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俺とアイツは友達じゃない。  作者: 斎藤ニコ
Chapter Ⅳ

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第67話 繋がりそうで、繋がらない

 藤堂の憂えるような言葉の真意はわからないけれど、だからといって不快感を感じるわけではなかった。

 むしろその気持ちはよくわかる。

 なにせ期末テストまで間に合うかどうかもわからない結果だったのだ。

 俺だって憂える。


 しかしなんというか、俺の気持ちはどこか前向きだった。

 もしかすると、失敗するそのときまで失敗の意味を理解していない可能性もある。

 夢物語――そんな言葉が似合う挑戦だからだ。


 それでも俺は藤堂と約束をしたのだから。

 だから、達成したいとそう思っているのも事実だった。

 

 もちろん、伝えたことはないし、伝える気もない……のだけども。


   ◇


 さて、藤堂から少し離れよう。

 つまるところ、解決しなければならないことは、テスト以外にももう一つあったはずだ。

 

 漆原葵――突然、現れたやつの存在が、どうしても俺には気になってしかたがない。


 意図不明な言葉の意味も考えすぎて、もはやゲシュタルト崩壊を起こしている。

 あとはもう、何を目的としているかを尋ねるだけの話のはずが、よくよく考えてみると、なぜそこまでこだわっているのかも不明だ――っていや、違うだろ、だから『付き合うことを前提に、友達になる』という言葉の真意がやっぱり重要なのだ。


 ……まあ、こんな感じで俺の思考は定まっていない。

 

 定まっていないのに、そういうときに限って物事は動く。

 

 夜。

 ゲームをしたって良い時間に、やはり俺は勉強をしていた。

 もはや何を目的としているのかすら判断がつかないほど、俺は前だけを見ていたのだが――ポコン♩、と音が鳴った瞬間に、若干、後ろを見た。

 後ろというのは、過去という意味であり、つまるところ、漆原だ。

 

 前の藤堂に。

 後ろの漆原。

 

 なんという対比だろうか。

 はたして今回の連絡はどちらだろう――漆原だった。


『Aoi:こんばんは。テストおつかれさまです。あの……よければなんだけど、直接会ってお話があるんですが……』

『ヨウ:はい』


 はいってなんだ。

 はいって。


 しかし俺は、なんだかいきなり敬語で連絡をしてきた漆原に警戒せずにはいられなかった。

 再会してからというもの、たった二週間程度しか経っていないはずなのに、俺の心の奥深くから、漆原の存在感が人生に影響を与えてきていた。


『Aoi:じゃあ、いつごろ平気ですか』


 俺はスマホから目を逸らし時計を見た。

 時刻、23時。

 偶然というべきか、明日は休日で、夜更かしには向いている。


 俺は正直なところ、このよくわからない状況を早く終わらせたかった。


 過去に確かに関係はあった漆原。

 しかしそれは俺が一方的に見たくないものを防いだだけの話だ。

 今更蒸し返す理由があるのだろうか?

 いや、蒸し返しているのは俺の勝手であって、漆原には違う理由があるのだろう――ああ、なるほど。


 俺は漆原に回答をする過程の中で、ようやくその単純な自分の不安要素に気がついた。


 ようするに、俺は『俺と漆原の関係性』に答えを見出せないらしい。


 俺が勝手に助けていただけで、卒業式にもたいした話はしなかった二人。

 それがなぜ、深夜のコンビニで再会しただけで、こんなよくわからない関係になっているのだろうか。

 それも、もしかしたら俺が勝手にわからない関係と考えているだけで、漆原には何かの関連が見えているのかもしれない。


 ――なんで、漆原は俺に声をかけたのだ?

 ――なんで、漆原は俺と友達になろうと思ったのか?


 それが繋がりそうで、繋がらないことに、俺は不安を覚えているらしい。

 まるで自分だけが、重要な何かに気が付けていないような気にさせられるらしい。


 俺はスマホの画面をタップし、フリックし、日本語を駆使し、しかしそんな大層な言葉など必要がないことを知り、端的な文章を送信した。


『ヨウ:いまからでもいいぞ』


 高校生には遅い時間。

 部活でもやってりゃ早く寝なきゃいけない時間。

 しかし、漆原の回答は早かった。


『Aoi:この前の公園でいいかな?』


 そういうことになった。

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