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送還

 クリスティーナの姿を見て、気を失った冒険者は獣人の少女だった。


 それにもめげず、回復魔法を施すクリスティーナさん。


 マジ、聖女。


 そして、倒れた獣人の少女。


 見たところ、十代半といった感じ。

青色の髪が顔を隠して、よくわからないが、美形を思わせる雰囲気だ。


 身に着けている装備は、冒険者のそれだけど。

ローズ達が身に着けていた物に比べると、お世辞にも上等な物だとは思えない。


 どういった経緯で、この少女がトレインを引き起こしたかはわからないが。

まぁ、起きてから聞いてみればわかるだろう。



 しかし、このファイアーウォールは、いつ消えるんだろうな。


 かれこれ、数分はゴウゴウと燃え続けている。


 あげた手も、そろそろダルくなってきたので、地面に座り消えるのを待っている状態だ。


 

「んっ……」



「ご、ご主人様、意識が戻ったようですっ」



 さすが、聖女様印の回復魔法である、その効果は抜群のようだ。



「ここは……はっ、トレインは、トレインはどうなったニャ」



 あたりを忙しなく、キョロキョロと見わたす獣人の少女。


 語尾からして、彼女はきっと猫系の獣人なのだろう。

もし、これで犬の獣人だったりしたら、やるせない気持ちで一杯になってしまう。



「もう大丈夫ですよ、トレインは、ご主人様の魔法で防ぎましたから、案心してください」



 と、優しく微笑んで語りかけるクリスティーナ。


 骸骨に表情なんてないんだけれど、きっと微笑んでいるはず。



「ひっ、ひっ……スケルトン!?」



 クリスティーナを見た、少女の顔が真っ青に染まる。



「だ、大丈夫だ。クリスティーナ……いや、このスケルトンは良い(・・)スケルトンだからっ」



 クリスティーナ、ごめん。


 出会って当初は、「良い(・・)スケルトン」を、バカにしてしまったけれど。

俺もついに、使ってしまったよ。


 良い(・・)スケルトンだからって。



「ほ、本当かニャ? 襲ったりしないかニャ?」



「ええ、襲ったりしませんよ」



 優しく答える、クリスティーナ。



「これは、油断させる罠かニャ? 後で、奴隷商に売り渡す気じゃないかニャ?」



「いいえ、罠ではありませんし。それに売ったりもしないから、大丈夫ですよ」



「……わかったニャ」



 少しの不安を残しつつも、納得した様子の少女。


 「良い(・・)スケルトン」で、納得してしまったのだろうか。


 自分で言っておいてアレなんだけど。

初対面で信じてしまうのは、それはそれで、どうなのよと思わなくもない。



「助けてくれて、ありがとうニャ。わたしは、エルザニャ」



「俺はヤマダで、こっちはクリスティーナだ」



「よろしくね、エルザさん」



「しかし、アレはなんニャ?」



 エルザが、ファイアーウォールを指さす。



「あんな魔法、初めて見たニャ。ずっと、燃えてるけど大丈夫かニャ?」



 どうなんだろうね、いつ消えるのか俺も知りたい。

というか、そろそろ消えてほしい。



 そして、ファイアーウォールを見つめること数分。


 ようやく、その炎は勢いを弱め、徐々に消え始めた。


 あれだけいた魔物は見る影もなく、残っているものがあるとすれば消し炭だけだ。



「それにしても、何でトレインなんか起こしたんだ?」



 俺の質問に、エルザは今までピンと、立たせていた耳を前に倒す。



「それは聞くも涙、語るも涙の話ニャ……」



 エルザの話を、簡単にまとめるとこうだ。


 仲間とダンジョンを探索している途中、誤ってゴブリンの巣に入ってしまったエリザ一行は、その場から逃げだしたはいいが、大量のゴブリンに追われることになった。


 そこからは良くある話。


 仲間から見捨てられたエルザは、追ってくる大量のゴブリンから一人逃げることに。

結果、あのトレイン騒ぎとなったわけだ。


 聞けば、ゴブリンの巣に入った原因はエルザにあったらしい。

なんとなく情景が思い浮かぶのは、なんでだろうな。



「でも、本当に助かったニャ。わたしが死なずに済んだのも、ヤマダ達のおかげニャ」




「旅は道ずれ世は情けって言うし、気にするな」



「よくわからニャいが、猫人族は、受けた必ず恩は返すニャ。迷宮都市に泊まるなら、ウチの宿に泊まるといいニャ」



「宿?」



「そうニャ、『猫のマタタビ亭』は迷宮都市でも一番の宿屋ニャッ! 自慢の料理、猫マンマを味わってほしいニャ」



「そうだな、泊まらせてもらうか……」



 と、言いかけたときだった。



 ふいに、ログが流れだす――



『残り時間がなくなりました。これより、送還を開始します――』



『3……2……1……』



 ピッ。




 意識は暗転し、気がつけば元の世界、あの公園の隅に戻っていた。






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