327.西海岸の街占拠
街壁の間には厚みがあり敵兵が中に詰めていたが、そこは【重装兵】で押しとめている内に【工兵】達が壁を貫通、無事街中に侵入できた。
となると作戦は次の段階に移行する。
門の敵勢力を排除して、市街地戦の得意な【憲兵】隊を引き込む事で一気にこの街を占拠する事だ。
壁内ではまだ戦闘が行われているが、当る面の少ない戦闘だ。筋力の強い方が勝つ!
兎にも角にも自分は門の方に急いで移動すると、そこには既にパリツェ隊が待機していた。
「あれ?もう門攻略しちゃったの?」
「いや、すぐに落ちるから普通に攻めと来いって言ったろうが!」
答えてくれたのはエイリーク。
「言われましたけど、そして普通に攻めましたけど?」
「壁に穴あけんのは普通とは言わねぇ!門の守備に俺の隊も選ばれたから、内側から呼応してやったのに、台無しじゃねぇか!」
「あ~~~!そういう事!言ってくれないと分からないですよ!」
「分らないですよってお前……」
「お二人ともそれ位で!市街地占拠に向かわないといけないんですから!」
そこでパリツェから注意が入ったので一旦中止。
「まぁ、ここからも見えるあの少し高い場所に立ってるでかい建物があるだろ?あれがこの街の中心だ。あそこを抑えて占領を表明するだけの簡単なお仕事だ」
「簡単なお仕事って、さすがに本拠地を落とすんだから、ここからもう一戦……」
「何言ってんだ。街規模の軍なんぞ街壁防衛で大半で払ってるっての。そのうちの一角が俺だぞ?一応中隊長なんだからな。残りの内の半分も白竜様を復活させたソタローと戦うのは嫌だって言ってるっての。反対する奴は占領って言葉に過剰に反応してる奴らだけだ」
「その過剰に反応してるってのは?」
「つまりこの街の政治仕切りをやってる連中の縁者だよ。だが既にソタローが内部に入った事で、もう完全にビビッてる。あの街壁の上から盗み見してる連中がそれだ」
言われるままに街壁上を見ると、確かにソワソワとした様子でこちらを観察している一団がいる。
「じゃあ、まずその中心の建物を占拠しちゃいましょうか」
エイリークとパリツェと一緒にこの街の中心と言われる建物に向う。
ちなみにウチュークは街壁の監視に残す。
エイリークの言う通り途中に妨害は無く、あっさりと辿り着く。
雪をかぶる木造の横に大きな建物は、雪が落ちやすいような大きな三角屋根が幾つも連なり、入り口がいくつもあることから、複合施設だという事が分る。
「一応中心が街政の議場、右が取引所、左が漁業関連の施設になってるぜ」
「へ~、まあじゃあ正面から行きますか」
真っ直ぐ一番大きな両開きの扉を押し開けて中に入ると、顔面蒼白の人々の中に赤髭もじゃもじゃ代表もいた。
「ひっ!我々をどうなさるおつもりか!」
「そちらの出方次第ですね。どうします?」
キョロキョロとお互いを見合うばかりで何も話の進まないヒト々を眺めるも、いまいち埒が明きそうにない。
エイリークのほうを見れば、肩をすくめて、手に負えないと言う感じ?
「この街の政治の中心人物達が集まっている割に、自分で責任を負えない方ばかりのようですね。じゃあ二択にしましょう。この街から出て行くか。宰相派の傘下に入りこの街でこれまで通り生活するか。コレはあなた方だけではありません。この街に住む全員に問います。答えは速やかに出すように」
コレだけ言い置いて、一旦表に出てエイリークに相談。
「はは!平時ならいくらでも威張ってる連中だが、いざ戦闘となると駄目駄目だな。しかも他人に戦わせるだけで、自分達は一言も喋らんとは、呆れてモノが言えないぜ」
「まあ嫌味はそれくらいにして、どうしたらいいと思う?全員死刑?」
「ぶっ!!!中で言ってやりゃいいのによ!まあそんな事は出来ないだろうから、まずは宰相派の旗を掲げて【憲兵】を2部隊ばかり置いて行きな。あとは俺が監視しておいてやる。裏切り者や内通者のあぶり出しが終わったら改めてこの街の行政官と防衛隊を編成し直すんだな」
「ああ、なるほどそれでいいんだ?反抗する【兵士】達はどうする?」
「未だに反抗する奴は既に捕縛されてるだろう。お前についていきたい【兵士】は兵種ごとに分けて【帝都】に後から送ってやるよ。とりあえずは俺の中隊だけでも守れるだろうしな」
「え?大丈夫なの?自分率いる3中隊で落ちちゃう規模の街なのに」
「今この街を攻めるのは魔物くらいだ。ドサクサに紛れて外国勢力が攻めて来ないとも言い切れないが、まあすぐにどうこうと言う事はないだろう。元皇帝派はまだ戦力建て直しに時間がかかるだろうし、向こうは東が基盤、こっちは西の果てだ。すぐに攻められるって事はないと見ていいんじゃないか?」
「確かに言われてみればそうですね。じゃあ一旦自分は【帝都】に戻って報告及び補給をしてきます。【憲兵】2部隊40名はお任せします」
「おう!問題なくこの街を使えるように掃除しておくから安心して、報告に戻るなり次の街を落とすなりしてくればいい」
ちなみに宰相の旗と言うのを誰かに尋ねようとと思ったら、既に白竜の絵が書かれた旗が街門上に掲げられていた。




