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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
210/363

209.かいじん

 ガイヤさんの心配をする必要は全くなかった。


 火精の火傷効果で相手の再生力を遅らせて、さらに精霊術とはまた違った拳術の追撃で倒してしまう。


 「ふん、ソタローのおかげでコイツの体内のどこに核があるかすぐに分ったよ」


 「ああ、そうか!再生するタイプの敵は核を潰せばいいのか」


 完全に何も考えず一番得意なチータデリーニさん直伝?ベアハッグで抱き潰してしまったが、確かに楔の試練ですぐに再生するタイプは核を見つけて潰すって言われてたな。


 問題は出て来たはいいけど何もやる事のない、ブラックフェニックス。


 「どうやら、俺の相手はフロリベスお前だけだったようだな」


 「そうね~。本当はあなたを炙り出して倒す気だったんだけど、随分強い異物が二つ紛れ込んじゃったものね~。じゃあそちらのお二人は帰ってもいいわよ」


 「あぁぁぁん?邪魔するだけ邪魔して、今更帰れって?」

 「じゃあ自分は帰ります」


 「いや、ソタロー!虚仮にされて落とし前つけずに帰る気かい?」


 「自分の仕事は魔石の取引を邪魔する事だけです。その目的は果たしたので、別に帰ってもいいかと思って」


 「いや、私はああいう女の掌で遊ばれるような事は癪に障るね!」


 ガイヤさんのいう事も分かるけど、目的を取り違えてはいけない。しかしガイヤさんを説得する材料を集める為にもちょっとでも引き伸ばさねば。


 「あの……自分達以外の夜会の出席者達はどうなるんですか?」


 「秘密を握られた以上、仲間になるか殺すかしかないわね」


 「自分達も秘密を知っているのに、帰してもいいんですか?」


 「帰す訳ないじゃない?憎きレディのお気に入りを屠れる機会をみすみす逃すなんて馬鹿らしいわ~」


 支離滅裂な事を言ってるぞ?と思った瞬間、足の長い敵を丸呑みにする男が現れた。


 服装を見るに夜会に紛れていたのだろうが、屈強な男を丸呑みするほど大きく開いた口はどうなっているのだろうか?


 「ほら!こういう女は大体こういう陰険な事をするのさ!時間稼ぎの為に帰っていいなんて、嘘をついたのさ!」


 振り向けば、腕が長い方の敵も別の男に丸呑みされている。


 「さあ、核が二倍になった『改人』ちゃん達の力を試して頂戴」


 その時、何がどうなったのか足長を丸呑みした男の動きが完全に止まる。微動だにしないという言葉をそのまま現したほどにピクリともしない。


 「こいつ達は俺が止める。その間に客を逃がしてくれないか?」


 どうやらブラックフェニックスが、何かしたらしい。


 ならばと、ガイヤさんが相手しようとしている『かいじん?』に走って向かい、


武技 撃突


 そのまま突進して、扉をぶち破る。そのまま敵の上に乗って体重を全力でかけつつ、


武技 鋼締


 完全に拘束しながら抱き潰す。バキバキと音をたてる相手の核を潰す感触があったので手を緩めたら、頭突きを貰ったので、お返しとばかりに、


武技 鐘突


 こちらも頭突きを返すと、また核が潰れる感触?核が二個って言ってたけど、頭にももう一個あったのかと合点がいった。


 敵が動かなくなったので屋敷内を振り返ると、ガイヤさんが呆れ顔でこちらを見てる。


 「全く私の獲物を……まあいさね。客を逃がしな。私はもうちょい暴れる」


 その声を聞いたNPC達が一斉扉が壊れた開きっぱなしの出入り口に殺到し、逃げていく。


 自分はその流れに逆らって屋敷内に戻る。時々ぶつかってきては跳ね飛ばされる変なヒト達は何がしたいんだ?


 とりあえず一回ベルトのバックルを動かし、ベルトを緑色に戻した。


 「あなた、とてもいい素体ね。もし良かったら『改人』にならないかしら?今よりずっと強くなれるわよ?」


 「仲間を丸呑みしてもあの程度の強さなら必要ないですね」


 「いいぞ!ソタロー!この雰囲気の悪い女にもっと言ってやんな!」


 「そう?じゃあ力づくでやるしかないわね」


 どこから取り出したのか鞭を振りかざし、襲い掛かってきたか所にブラックフェニックスもまた鞭状の武器で応戦する。


 「おい!お前の目的は俺だった筈だ。そうやってコロコロ目移りしては見境なく襲い掛かって、どういうつもりだ?」


 「ふふ、時間稼ぎよ?」


 すると、外から人々の叫び声が聞こえる。すぐさま扉の外に飛び出すと、逃げ出した筈の夜会の客達が、屈強な男共の肩に担ぎ上げられて米俵の様に運ばれて戻ってきた。


 そりゃそうだ。屋敷の主人の女は客を一人も逃がす気なんてなかったのだから、初めから庭にも配置していたという事か。


 「どうします?」


 「別にこんな夜会に参加するような奴らは大した連中じゃないし、見捨ててこの性格の悪い女を叩き潰す」


 「出来ればこの女は俺に任せて客の救出に向って欲しいんだが?」


 ちなみに自分が守るべき吹雪の侵略者は、何だかんだ自分の近くにいて手に魔石の入った箱を抱えたままだ。


 「どうするの?こちらの手には人質がいっぱいよ?まさかヒーローが無辜の民を見捨てるような真似をするのかしら?」


 「誰がヒーローだ?馬鹿馬鹿しい……」


 万事休す。


 ガイヤさんの言う通り、人質を無視して首魁である女主人を倒すか?


 何故か本当にヒーローだったブラックフェニックスと手を取って人質救出に乗り出すか?


 自分の目的である吹雪の侵略者と魔石だけ守って逃げ出すか?


 「あの提案なんですけど」

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[一言] 突進でそこら中を壊しまくる……………←マテ
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