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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
319/363

318.将軍

 ログインすると暖か気な木製の天井。


 国務尚書宅は本当にイメージ通りの雪国の一軒屋、屋根は急で雪が積もりにくく、代わりに天井が斜めだ。


 リビングに下りていくと女性が何やら家事をしているが、どうやらその女性お手伝いさんとかじゃなく、普通に国務尚書の奥様だったらしい。


 国の内政のトップの家には全く見えないのだが、質実剛健の【帝国】っぽくはある。


 「あら起きたのね。あのヒトと白竜様なら【帝都】に行ったから、あなたもお行きなさいな」


 言いながら、テーブルに目玉焼きの乗ったパンとお茶を出してくれた。


 「ありがとうございます。それにしても……」


 「ああ、国務尚書の家っぽくないって?でもここがあのヒトが代々守ってる家だし、私も何かやってる方が性分に合ってるからいいんじゃないかしら?」


 「そういうものですか?それにしても治安と言うか、警備体制というか」


 「もし、この家が襲われるなら治安を悪くしたあのヒトの政治の所為、それに私も伊達に若い頃軍にいた訳じゃないし、そん所そこらの暴徒の100や200滅多切りにするわ」


 「ああ、そういう……」


 【帝国】あるあるだった。奥様は元軍人、そん所そこらの素人の100や200は敵じゃないって……。


 さっさとご飯を食べて、出掛ける。


 さて【帝都】に向ったという話だが、どうなったのだろう?


 案外皇帝陛下も、素直に白竜を皇帝にして本人は軍のトップに納まるとか、そういう感じで話がまとまったりとか?


 だって元々そういう約束なんだから、国を二つに割る必要なんてないんだよな。


 問題は今の軍中心の政治から、軍縮しつつ工業化された国に出来るかどうか。


 もしそこで話が割れたなら、代表を出し合って殴りあうなり闘技で決着つけるなりすりゃいいんじゃない?


 何しろ、自分が【上級士官】になるのにも闘技でねじ伏せろって言う国なんだしさ。


 そんな事を考えつつポータルで【帝都】に移動。


 【帝都】の中央通りのど真ん中に何故か道が出来ている。


 そりゃ通りなんだから道なんだが、そういう事じゃない。


 ヒトが両サイドに別れて、ポータルから降りた自分がその道を行くしか出来ない様に、ヒトの道が出来ているのだ。


 何かこういうの覚えがあるなとは思いつつ、真っ直ぐ歩いていくと、どこからともなく声が聞こえてくる?


 「こうして……白竜様は……」


 なんだろう?白竜様が先に行ってるんだから、御披露目でもしてるのか?


 取り合えず声のしている方向と今自分が進んでいる方向はあっているので、このまま進む。


 「我々の未来の為に……戦う時が……」


 どうやら国務尚書の声だという事はハッキリしてきたが、何と戦うんだ?


 正面に白い宮殿が見えてきたところで、周囲の人々がざわつき始める。


 「彼が白竜様を復活させ、我ら【帝国】国民の悲願を叶えた英雄ソタロー!彼の願いは一つ!【帝国】の為、貧困に喘ぐ国民の為、より豊かな国の実現!人々がもっと自由に夢を追い、幸福を追求できるよう!現体制と戦い打ち倒す事!硬直した思想に固執し、しかしながら遠き日の約束すら忘れた愚か者を追放し、真なる強さをこの国にもたらす事だ!立て国民よ!白竜様の下、将軍ソタローを先鋒として【帝国】の明日を切り開く!」


 え~~~~何?将軍って?


 取り合えず宮殿前に辿り着くと案の定、国務尚書が大勢のヒトの前で演説していた。


 少し待って演説が終わった所で、国務尚書と一緒に宮殿に入る。


 ちなみに今は他のヒトが何やら演説中だ。


 「あの、国務尚書?皇帝陛下は?」


 「元皇帝は逆賊として既に【帝都】から追い出した。これからは元皇帝に与する者達を平定し、この国を白竜様の下、平等で豊かな国にするのだ」


 はい、既に追い出し済みでした!


 「じゃあ、自分が将軍って言うのは?」


 「当然だ。白竜様復活と言う偉業を成し遂げた者に、将軍位でも足りないだろう?しかしそれは元皇帝を完全に排斥するまでの暫定的処置だ。いずれ軍のトップとして元帥でも何でも都合のいい称号を与える。まずは旧体制にしがみつく各地の逆賊を打ち倒して欲しい」


 「戦う相手は望んだ事ですけど、昨日まで味方だったヒト達を攻撃していいんですか?」


 「問題はない。多分大抵の相手は戦わずに降伏するだろう。何しろ白竜様を復活させたのだから、あらゆる意味でソタローの権威はこの国有数のものとなったのだ」


 「そう……ですか。分りました。じゃあ行ってきますね?」


 「ちょっと待て!ソタローには将軍に相応しい装備を作ってある。是非それを装着して進軍して欲しい」


 「ああ、そう言えば、この白竜様の力の宿った装備は国に納めた方が良かったんでしたっけ?分りました」


 そんな事を話しつつ、国務尚書に導かれるまま一室に入ると、鎧一式が飾られていた。


 今の自分のロボット風装備と比べれば古風だが、如何にも将軍の鎧と言うのだろうか?


 複層の曲面の美しい装甲が隙間なく体を覆う鎧。しかしこの見た目だと重量はどうなんだ?


 「重量の心配は要らない。重精様の力で重量を調整出来るようになっている」


 心を読まれたように答えられてしまったが、体に震えが走る。


 武者震いと言うのだろうか?この鎧を身につけた自分を想像した瞬間に、何故か途方もない戦いに身を投じる予感がした。

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[一言] 国務尚書……暴走中(笑)
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