325.海岸の街
行軍可能になったので、まず自軍の編成確認から。
中隊長 ウチューク 【歩兵】及び【工兵】隊
パリツェ 【歩兵】及び【憲兵】隊
プリプラ 【歩兵】及び【支援兵】隊
とまあ、かなり偏りがあるのは【帝都】兵だからだそうな。
ウチュークは戦った事があるので巨大鉄槌を使うのは知っていたが、どうやら城壁のようなオブジェクト破壊を得意としているらしい。
そしてパリツェは占拠した地域の治安維持が可能という事だが、何でそんな情報が必要なのか?
どうやら今後自分が色んな街や都を占拠するとそこの【管理】もしなくてはならないらしい。
その時の為に色んな能力を持った部下を手に入れられるとのことだが、全部を把握するのはかなり面倒くさい。
一応部隊長位までは把握して、適宜配属変更していきたいと思っているが、現状はとりあえず中隊長を中心にして、上手いこと組んで下さいっていうオート仕様だ。
ちなみにプリプラは料理が得意なようだ。つまりコレで自分の隊は磐石!宰相から十分な補給がある上に料理が得意な者が隊にいるのだから、そう簡単に負けるものではない!
とりあえず、自軍の情報を確認しつつ、途中町や村に立ち寄ると、温かく向かえ入れてもらえた。
現在内乱始まったばかりの状態としては殆どの地域が空白地帯であり、小さな町や村位だと、
自分のような一定規模の軍が立ち寄るだけで傘下に入るという事だ。
食料や軍資の徴発や徴兵を行うこともできるらしいが、どう考えても印象が悪いので、今の所傘下に加えるだけ。
駐留部隊を置くほどの余裕もないので、各町村ごとの自警団や衛兵に任せる。
今はまず自勢力拡大の為に少しでも自軍を膨らませて、どんどん街の支配を進める事に注力する方針だ。
そして、海岸の街へと辿り着く。
街ともなるとそれなりの規模の【兵士】が駐留しているし、代表も相応の人物だろう。
まずは対話か、いっそ電撃戦か?
街の東口を塞ぐように滞陣し、中の意思を尋ねるとしよう。
すると、街の代表らしきヒトが非武装で出てきた。
やや赤味がかった髭がもじゃもじゃのおじさんだが、服装で何となく代表だろうと言う勝手な予想でしかないが。
「ソタロー将軍と御見受けします。現在街中では意見が割れている為、もう少々時間を頂きたい」
「少々と言うのはどれくらいになりますか?時間がないのは分っている筈です。どちらかにつかねば、どちらからも攻められる。それでも独立を保てるだけの能力を有した街だと言う事ですか?」
「いえ、しかし元皇帝派は東部を中心として勢力拡大をしていると言います。つまり両者から攻められることはない。この街を攻めるならあなただ」
「そうですか。自分なら上手い事交渉すれば攻めないと思われているわけですか……」
「いえ、そういう訳ではありませんが……」
「確かに自分に従わず、内乱終息まで独立を保てれば、どっちが勝ったとしてもこの街の地位も保てますね」
「ま、まあそうですね。出来うることなら中立を……」
「戦闘の準備をしてください。攻め潰します」
「何故ですか!」
「武装解除せず、とりあえず中立を口にするだけの都合のいい事を言う相手は攻め潰すよう言われています。この街は明日灰燼と帰するでしょう」
「いや、ちょっとお待ちください!」
「もう、交渉の余地はありません。他人を舐めて、都合のいい事を言って何とかやり過ごそうと言う発想で、この内乱は生き残れません。残念です」
強制的に交渉を打ち切り、街の代表を帰す。
さて、ここからが本番。
多分あの代表は街の意思統一の時間を稼ぐ為に遣わされた。損な役回りの可哀想なヒトだ。
一旦、自軍に明日街を攻めることを伝えて、食事にする。
プリプラ及びその部下達が食事を作り配給し、監視役と偵察以外は眠りにつく。
自分はログイン時間調整の為、一旦休憩と言う名のログアウト。
そして、ゲーム時間の早朝に合わせて再ログイン。
すると偵察の報告と街からの使者が待機していた。
まず偵察の報告
・街は戦闘態勢を整えている規模は不明
・敵の編成は大半が【海兵】の為陸上戦はやや苦手
・街壁の弱点は不明
・海外からの物資が豊富占領下に置けば資源及び資金に大きな余裕が生まれるかもしれない
・徴兵に関しては船上戦闘を得意とする者が多いのでは?
大方予想通りだが、専業の【偵察兵】の情報ではないので曖昧だし、ここは慎重に進めて行きたいと思う。
さらに街からの使者は吹雪の侵略者こと、エイリークさんだった。
「よう、久しぶりだな!まさか内乱という形で皇帝派と宰相派が戦うとは思わなかったが、少なくとも俺はお前の味方だぞ!」
「お久しぶりです。味方していただけるのはありがたいですけど、明日にはこの街を攻めないといけないんですが?」
「そりゃ仕方ないだろう。明らかに宰相側の地域なのに、中立に徹するなら攻められても当然。交換条件によっぽどのものを差し出せるわけでもないのにな」
「すみません。普通に生活しているヒトを騒がすのは趣味じゃないんですけど」
「うん、それでだな。俺なりに街の被害を抑える方法を考えてきた。ソタローは安心して攻めろ。この街は簡単に落ちるからな」
エイリークさんはそれだけ言うとまた街に去っていったが、どういう事だ?




