛ですけど、強固な壁と壁に仕込んだギミックを利用した防衛が中心で、平地戦闘を得意とする隊は置いてません。今後占拠して募兵しても拠点防御を得意とする【守備兵】が中心になるでしょう」


 「なる程、でも海岸の街の守りもあるし【守備兵】は有用でしょ?ここは積極的に傘下におさめたいね」


 「次に敵戦闘員の規模及び士気ですが、雪原の魔物に対応するのに必要最低限の人員が配されています。士気は普通ですが、基本的に壁に依存しています。対人戦経験が少ないようなので、壁や門を突破されると弱いでしょう」


 「じゃあ、その肝心の壁の弱点は?」


 「ありません。ソフト面の弱さをハード面の強さで補っているのか、抜かりはないです」


 「ソフト面って、兵力的な弱さの事だよね?そこの弱点は?」


 「シンプルに戦力が少ないです。交易の中継地点として、多くの物資を満載してる事もあって、作業員と商人が大半を占めていて、防衛隊は最低限です。先ほども報告した通り壁の仕込を利用して撃退していたようなので、直接戦闘向きの兵はかなり少ないです」


 「あくまで、街さえ守れればいいってスタンスだったのか。出来うるなら、正面から街を攻めるのは避けたいところだけど、隠し通路とかは?」


 「無いですね。水は井戸から引いてるので、毒も流せませんし、下水から進入もかなり難しいでしょう」


 「本当にハード面重視で、よく出来た街なのか。物資を満載した街じゃ、すぐに餓えるような事もないだろうから、兵糧攻めも有効じゃないだろうし……」


 「取り合えず、交渉だけでもしてみたらどうですか?」


 「そうだね。確かに街の意思だけでもちゃんと聞いておかないとね!」


 ついつい、攻める事ばかり考えてしまったが、別に自分は侵略者じゃなかった。


 内乱の一方の勢力に付いているだけで、現在の目的は空白地帯を自勢力に取り込む事だった。


 総勢400人足+50騎になった隊を率いて街の門の前に展開して、一歩前に出る。


 すると、街中から一人初老の頭頂部まで髪の後退したおじさんが雪の中、走ってきた。


 「降伏します!この街は宰相派に所属します!」


 「何だコラ!俺達の誘いには乗らなかったくせに!今更そんな態度が……アイタ!」


 急に横から飛び出した雪原の村の若者が、雪原の豹にお尻を蹴り上げられた。


 「馬鹿野郎が!ソタローがこれから交渉しようってのに、邪魔してんじゃねぇぞ!」


 「何かすみません。宰相派に属してくれるのはありがたいのですが、本当にいいんですか?」


 「はい!はい!是非!やはり【帝国】民であれば白竜様に従うのが道理でしょう」


 「そうですか……、参考までに聞きたいんですけど、何で彼らの誘いには乗らなかったんですか?」


 「いや、あんな乱暴に囲まれてまともに話し合えると思えなかったですし、それに……」


 「それに?」


 「【帝都】から皇帝派の方が来て街内部の意見を割っていて、その辺の調整に時間がかかりまして」


 「皇帝派の方?」


 「ええ、もう追い出しましたが……その~ソタロー将軍は好戦的で乱を好む方だから、実質平和を乱した元凶だと言いふらしていまして……」


 「そうでしたか、確かに平和主義ではないのかもしれませんね」


 「いえ、でも、白竜様の意思はこの国の者を強くする事ですから、一介の【兵士】から白竜様復活を成し遂げ、実力で将軍職に就いたソタロー将軍につくのは自然な事かと」


 やはり白竜の後ろ盾は強い。


 何しろ信仰の対象が、存在しているのだからそりゃそうか。


 白竜はヒトに対してそれこそ平等に見ているようだが、ヒトの立場からすれば白竜を復活させて、皇帝として担ぐと明言してる宰相派は白竜の庇護下にあると見られてもおかしくないのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、宰相、白竜様ありきの行動だから、白竜様以外に推しがない………………ないよね……ソタローにはそこまでの民への求民力は無いもん
[一言]  こういう宰相派に走った人々も、当然負けたときの罰はたっぷりと負うことになるでしょう。治において乱を起こし徒に国を掻き乱した罪は重いですね。白竜様を信じたからとか言う逃げ口上だけは赦せないと…
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