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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
309/363

308.氷の道から休憩所

 氷に道が現れた……道だよな?


 手すりも何もない。人一人通れる幅の透明な通路が、揺らめく青火光の反射で、フワッフワッと存在感を示してくる。


 道である以上ここを進むしかないのだろうが、よく考えて欲しい。下は深淵。


 ほぼ透明な道を歩けといわれても、流石に怖すぎるだろう!


 しかも、材質が氷って!自分の体重支えられますか~~~~!


 「進まないのか?」


 逡巡していると、唐突に後ろから声を掛けられるが、深淵を覗き込んでいる時に後ろからは反則だ!


 「あの、脅かさないでもらえますか?進みたいのは山々ですけど、この通路もう少しどうにかなりませんか?」


 「ならないな。こういう物だ」


 「こういう物といわれてもですね。そもそも自分の体重支えられますか?」


 「問題ない」


 「自分の体重も分らないのになんで言い切れるんですか?」


 「ふむ、今お前に私はどう見えてる?」


 「何か半透明なヒトですが?」


 「ふむ、今お前のいるこの場所は簡単に言うならばうつし世と白竜様の夢の狭間に属する地だ」


 「え?狭間?自分は起きてるし、入ってきた穴も見えたのに……」


 「白竜様はお前のような小さきヒトの子を遥かに超越した存在だ。例え夢に過ぎなくとも、その影響力はうつし世に大きく現れる。眠りと言う制御の効かない状態で、その影響を限定する為にこの霊廟はある。私の姿は白竜様の記憶にあるヒトの誰かの姿を象っているのだろう」


 「そうだったんですか、道理で妙に現実離れした光景が広がっていると思いました。それで、この道を渡れるという理由は?」


 「この道も、氷でありながらただの氷ではない。白竜様は氷精の力を宿したお方であり、その御身が夢でイメージする氷の道が弱いあろう筈もない。それ故小さきヒトの体重が如何程であろうが、渡れぬという事はあるまい。道というのは通る為に存在するのだ」


 「そうですか……分っていてもやっぱり怖いんですけど」


 「しかし道はここにしかない。心をを決めて進むほかないだろう」


 それ以上は何も言ってこない半透明のヒト。


 まぁ、これはゲームだ死んだからと言って死に戻りをするだけだし!


 と言ってもやっぱり怖い!こんなの高所恐怖症とかそんなの遥かに越えたヒトの根源的な部分に根ざした、死への恐怖としか思えない。


 それでも、進むしかないのは分かっている。石壇を左手で掴みながら、そろそろと氷の橋に右足をのせるものの、何もおきない。


 じりじりと限界まで石壇を触ったまま、進むがなんともない。


 そのまま氷の道の上に両足で立つが、やっぱりビクともしない!


 それでも下は深淵が透けて見える。凄い怖い。何だこりゃ……。


 足が竦むどころか、本当に氷の道の一歩目で立ち往生してしまう。


 それでもいつまでもこのままじゃどうにもならない、スルスルと足を滑らせるようにジワジワと進む。


 幸い足場の氷は滑る素材のお陰で、それでもちゃんと距離を稼げる。


 その時、つるっと、前足にしていた右足がほんの3センチほどずれた事で、心臓が爆音で弾む。


 たった3cmされど3cm。滑る恐怖でまた進めなくなってしまった。しかし後ろを向くといつの間にそんなに進んだのか、既に中央付近まですすんでる?


 もしこれで、下から何かに襲い掛かられたら死ぬな~……。


 余計な事を考えてしまった、凄い怖いぞこれ!息が上がるが、同時に下から何かに襲われる妄想もどんどんと膨らんでいくのを止められない。


 思わず左足が一歩前に出て、その勢いで右足も出る。


 コーン!コーン!


 妙に軽い音が滝の落ちる音に混ざっていくのだが、今は自分が進む先しか見えない。


 少しづつ近づいてくる対岸、辿り着いた瞬間に、対岸の通路にへたり込んでしまう。


 ただ材質が氷から木に変わっただけなのに、なんでこんなに安心感があるのだろう。


 正面には障子?


 白い紙の張られたスライドドア?


 いやまあ障子くらい分ってるので普通に横に引くと、中にはベッドとテーブルとキッチンがある個室が一つ。


 一人暮らししたら結構居心地の良さそうな、こじんまりとしつつも、必要最低限のものは揃った部屋はきっとセーフゾーンだろう。


 国務尚書も休める所があるって言ってたしこういうことだろう。


 渡りに船とはこのことだ。なにしろさっきの恐怖の氷道のお陰で、なにが削られたって自分のメンタルが削られ放題削れてしまった。


 障子の扉を閉めて、キッチンでご飯を作ろうと思う。


 やっぱり落ち着くには料理に限るしな!……きのこと卵のふんわり卵焼きにでもするか。


 まずはきのこを洗って程よいサイズにカット、葱は斜め切りにしてっと……。


 卵は綺麗にといておこう。塩コショウして、下味を付けて置いておく。


 フライパンを熱して、油をひいて、葱ときのこを軽く炒めたら炒め物用の赤い瓶で味付け!


 具材は一旦端に寄せてフライパンの真ん中に溶いた卵を流し込んで軽く混ぜながら固めていく。


 程よい所で具材と混ぜて、皿に移せば完成!ラー油とか辛い物をかけてもいいけど、手持ちにはないのでそのまま頂く。


 熱々の卵ときのこと葱で冷め切ったお腹が温まりほっとした所で、今日は一旦ログアウトとしよう。


 まだ先は長いのだ。多分?

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― 新着の感想 ―
[一言] ∑( ̄□ ̄;)卵焼きにラー油………… ってか、すごいな氷の道、割れなかった←でも、怖い(゜ー゜)(。_。)ウンウン
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