316.白竜の昔話
「よくこうやって、初めて会いに来たヒトと、何やら穀物の粉を水で溶いて丸めただけのものを食べたものだ」
「昔ってそんなに質素だったんですね。長年何も食べてなかったみたいですけど、大丈夫だったんですか?」
「別に我は何も食べなくても、何か食べても何も変わらない。ただヒトの子は他者と一緒に食事をしながら話す者だから、食べるのだ」
うん、どうやら昔の皇帝達との習慣をそのまま引き摺っていると言う事だろう。
「ところで、自分が白竜……様を復活させに来たのは……」
「うむ、分っている。皇帝になる為だな。この雪の地に住むヒトの子達の後見人として見守る約束だ。ヒトの子の争いは終わったようだが、また争うそうな」
「はい、国務尚書が現皇帝を排斥する方向で動くみたいです」
「そなたも戦う相手に困っているようだし、大いに争えばいい。名を聞こう」
「ソタローと申します」
「そうか、白竜だ。むぅ、しかしよく眠ったな。瘴気が漏れ出ぬように夢の狭間に封じていたが、邪神の尖兵と言うものはどうにも理から外れた存在ゆえ、夢の中とは言え変な動きばかりで少し疲れたな」
「そうですかお疲れ様です。どうしますか?もう少し休んでいかれますか?」
「いや、外に出て久しぶりに雪を浴びるのも悪くないだろう。その前に我に会いに来たそなたに力を授けなくてはな」
「力ですか?既に戦う相手に困ってるのに、これ以上強くなっても……」
「そんな事なかろう。これから争うのだからきっと必要になる。そなたの力の根幹となるスキルは<塞剣士>か?」
「確かに装備関連のベースになるスキルですので、コレがないと困りますけど?」
「ふむそれなら<竜剣士>とでもするか、今後上級固定職スキルとして別枠にセットされる。更に5つ目のスキルとして<白竜気>を授けよう。発動すると精神力の回復が止まる代わりに高い耐性を得ることになる。非常にシンプルだがそれ故に効果は高い」
「えっと、耐性って言うのは何に対する耐性なんでしょう?あと上級固定職スキルって言うのは?」
「我のような神より選ばれし単独の存在から力を授けられた者が持つスキルだ。あとは誰かしらヒトの子でも分る者がいるだろう。耐性に付いては氷精に順ずるものだ。つまり全耐性、状態異常にかかる確率
やあらゆるダメージ量の軽減を見込める。避けるのが苦手そうな見た目だし、悪い能力ではなかろう」
何か唐突に凄いもの授けられた気がするんだけど、どういう事?チートじゃないんだよな?そりゃゲーム側から提供されてるんだし、システム的なものか。
ああ……もしかしたら前にガイヤさんが使ってた火精パワーアップみたいなアレかな?
自分は重装備タイプだから防御と言うか、耐性強化みたいな。一時的に精神力の自然回復が止まるって話だし、ちゃんとコストを払う特殊技だと思っておこう。
<竜剣士>
<八陣術><>
<焚鬼><><圧迫>
<><武術士><探険者>
<体操士><医術士><野天者>
「さて、他に何か聞きたい事はあるか?話が終わったらここから出てしまおう。寝るにはいいが、外にも興味が湧いてきた」
「聞きたいことですか?なんだろう?そう言えば白竜様は長年生きているようなのに、ヒトと関わった事が少ないって聞きましたけど、なんでまたヒトに力を貸そうと?」
「ヒトが生まれたのは神が邪神と戦う存在を生み出したからだ。しかしそれは我が生まれた理由ともそう変わらない。しかしヒトは弱い。それ故神は我にヒトを守るように命じられたからだ。原初のヒトはとても強く優秀だったが、世界樹を追って消え、また別のヒトが生まれ、色んなヒトが生まれ、よく分らぬのでヒトの子と一括りで呼ぶことにしたのだ」
自分が次に聞きたかった、ヒトの子って呼ぶ理由も応えちゃったんだけど。
「なるほど、あとは~じゃあ、最初に白竜様に会いに来た二人って、どんなヒトだったんですか?」
「一人はこの霊廟のある地に住むヒトをまとめる者だったが、代々何故か霊廟前にいろいろ置いて帰る変人だったな。もう一人は東の地より来たと聞いたが、我はこの雪の地から遠く離れたことがないので、東の事はよく分らぬ。ただ最初に会ったヒトの子がその者だった所為か、夢にその者の故郷の幻影が現れる事がある。そうでなければそなたがここに来る道中もずっと雪が降っていたことだろう」
「そ、そうでしたか、あ~あとは~~~なんでここって霊廟って呼ばれるんですかね?」
「遠い昔の事、ヒトの子は我を精霊の具現化した姿の一つだと思っていたらしい。それ故だな。さてそなたは戦う事と食べる事は好む様だが、他はあまり興味ないらしい。知りたい事があったらまた機会のある時に聞くがいい。外へ出るとしよう」
「はい、ところで夢の回廊みたいなの消えちゃいましたけど、どうやって出るんですか?」
「そこに入ってきた時の梯子があるだろう?」
指差された方を見ると、確かに自分が下りてきた梯子がかかっているが、かなり短い?
「そなたはそこから出たらいい。我はあそこから出る」
それだけ言うと、うっすらと白い光を発して浮き上がる白竜。
そのまま真っ直ぐ天井近くに開いた穴から外に出てしまうので、大急ぎで自分も梯子を上ることにする。




