328.増員
【帝都】を出た時は300人を率いていたのが、街とは言え壁のある場所を攻めれば帰りは200人。
一先ず宰相に報告に向う。
もう少し自分の隊の規模が膨らめば、多方面を占拠させたり連戦も可能なのだろうが、まだ内乱も始まったばかりだし、ここは慎重にマメに【帝都】に帰還して十全な状態で進めたい。
宰相はてっきり帝城にいるのかと思ったが、あくまでそこは皇帝である白竜様に譲り、本人は相変わらずの仕事場兼住居にいるとのことだった。
こちらは以前にも行った事があるので【帝都】に着いて隊を一旦解散した後、一人で向う。
呼び鈴を鳴らすと、制服姿の秘書官か補佐官のようなヒトが出てきて、
「ご苦労様です!ソタロー将軍!左奥の薄青の花が飾られた会議室でお待ちいただけますでしょうか!宰相はすぐに参りますので!」
と歯切れよく言われてしまったので、素直に従って待つ事にする。
そして本当にほとんど待つことも無く、パタパタと現れた宰相。
パタパタと言うのは例えでもなんでもなく、この屋敷は内履きがスリッパだからだ。
「待たせたな!首尾よく海岸の街を占拠したようじゃないか。あの街を押さえておけば、海岸周辺の町村も支配下に入るし、そうなると海洋ルートはこちらが独占したも同然だ。一気にこちらの優勢が確定したぞ!」
ちょっとテンション高めの宰相が地図を出し、その上に駒を配置していく。
「とりあえず占拠したものの【憲兵】を2部隊置いてきたり、消耗したりで、今は自部隊200人しかいないですし、まだ内乱のルールがちゃんと掴めてなくて、今後海岸の街に配する防衛隊や行政官のあてが全く無いんですけど、どうしたらいいですか?」
「うむ、そうだな。まず行政官は内政向きの者を傘下におさめる必要があるが、海岸の街の街長は気弱で所属意識が低い者だ。このままあの街に配属するなら十分な数の【憲兵】を配置しておくほうがいいだろう」
「分りました。このまま【憲兵】はあの街に割いておきます。そうなると自分の手勢が少なくなるんですが、そこは不利を承知で進めという事でいいですかね?」
「それは違う。イグラントでソタロー隊への志願兵を確認してみろ。既に各地から集まってきているぞ。あとは適性に合わせて配置するなり、必要な人材を各隊に振り分ければいい。ただ……」
「ただ……なんですか?気になるので溜めないで下さい!」
「うむ、部隊長はある程度限られてくるし、中隊長ともなると早々いない人材となるので、どんどん味方につけた方がいいぞ」
「それだと、エイリークさんも出来れば自分の隊に迎えたいですよね?」
「確かにそうだな。エイリークの専門は海戦だが、陸上戦だからと言って指揮能力が落ちるものではない。海岸の街の状況が落ち着き次第、ソタロー隊に編成した方がいいだろう」
「そうなると、当面はエイリークさん待ちですか……」
「いや、ソタローと縁のある者が西側にまだいるだろう。まだ動き出す者が少ない内に占拠地を増やしつつ、ソタロー隊の規模も膨らましておくべきだろう」
「分りました。取り合ええずイグラントで隊編成をして、可能な限り早く次の地を目指します」
という事で隊の編成。
最初は広場に集まった300人を中隊長に任せて振り分けてもらっただけだが、もう少し今回は深堀できるかな?
そんな事を考えつつ、イグラントに着き入り口で隊編成のことを尋ねると、あっさり人員のリストを出してもらえた。
何でも宰相派の特に自分の隊に属したいものは続々と増えているらしい。
【帝都】を押さえ白竜様を奉ずる宰相派の人気と信用たるや、やはり元皇帝派よりずっと有利との事だ。
まあでもここで油断して負け戦でもしてみれば、一気に信用を失いかねないし、十分な準備としてまずは兵員確認……。
うん、いきなり飛び込んできたのが、チャーニン、スルージャ、クラーク、ムジーク、ミールって言う……。
彼らは部隊長なので、リストでも最初の方に書かれていたので、自分の直属部隊に配置する。
同時に彼らと一緒に【古都】を出てこちらについた者達で直属中隊を編成。
そして今回の街攻めで、減った人員の補充。
コレは兵科を極力合わせて配属はしたものの【憲兵】が足りない。これは海岸の街の治安維持が終わるのを待つほか無い。
そしてそれは通常戦闘で【憲兵】を消耗しないように気をつけて運用しなければならないという事だ。
他に作れる隊は何か無いかな~……。
一応部隊なら【騎兵】【術兵】を組めたり、【重装兵】の派生で【大盾兵】や【偵察兵】の派生で【工作兵】なんていうのもいるのだが、なにぶんそれを扱える中隊長がいない!
やはり、あの時制服軍人達もぶん殴っておくべきだったか?
でも、宰相と相談してからじゃないとまずいよね。って言う結論を出したんだし、それは無理か。
取り敢えずは、3中隊300人に自分直属で100人合わせて、400人まで膨らんだだけ良かったと思おう。
今日の所は早めにご飯食べて寝て、次の戦いに備えよう。




