322.【帝都】中隊長を殴る
「これでも【帝都】の精鋭達だったのですが、ソタロー将軍物足りなさそうですね」
案内してくれた初老の男性が後ろから声を掛けてくる。
「精鋭ですか?何か遠慮と言うか、やはりヒト同士ならではの手加減みたいなモノがあるんでしょうか?」
「いえ、単純に実力ですよ。やはりニューターの身体能力というのは凄まじい。ヒュムでその域に達する者はほんの一握り、それも相応の年月をかけてやっとと言う所でしょうな」
「その代わり自分達よりも練られた技をお持ちだと思うのですが?」
「それは確かにそうですが、ソタロー将軍の場合既に技の域をはるかに上回る筋力をお持ちですから、本来打ち合えばこうなる。当てればどうなるという理をねじ伏せてしまっています。こうなれば、一人一人やっていても埒が明きません。私が実力者を見繕いますがいかがですか?」
「それで皆が従うなら、それでいいですよ」
「それでは、その結果で従わないものは一旦軍から身を引き、実家なりで過ごすように通達を出しましょう。中には元皇帝の元に走る者もでるとは思いますが……」
「戦場で裏切られるよりいいですから、特に追う様な真似はしません」
「分りました。ではまずこの場は【帝都】防衛の要の一人、中隊長!熱鉄槌のウチューク!前へ!」
「え?中隊長でいいんですか?」
「はい、現役の現場最前線の【士官】と言えばやはり中隊長でしょう。確かに1000人率いる【上級士官】や【将官】もいますが、そう小回りの効くものではないですし、1000人率いてアレだけ転戦出来るのはやはりソタロー将軍の特異性でしょう」
「そういう事なら、自分の軍の一翼を担ってもらう人材かもしれませんし、全力で行きます」
「そういう事なら俺も最初から本気で行くぜ~~!」
出てきたのは巨漢。身長も横幅もでかい人物で、鉄槌の名に相応しい大きなハンマーを方に担いでる。
鋼鎧術 天衣迅鎧
鋼鎧術 多富鎧
バフをかけてから剣と盾を構える。
殴盾術 獅子打
壊剣術 天荒
自分がバフをかけている間、当然ながら相手もセルフバフを掛け、ハンマーに刻まれた文字に触れると、そのままハンマーヘッドが赤熱し始める。
明らかに火精系の攻撃だと分かるが、さて試してみるか?
白竜から貰った<白竜気>だが、何となくスキルを発動したいと念じながら全身に精神力を回すとあっさり、発動できた。
さっきまで真っ黒だった装備が足先から真っ白に変化していき、白い面にメタリックな縁取りと模様が浮き上がる。
そこで今更気がついたが、装甲胸部の中心になにやら丸い金属の玉がついている。コレは一体なんなのだろうか?ただの装飾にしては弱点の目印みたいでなんか嫌なんだけど?
まあ今更どうにもで気ないし気持ちを切り替えて、さあ耐性バフとはどの程度のものか、確認してみようそうしよう。
一歩づつお互い間合いを詰めて、お互い大きく得物を振りかぶり、そしてぶつけ合う。
巨大ハンマーと片手剣で打ち合うという明らかに、おかしな状態であるものの、何気にいい勝負だ。
ただ相手は両手ハンマー、自分は片手剣。つまり手数は自分が多い。
打ち合いの衝撃でお互い仰け反ったが、自分はその勢いで盾を振りかぶり、
殴盾術 獅子揺
盾の縁で地面を地面をぶん殴り、地震を起こす。
地震の中自分はそのまま動けるが、相手は体勢を崩してハンマーを再び振りかぶれないでいる。
そこに踏み込み、剣で突きを見舞うと、篭手で防がれた。
さすがは【帝都】中隊長だ小技も効いている!
膝を蹴り折るように前蹴りを入れると、太った体に似合わぬ反応で、膝を曲げて打点を逸らす。
そのまま膝を曲げた体勢で横に足を上げたかと思うと、四股を踏み、地面の揺れを中和する術を発動。
体勢を立て直したウチュークの鉄槌と再び打ち合う。
弾かれてもすぐに一歩踏み込むと、ウチュークは鉄槌を回転させて勢いを殺して再び、振りかぶっていた。
冷静に更に一歩踏み込み、剣で鉄槌の柄を打つ。
打点がずれた所為で、ウチュークの手から鉄槌が離れ、肩にぶつかるのを<防御>する。
ウチュークは両手を痛めたらしく、一歩引いてなにやら術で回復しているようだ。
両手から術のエフェクトを出しつつ無手で構えると言う事は、まだやる気だと言うことだろう。
折角なので自分も無手で相手しよう。剣を突き刺し盾を立掛ける。
壊剣術 天沼
鋼鎧術 灰塗鎧
鋼鎧術 空流鎧
「腹直筋!錐体筋!外腹斜筋!内腹斜筋!腹横筋!腰方形筋!尾骨筋!」
さて、全開だ!
相手が低い姿勢で頭から突進してきたので、こちらも、
武技 撃突
体当たりで巨漢を吹き飛ばす。
武技 飛身潰
更にジャンプすると、普段では絶対でない高さから巨漢を押し潰した。
すぐに立ち上がり構えたが、巨漢はピクリとも動かない。
「ふむ、この者の鉄槌は普通なら火精効果で相手の武器を破壊し、破壊できずとも伝わる高熱で武器を持っていられなくするものなんですが、全く効かないようですね。その盾に浮く白竜様の絵の加護なんでしょうか?」
言われて初めて盾面を確認すると盾に白竜を模したような文様が浮いている。よく見たら剣身にもまた違った意匠だが白竜と分かる白い文様が浮いてる。<白竜気>の白竜の主張が強いな?




