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一年後、僕は君に愛していると伝えたい  作者: 創造執筆者
四月
10/14

10 同級生のお宅訪問[1]

「灯火君、今日は一日中付き合ってもらうわよ。朝まで寝かせないから。」


灯火の目の前ではいつもは冷静な華怜が興奮しているようだ。この部屋には灯火と華怜の二人だけ、誰一人いない。二人が何をしているかと言えば灯火の部屋でチェスをプレイしている。




ボランティアがあったあの日、椎名を運んでいたところを華怜と優里亜に見られ、灯火は詰め寄られてしまう。


「灯火君、どうして木武さんといい雰囲気になっているのかしら?」


「せ、先輩のバカー!」


二人に詰め寄られ、どうしようもなくなった灯火は何でもするから許してほしいと言ってしまい、各々の願いを叶えることとなってしまったのだ。そのため、今日は椎名の頼みであるチェスを一緒にプレイしている。




「さすがに朝までは眠いよ。だいいち、ご飯とか寝る場所はどうするんだよ?」


灯火の疑問は当然である、しかし灯火と一日中チェスがプレイできるのであれば、椎名にとってそんなものは障害ではない。すでに、手は打っているようだ。


「甘いわね灯火君、グラブジャムンよりも甘いわね。」


「それは世界で一番甘い食べ物なんだから、それより甘いなんてことはありえないだろ!それでどうするつもりなんだよ。」


「すでに執事さんの許可は取ってあるわ。今日はこの家に止まっていくから、よろしく。もっともお世話になるのは執事さんやメイドさんたちであなたではないけれど。」


灯火は自分の知らないところですでに外堀が埋められており、頭を抱える。部屋のドアを見れば、少し開いており、爺やとその他数人のメイドたちが覗いているようだって。彼女たちは灯火と目が合うとグッドポーズをとり、扉を閉める。


「一応、今のこの家の主人は僕だよね?ねえ、どうして主人の僕が知らされていないの?」


灯火はメイドたちの理不尽に抗議するも、だれも反応してくれない。


「さて、灯火君、ゲームを始めましょうか。今日こそは私が編み出した必殺の戦法で、あなたに泣いて土下座させてあげるわ。」


「そういうのは僕に一回でも勝ってから言ってくれない?」


灯火の言い方が気に障ったのか、華怜は臨戦態勢に移る。


「いいでしょう、あなたには土下座なんて生ぬるいわ。私が勝ったら土下座をしながら街中を歩き回ってもらうわ。せいぜい警察のお世話になるのね。あなたは名実ともに変態の名を手に入れるのよ。」


「ちょっと待てよ、名実ともにって、僕はそもそも変態じゃないからな。僕が変態なのは華怜の頭の中だけだからな。」


灯火の話は誰も聞いてくれない。華怜は目の前で叫んでいる灯火を無視してチェスを進める。


「灯火君、あなたの性癖は周知の事実だから訂正しなくてもいいわ。それよりも早く駒を進めて頂戴。早くしないと時間が無くなるわ。」


「分かったよ、だけど休憩は適宜するからな。ずっと座りっぱなしなんて体に悪いだろ、たまには体を動かすことも大切だぞ。」


華怜は仕方なしに灯火の意見に妥協し、二人はプレイを始める。


「まぁ仕方ないわね、休憩くらいは許してあげるわ。それよりも、灯火君。ご両親はこの家にいないの?私、ご両親に挨拶をしたいのだけれど。」


「両親はずっと海外で仕事だからな、昔からほとんど家には帰ってこないよ。日本にいるのだって年に一か月もいないよ。」


昔から両親と過ごす時間が少なかったため、灯火はさみし気に両親の話をする。華怜はそんなさみし気な灯火の表情に気が付き、何か話題を変えなければと別の話を始める。


「そう言えば、今度の定期テストの勉強をするんだけれど、私の母が高校の教師をやっているの。もしよかったら、うちに来て一緒にテスト対策をやらないかしら?」


もうすぐ定期テストが始まるということもあり、本職の教師から勉強を教えてもらえるというのは灯火にとってもうれしいことだ。華怜の提案に灯火は二つ返事で答える。


「それはいいな、助かるよ。でも、なんか恥ずかしいな、同級生の女子の部屋に何か入ったことないから緊張するよ。」


灯火は華怜の家に遊びに行くのを想像したのか、顔が赤みを帯びている。すると目の前の華怜がプルプルと震え出した。


「わ、私の部屋に入るのは禁止!リビングに入れるだけよ、何を妄想しているの、この性癖モンスター!あんたは男子更衣室でスハスハいっていればいいのよ!」


華怜は恥ずかしさから灯火の顎めがけてパンチを繰りだす。そんな華怜の強烈な一撃は灯火の顎にヒットしてしまい気絶してしまう。灯火の頭の中に最後によぎったことは


「俺はそんな性癖じゃねぇ!」


だった。


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