291.楔四つ目
メンテナンスの終わった白装備を装着すれば、久しぶりの重量感が頼もしい。早速国務尚書からの依頼をこなすべく出発!
【古都】北部の渓谷に降り、そのまま川沿いを東へと進む。
向うのは以前大百足を倒した地底湖、やや薄暗いが視界が悪いと言う程でもなく。
雪と氷で出来た地底はどこか静かな気分にさせてくれるだろう……一人なら。
「地底か!つまり敵は地底人という事だな?くっ悪辣な地帝人め!日輪の輝きの前に……」
「違うだろ!砂漠ならいざ知らず、雪に囲まれた地の地下だぞ?つまりこれは遺跡なんだ!古代人の英知の詰まった遺跡には封印された古代の……」
「まあ聞け!俺達の歌を聴けーーー!どうだこの反響!やはりここでライブをする運命が俺達を導……」
うん、何かヒーロー達がついて来ちゃった。
あまり広い場所じゃないから、人数を絞ってくれと頼んだ所、選抜メンバーは太陽の赤い重装戦士。ミイラ男にしか見えない、黒い犬を連れたツタンカーメン?どこかスピーカーを思わせる黒いメッシュが特徴的なヘルムのやっぱり赤い戦士。
「あのクエストを手伝って貰えるのはありがたいんですけど、何処から嗅ぎつけたんですか?」
「ああ、アンデルセンからちょっと野暮用で【帝国】に当分戻れなくなるから、それとなくソタローの事を頼むと言われていたのでな!」
と言うのは赤い重装戦士、武器は分厚くデカイ無骨な鉄の塊を思わせる両手持ちの幅広剣。プロミネンスレッドさん。
「そうでしたか。今回何をするのかは分ってついてきてますよね?」
「無論だ。遠い昔に封印された竜を復活させる為、瘴気濃い地に潜り込むのだろう?」
と言うのはピラミッドのお墓に安置されてそうな黄金の仮面を被った包帯男、武器にはドリルのような槍を持つ。マスク・ド・ツタンさん。
「その通りです。しかし最下層には邪神の尖兵が住んでますけど」
「ああ!邪神特効装備宝剣は返却してしまったから、ダンジョンのラスボスバトルは歌で応援しようじゃないか!」
と言うのは、全身赤衣装だが、ヘルムの中央部分が黒いメッシュになっていて、スピーカーを思わせる赤い戦士、武器はマイクらしいがどうやって戦うのか?ロックレッドさん。
まあ、何を要求されるわけでもないし、何なら邪天使の時一緒に戦った仲間達だ。ここは協力してもらって、確実にダンジョン攻略と行こう。
特徴的な石をぶっ叩けば、いつも通り地下に進む階段が現れる。
「おぉぉぉぉおおお!隠し扉か!地底湖の更に下とは中々そそる!」
一々リアクションが大きくて、とても愉快な道行になりそうだなぁ。
そのまま降りていけば、いつも通り試練の間が現れる。いつも通り壁が氷で出来ていて、壁には白い破片が埋っている。
氷に触れれば、カシャンと崩れ落ちて、その落ちた破片が集まって四体の敵を作り出す。
そして容赦のない先制攻撃は、ロックレッドさん。
「俺の歌を聞けぇ!!!」
マイクを通して叫べば、楽譜を思わせるエフェクトが広がり、氷像にひびが入る。
どうやら術の媒介の様だが、何術なのだろうか?歌術?音術?
続いてプロミネンスレッドさんが、迫力ある見た目の大剣を振り回せば、氷像の内2体をまとめて吹き飛ばす。
「アヌビィィィス!!!」
マスク・ド・ツタンさんが叫べば、黒い犬が更に一体の氷像を貫く。
自分は残った一体に思い切り殴りかかるのみ、久しぶりの試練の氷像は妙に脆く感じられた。
一刀両断で、真っ二つに切り裂き、ついでに、
殴盾術 獅子打
盾でぶん殴れば、その場に砕け落ちる氷像。
コロンと転がり落ちた核が、砂場に落とした磁石の様に撒き散らされた氷片を集めるのを邪魔するべく踏みつけて、再生を止める。
氷像の形を確認するまでも無かった。それだけ自分も成長したと言う事だろう。
拾い上げた白い核は〔竜の骨片〕となっているのでいつも通り握りこむと、肋骨と背骨のように上半身を守る透明な氷を纏う。
避けるのが苦手な自分としては、防御力が上がるのは助かる。
ヒーロー達は自分が対邪神の尖兵用装備を拾って氷の鎧を纏うのを特に気にした様子も無く、試練の間を調べていた。
「ふむ、これは何か意味ありげな施設だ」
「うーむ、多分壁画を見る限り、水に関係するんだろうな……。水を流し込むとどうなるんだ?」
「この部屋じゃライブをやるにはちょっと狭いな……」
頼りになるのはマスク・ド・ツタンさんだけか?ヒーロー二人はいまいち、感想が適当だ。
「取り合えず進みます。この先の通路は天井にも敵がいたりするので、要警戒でお願いします」
そう言って先に進むと、すぐについてくる三人。
造りはいつもと同じで、暗い通路に出る。
「ほう、これは中々に暗いな!だが日輪の前にはどんな暗闇も意味をなさない!暗がりに潜む悪を炙り出すぞ!」
プロミネンスレッドさんが叫ぶなり、ヘルムについた太陽の意匠が輝き、暗い通路を照らす。
ランタン付きヘルムとは恐れ入った。格好だけのゴテゴテ装備ではなく、意味のあるギミックの凝った装備だったらしい。
明るく照らされた事で、トカゲを発見し、ロックレッドさんがまた叫べば天井から落っこちてくる。
そこをマスク・ド・ツタンさんがドリルのような槍で突けば、あっという間に片付いた。
賑やかながら、これなら大丈夫だろうと、奥へと進む。




