その7 クラスメイトのギャルと約束です
翌日。
昼の時間。
今日も僕は、新菜と一緒に美術準備室でランチタイムを迎えていた。
「美味っ!」
約束通り、作ってきた弁当をお裾分けする。
鶏のから揚げを一口食べると、新菜はオーバーなほどのリアクションで絶賛してくれた。
「一応、レシピ通りに……ピーナッツを砕いて、衣に入れてみたんだけど」
「すごっ! 匠じゃん! 匠の技!」
凄い褒めてくれるな。
作ってきた甲斐もあるというものだ。
しかし何より、鶏のから揚げをおいしそうに頬張る彼女の横顔は、実にカワイイ。
「んー? なにユッキー」
しまった、ちょっと見詰めすぎていた。
「どうしたの? 見蕩れちゃった?」
「ち、違う!」
いつもの調子で、そう言ってクスクス笑う新菜。
からかってくるそんな姿、そんな表情さえ、同年代とは思えないほど凄く魅力的だ。
「………」
しかし、だからこそ思う。
彼女は、昼の時間を僕なんかと一緒に過ごしていて、大丈夫なのだろうか?
他の友達と一緒にいなくて、ていいのだろうか?
クラスで、彼女が陽キャラチームと絡んでいる時の事を思い出す。
正に日常風景。
あっちの方が、断然シックリ来る関係性だ。
自然と言うか。
僕と一緒にいるなんて、明らかにおかしい光景のはず。
……って、自分で言うのもなんだけど。
「ユッキー?」
「………」
そんな風に黙り込んで考えている僕を、新菜はしばらくジッと眺めていた。
そして。
「今日どうしよっか?」
と、そう切り出した。
……どうしよっか?
「どうしようか、って……」
「前言ってたカラオケに行く?」
「………」
……普通なんだ。
放課後、僕と一緒に遊ぶの。
なんだか、肩からスッと力が抜けるような、そんな気がした。
「カラオケかぁ。でも僕、あまり歌上手くないし」
「あたしだって得意じゃないよ。あ、でも狭い密室にあたしとユッキーの二人きりじゃ、ユッキーが何か間違いを起こすとも考えられるからなー」
「な! そんなことしないよ!」
ムキになる僕に、新菜はケラケラと笑う。
自然……なのかな?
僕と彼女が、一緒にいるって。
……うーん、やっぱりちょっと、違和感はあるかも。
「んー……じゃ、適当にファミレスとかでダベりますか」
昼休み終了まで、もう間もなく。
僕達は食べ終わった昼食の後片付けをし、教室に戻る準備をする。
「いいの? そんなので」
「いいのいいの、この前おススメしてもらった漫画の感想、まだ語り尽くせてないし」
椅子から立ち上がり、準備室のドアへ向かう。
「あ、そうだ」
その寸前で、新菜が振り返り、僕に何かを差し出してきた。
「はい、これ」
「え?」
小さなビニールの包みに覆われた、チョコレートだった。
「お弁当のお礼」
「あ、ありがとう」
「……って、何マジに受け取ってんの! つっこんでよ! わざわざ作って来てもらったお弁当と、あまりもののチョコじゃあ、絶対釣り合い取れてないでしょ! ユッキー、チョロ!」
なんだか恥ずかしそうに、新菜は僕の背中をバシバシと叩いてきた。
いたたた。




